6、帰ってきました
お寺は車で20分くらいの所にあるので、その前にお寺に払うお金を入れる白い封筒を街の文房具屋で買った。
この文房具屋は俺が子供の頃からあって
もちろんその時にいたばあちゃんはいないけど、そこの娘と思われる人がやっていた。
一応、この街に帰って来た事を誰かには伝えなきゃなと思っていたので
自分から名乗り出てみた。
「あらあら、和くんかい。大きくなったねー!いや、この度はご愁傷様でした。おじいちゃん街の病院に入院したってのは聞いてたんだけども」
ちょっと話してみて、こりゃ話が長そうだなと思ったので
「これからお寺に行くので、また今度ゆっくりと!すいません!」
おばちゃん残念そうにしてたけど
とりあえずこれで俺が帰って来た事は街の人にも伝わるな。
その後、花を買おうと思ったけど花屋がないらしくて
とりあえず何でも売ってるっていう商店を文房具屋のおばちゃんに教えてもらったから
そこで墓に備える花を購入。
お寺に着くと、じいちゃんと同じくらいの年齢であろう住職さんが出迎えてくれて
墓の前でお経をあげてもらい、じいちゃんをばあちゃんの側に入れてあげた。
じいちゃん、あの旅館さ…
どうしたらいいんだ?
俺、旅館とかできないけどいいのか?
あ、あと通帳見たよ…
なんか驚きすぎてなんて言っていいか分かんないけど、とにかくありがとうな。
それからプルの事は心配しなくていいから
俺がちゃんと面倒みるからさ!
ま、とにかくばあちゃんと仲良くな!
お墓にじいちゃんの遺骨を入れる短い時間の中で、思いつくだけのじいちゃんへの言葉を心の中で言ってみる。
最後、墓閉める時
「ありがとう」
とボソリと口からこぼれた。
住職さんとこれからの事とか墓の管理の事とか話してから、俺はちょっと大きな街にあるスーパーへ。
昨日も、買い出しに来たけど
その時はプルがいるって知らなかったしな。
今日はプルの分も含めて大量に買い出ししなきゃな。
調味料とか細々ものから、米とか大きいものもどんどんカゴに入れていく。
往復2時間かけて来るのも大変だから
今日は日持ちするものは買っておこう。
インスタントラーメンとか冷凍食品もだ。
あと、冷凍できるものは買っといていいかもな。
さっき思い出したけど、住居にある冷蔵庫は家庭用のだけど
おそらく旅館の方で使ってるのは業務用なんじゃないだろうか?
さっき、いろいろ衝撃的なことがありすぎて事務所までしか見れなかったけど
旅館ではじいちゃんが料理をしていたはず。
「帰ったら旅館の調理場を覗いてみないとな」
その後、あれもこれもと買い物して
ひとまず車のトランクに荷物を積んだ。
ショッピングモールの敷地内には、他にも店舗があって有名な家電量販店もある。
ここで買わなきゃならないものあるんだ…
「ええと…あったあった!」
手に取ったのはトースターだ。
今朝パン焼く時にないの気付いたんだよね。
トースターってあると便利だからさ。
パン焼く時以外にも、色々使えるから
ちょっと大きめの買っとくかな。
家電量販店って久しぶりに来たけど
色んな家電があるんだなぁ…
今度、時間ある時にくまなく見てみるのもいいな。
さて、プルも待ってるし
急いで帰ろう!
「ただいまーー!プルー!」
裏口から入って左の扉を開けて旅館の方に声をかけたら、プルが奥から走って来た。
いや、走って来たのかな?
ポヨンポヨンと飛び跳ねて来たから
走るとは違うか…。
「おかえりなさいー」
「プル、ただいま」
「いまね、プルね、おふろのおそうじしてたのー」
「風呂?旅館のか?」
「そーだよー!じいちゃんがおふろはまいにちきれいにしなきゃだめだっていってたからー」
「そっかそっか、ありがとうな!」
そうやって、撫でてあげると
ぷるぷる震えて喜んでるようだ。
「あ!って事は、大きい風呂に入れるって事か!いいなぁ…よし落ち着いたら入ろう」
ってかスライムって風呂入るのか?
「なぁ、プル。プルは風呂とか入るのか?」
「んー、じいちゃんとはいったりしてたよー」
「そうなのか!じゃ、今度俺とも入ろうな!」
「うん、たのしみー!!」
ポヨンポヨンと飛び跳ねて、めちゃくちゃ喜んでる。
そんな姿に癒されて忘れてたことが。
「そういや、プル。ここってさ調理場とかあるか?」
「ちょーりば?」
「そう!じいちゃんが旅館のお客さんに料理とか作ってた所」
「うん!あるよー」
「じゃ、そこ案内してくれる?」
「わかったー、ついてきてー」
プルについて1階にある西部劇に出てくるようなドアの奥に入ると
そこにはピカピカに磨かれた調理場があった。
「おお!ピカピカじゃん」
「きのうプルがねー、ピカピカしたのー」
いやぁ、プルはいい子だぁー。
「そうかぁ、ありがとうな!プル」
「えへへー」
調理場にありました!ありましたよ!
銀色の大きな業務用冷蔵庫!
中を開けると何にも入ってなかった。
「あ、そうか…じいちゃん入院する時に全部出したのかな…えっと電源は…」
冷蔵庫のコンセントを差し込んで
スイッチオン。
冷えるまでは使えないよな…
とりあえず、冷えるまで
あっちの冷蔵庫に詰めておくか!
車から運んだ大量の食材やら日用品
それからトースターも忘れずに運び込む。
プルも手伝ってくれたから
食材もしっかり冷蔵庫に入れたぞ。
冷凍食品はギリギリだったけど
あっちの冷蔵庫が冷えるまでの間だけだからな。
「さてと…じいちゃんもばあちゃんとまた再会できただろうから…」
俺は仏壇に新しい缶ビールとスーパーで見つけたばあちゃんが好きだったお菓子を供えて手を合わせる。
「あるじ、なにしてるのー?」
「んー?こうしてじいちゃんとばあちゃんにご挨拶してるんだよ」
「ごあいさつ?」
「そう!こうやって毎日1回、じいちゃん今日も頑張りますー!ってな」
「じゃあプルもするー」
プルは俺の隣に来て、手??触手?で器用に俺の真似をして手を合わせた。