4、プルのお仕事
「そいいや、プル」
「なーにー」
「ここではどんなお手伝いしてたんだ?」
「んっとねー、おふろをきれいにしたりねー、ゆかをきれいにしたりねー、ごはんたべたあとのをきれいにしたりしてた」
「そっか、掃除をしてたんだな」
そう言えば、ゲームとかファンタジーものに出てくるスライムって何でも食べるみたいな感じだったか。
「それじゃ、ここの部屋の中もプルが綺麗にしたのか?」
「そーだよー!ここでじいちゃんといっしょにごはんたべたり、いっしょにねてたのー!だからプルがきいれにするのおてつだいしてたー」
「そうかそうか」
昨日、ここに来た時いやに綺麗だと思ったんだよな。
じいちゃんがいない間もプルがちゃんと掃除してくれてたんだな。
「偉いなプル」
「えらいー?」
「ああ、めちゃくちゃ偉いぞ!」
「わーーい!ほめられたー」
嬉しそうにポヨンポヨンと飛び上がる。
「あるじー」
「なんだ?」
「おなかすいたー」
あ、そう言えば朝起きてから何も食べてないじゃん。
俺も腹減ったな。
「それじゃあ、朝ごはんにするか」
「はーい!」
腰を抜かして尻餅をついたまま座り込んでいた俺は、立ち上がって台所へ。
冷蔵庫に入ってる昨日買い込みした食材を見ながら献立を決める。
あ、そうだ。
スライムって何食べるんだろう…
「プルー」
「なーにー」
器用に触手を使って、食器棚から箸やらコップを出しているプル。
すげーな…。
「あるじー?」
「あ、そうそう。プルっていつも何食べてたんだ?野菜とか?」
「うーんとねー、じいちゃんとおなじのたべてたよー」
そうなのか…雑食だから何でも食べられるって訳か。
「じいちゃんがいない間はどうしてたんだ?」
「れーぞーこのあまいのとか、しょっぱいのとかたべたりー、まちのひとがもってきてくれるのたべたりー、あとはがまんしてたー」
え!我慢してたの?
かわいそうな事しちゃったな。
俺がここに来なかったら、プル餓死しちゃってたじゃん。
あれ、街の人?
近所の人が野菜か何か持って来て軒先にでも置いてったのかな?
まあ、いいや。
でもよかったー、俺ここに来て。
これからは美味いもの食べさせてやろう!
「そしたら、今日はパンとハムエッグだな」
フライパンにハムをそのまま置いて
中火で軽く焼いたらそこに卵を割って
蓋をしてしばらくしたら水をさして蒸し焼きにする
俺は半熟が好きだから水は少なめな
「プルも半熟でいいか?」
「はんじゅくー?はんじゅくおいしー?」
「ああ、美味しいぞ」
「じゃあ、プルもはんじゅくー」
「はいはい笑」
プルのハムエッグを焼いたら、今度は食パンを焼く
ここにはトースターはないから、フライパンにバターをひいて弱火で軽く焼いて行こう
その間にポットでお湯を沸かして、戸棚にあったカップでスープを作って
「よーし!完成だ!プル、運ぶの手伝って」
「はーい、はこぶよー」
居間にあるテーブルに並べて、プルと隣同士で座った。
プルを見ると絨毯の上からテーブルを見上げてた。
「プル、ちょっと待ってな」
俺はおそらくじいちゃんが使っていた
座椅子の上に座布団やらを重ねてプルを座らせた。
「どうだ、高さは大丈夫かな?」
「うん、ごはんがみえるよー。あるじありがとうー」
「よしよし、良かった!じゃ、食べるか!」
「「いただきまーす!」」
うん、美味い!
サラリーマン時代は、朝ごはんなんてゆっくり食べられなかったもんなぁ。
ギリギリに起きて、超特急で支度して駅から会社までの間のコンビニのおにぎりが俺の朝ごはんだった。
料理は嫌いじゃないから、時間があれば色々作りたかったんだけどな。
作ってあげる人もいなかったし…(ショボン)
ま、でもこうしてプルがいるからな
これからは料理して行こう!
「あるじー、おいしいねー」
「お!美味しいか?」
「うん、このトロっとしたのがすごくおいしい」
「半熟目玉焼きって言うんだよ」
「はんじゅくめだまー」
「目玉焼きな」
「はんじゅくめだま、おいしいー」
はははは、プル…
半熟目玉で止めたらダメだよ
それから、もっと食べたいというプルの要望で
食パンのおかわりと半熟目玉…じゃなかった
半熟目玉焼きをもう1回作って朝ごはん終了。
今はプルに手伝ってもらって皿洗い中だ。
それにしても、プルはよく食うな。
こんな小さいのに、俺と同じかいや俺より食うんだな。
「あるじー!」
「なんだ?」
「おさらおてつだいしたあと、りょかんにいってくるー」
あ、旅館…
まずい忘れてた。
「旅館、俺も一緒に行くから待っててな」
「うん、わかったー」
プルは俺がここに来たのが嬉しいのか
鼻歌みたいなの歌いながら皿洗いをしてる。
なんかこんなのもいいな。
田舎暮らしの初日の朝は、衝撃の出会いもあったけど穏やかに過ぎていった。