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異世界旅館松や  作者: ぎゆり
第1章
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80、召喚の儀式


「そうじゃなあ…確かにこちらの人手は足りんかもしれん」


シルヴェストさんがうーんと唸りながら考え込んでいる。

俺はこっちの世界で動ける人を雇いたいと思っていた事を3人に話した。

そこで問題になるのは異世界の事。

それを外に話さず、職場が異世界でもよいと言う人のが条件だ。

というか、問題はそれのみなのだが…


とにかく、信用できる人柄で異世界の事を口外しない人じゃないとお話にならないのである。


「魔法契約がカズ様の世界でも有効なのか分かりませんからね」


そう!そうなんだよ。

異世界ではさ、魔法契約ってのがあるから口外したくても出来ないってのが使えるけど

こっち側の人間で試した事がないんだ。


人柄を見極める為に試用期間とかできないじゃん?

プルとかリコルが一緒にいる訳だし。


「そうなると…なかなか難しいのう」


だよなー。

やっぱりそうなるよなー。


「こういうのは…どうでしょう」


今まで黙ってたユストフさんが何か思いついたようだ。

ユストフさんは普段寡黙でほとんど自分からは話さない。

しかも、いつも事務所で事務仕事してるから

同じ旅館にいてもなかなか会えないんだよ。

だから俺の中のユストフさんはまだ謎が多いんだけど…。


「何か思いついたのか?」


「いえ、逆の発想はどうだろうかと…こう思い付かない時は逆に考えるといいと昔聞いた事があって…」


なるほど、逆の発想か。

それはあり得るかもしれん。


「逆となると、カルニートの人を僕の世界に行かせるって事になりますよね?」


「はい…そうですね…しかし、旅館の外には出られないので………はあ、すみません…」


「謝らないでくださいよー!ユストフさんの言う通りで、こういう時は色んな発想をダメもとで口に出すといいんです」


「あるじー、だめもとってなにー?」


さっきまで寝室でウトウトしていたプルがちゃっかりテーブルを囲んでる。


びっくりしたー!いつ来たか分かんなかった!

そもそもスライムってさ、移動する時音でないんだよな。

スススーって滑るように移動すんの。

でも、飛び跳ねる時は何故かボヨンボヨンって音が出るんだけど。


「ダメもとってのはな、成功するか分からないけどとりあえずやってみる的な…感じかな」


「うーん」


プルは考え込む時、動きが止まる癖があるんだけど今まさに動きが止まってる。


「わかんない!!」


だよなー。


「プルはさ、旅館に新しい人が来てもいいか?」


「あたらしいひとー?うん、いいよー!たのしみー」


「そうか!じゃあ、その時は頼むな」


「わかったー」


プルは何故かご機嫌でまた寝室に戻って行った。


「あるじー、はやくねてねー」


「はいよー、わかったよー」


ちょっと考えが煮詰まってたから、プルのお陰で少し和んだ。

和んだんだけど…やっぱり浮かばん!


「はあ…こっちに転移者とかいねーかなー」


ぼそっと口に出した俺の言葉を聞いて

ユストフさんが何か気になったみたいだ。


「てんいしゃ…てんいしゃというのは、なんですか?」


「あ、転移者ってのは…そうですねえ…何かの拍子に俺の世界からこちらの世界に飛ばされた人とかそういう意味です」


「飛ばされた人…」


「という事は、カズ様の世界から来た訳ですから帰る事も出来るという事ですね」


「基本的にはそうですね。行き来が出来ないと買い出しとかもお願い出来ないですから」


「ふむ…」


クラスティアさん、めっちゃ考えてる。

でも、考え込んでる時もワイン飲むのは忘れてない。

クラスティアさんの為に出したワイン、そろそろ1本空くな。

本当に酒豪だよなクラスティアさんって。

その上全然顔色変えないんだから。


そんな余計な事を考えてると

クラスティアさんがテーブルをポンと叩いた。


「カズ様、これはもしかしたら見つかるかもしれませんよ!」


「え?本当ですか?」


「ええ、我が国ではしておりませんが他国では勇者召喚の儀式というのがあるんです」


おっ!それ前にシルヴェストさんが言ってたやつだな。


「しかし、クラスティア。それはあくまでも噂じゃろーに。実際のところ、本当に儀式を見たやつはこの国にはおらんじゃろ」


「いえ、その儀式は実際にあります」


え、なんでクラスティアさん知ってんの?

まさか、その儀式を昔やってたと言わないだろうな!

もう200年近く生きてるから、やっててもおかしくねーし!


「わたしが子供の頃なので、180年ほど昔の事ですがエルフの国に異世界から召喚された人間が来た事があったのです。その方は勇者ではなく、儀式の時に誤って召喚されたとか…人伝に聞いた話によると儀式では誤って召喚される人間は度々いたそうなのです」


「ほほお」


何となく相槌を打ってしまったけど

結構内容は衝撃だよな。


「その人間は元々研究者だったので、王宮に残り役職を与えられていました。しかし、何の利益もないと分かると王宮から街に出されるのだそうです」


マジかよ!ひでーな。

勝手に呼び出しといて、役に立たないからって放り出すみたいな事。

俺、旅館がここと繋がってるだけでよかったー。

俺なら知らない世界で生きて行けねーよ。


「なるほど、ではその王宮を追い出された側を探せば…もしかしたらという事だな…」


「ええ、確率は低いですが今のまま何もしないよりはいいのではないでしょうか」


そうかあ、なるほどな。

それなや外に出ても問題ないよな。


「しかし、どうやって探すのじゃ?その国に行って探すとなるとかなりの手間になるじゃろ」


「その儀式をやっているっていう国はどこなんですか?」


「ツェリティーア王国と言って…この大陸の一番北にある国です。我が国と国交は…あったと思います…」


「そのツェリ…何とかって国まではどのくらいで?」


「そうですね…馬車で2ヶ月くらいでしょうか…」


2ヶ月?2ヶ月って言った?

おいおいおい、無理だろー。

遠すぎです、ツェリ何とか王国。




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