13、予約いただきました
「あ、あの…。それで手続きの方は」
すき焼き談義が終わりそうもないので
本来の目的を思い出してもらおう。
「おっと!いけませんね、すきやきの話になると熱くなってしまいます。失礼いたしました」
「いえいえいえ」
よかったー
戻って来てくれて。
あらかじめ用意しておいてくれた書類に
名前やら何やらを色々書き込む。
やっぱ字も書けるんだな、俺。
さっき読めたから書けるんじゃねえかと思ったんだよ。
やっぱチートだわ、これ。
マルディニールさんにその都度説明してもらいながら、必要な署名やらをした。
「はい、問題ありませんね。では、最後の手続きになりますので少しお待ちください。」
署名してる間、俺はちょっと気になる事があったんだが印鑑とかはよかったのかな。
書類といえば印鑑だろ?
一応、なんかあったらと思って
胸のポケットには俺の印鑑が入ってんだけど
押す場所もなかったし…
なんて考えていたら、ドアが開いてマルディニールさんが戻って来た。
「お待たせしました。では、こちらの水晶に手を乗せてください」
キター!
異世界アイテムー!
ドキドキしながら水晶に手を乗せてみた。
すると、ふわっと白い光が出て一瞬で消えた。
マルディニールさんは水晶に挟んでいたカードのような物を取り出して確認する。
「はい、滞りなく名義変更を完了しました。このカードはカズさんのお名前になっております。
それと…マツヤの経営者の名義も変更させていただきました。」
「はい、ありがとうございます」
「以上で手続きは終了です。っとそれでですね!カズさん!あ、カズさんとお呼びしても?」
「あ、は、はい!どうぞ!」
「ありがとうございます。マツヤの営業はいつからになりますか?」
「あ、再開は1週間後を予定しています」
「1週間後と言うことは…4日からになりますな!では、わたくし予約をさせていただきたいのです!」
「おー!やったじゃねえか!予約第一号だな!」
「わたくしが第一号ですか!なんと光栄な!」
「あ、あの!しばらくは宿泊は取らず、食事とお風呂だけにする予定なんですが」
「はい!それで大丈夫です!いつもわたくしはお風呂に入りすきやきをいただき、最後にもう一度お風呂に入るという形でお願いしておりましたので!それで、すきやき食べられるのですよね?」
「え、ええ、あ、あの頑張ります。じいちゃんと同じ味かは分かりませんが」
「ええ、ええ!結構ですよ!カズさんのすきやきで!楽しみですねぇ!久しぶりのすきやき!」
「ぜ、善処します」
その後、シルヴェストさんに聞いたんだけど
予約ってのはじいちゃんが流行らせたとか。
日本っていうか世界中では当たり前の予約がこの異世界の方にはなかったらしい。
そうだよな。
最初はじいちゃん1人で切り盛りしてたんだから
予約なしではキツイよな。
じいちゃんの時は前半と後半みたいに分けて
どちらか時間帯を選んでもらってたみたい。
うん、じいちゃん
いい仕事した!
そんなこんなで松や再開の予約第一号もいただけたし、無事に名義変更も済ませた俺たちは
とりあえず旅館に向かいながら市場を見て回ることに。
この街・カルニートの市場は沢山の人で賑わっていた。
「ほえー、野菜とかはだいたい同じなんだなー。こっちで野菜を調達するのもいいかもしれないですね」
「ああ、じいさんもそう言ってたな。あっちにない野菜もあるらしいがな俺には分からん」
シルヴェストさんはじいちゃんが違う世界から来ている人間だと知っている。
他に知っているのは、エルフの2人とプル。
プルは意味が分かってるかは謎だけど。
そうだよな、従業員には隠せないよな。
でも、その話を聞いても意外とすんなり受け入れられたそうだ。
「この世界には6つの国があるんだけどな、他の国には世渡り人ってのがいるらしい。この世界じゃない違う世界から来たってやつだ。」
「召喚とかそういう類の?」
「そこまでは分からねえがな。お偉いさん達は勇者だとか救世主だとかそんな御伽話の中の人間を呼び出す儀式みたいのをやってるとかやってないとか…まぁ一般人には難しい事は分からねぇ!ガハハハ」
勇者かぁ
なんかゲーム的な要素満載だけど
って!勇者がいるなら、魔王とかもいるのか?
おおお、ファンタジー!
そんな話をしながら市場で目につく物を色々買って、無事に旅館に帰還した俺は
とりあえず、旅館再開までにやる事と買い揃える物をチェックして回った。
夜、自宅に帰り
プルと一緒に夕飯を食べた後
今日チェックしたメモを見ながら唸っていた。
「あるじー、どうしたのー?おなかすいたのー?」
「ん?違うよ。ちょっと考え事。それにご飯はさっき食べただろ?足りなかったか?」
「んー、おなかいっぱいだよー。ちゃーはんっておいしかったねー」
そう言いながら、小刻みにプルプル震える
「チャーハン美味しかったか!よかったな」
「うん!またちゃーはんたべたい。つくってねー」
「おう!任せとけ!」
「やったー!ちゃーはん♪ちゃーはん♪」
ポインポインと跳ねながら俺の周りをグルグル回るプル
はー
癒されるー
とりあえず、明日はこのメモのものを
こっちで買って来ないとな
結構大量だけど大丈夫かな…




