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異世界旅館松や  作者: ぎゆり
第1章
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おまけの話、王都でデート②

次回の更新から第2章スタートです◝(⑅•ᴗ•⑅)◜



セルトから受け取ったメモには

王都のデートスポットがいくつも書いてあり

その場所の詳しい内容やオススメの回る順番なども書いてある。


ソウガはそれをこっそり見ながら、ナディアと2人で王都を周って行った。


まずは、昼食前に王都名物の市場だ。

市場には新鮮な食材から珍しい食べ物まで沢山の屋台が並ぶ。

そのエリアを抜けていくと、今度は骨董品やアクセサリーなどの店が並ぶ。


ナディアの人生で武器の店に行く事はあってもアクセサリーの店にはとんと縁がなかった。

ソウガは今日の想い出に何か一つプレゼントしようと思っていた。

マツヤで働くようなって、給料の他に事あるごとに支給されるボーナスもありソウガの懐は人生で一番あたたかい。

ちょっとしたアクセサリーぐらいなら値段を見ずにポンとプレゼントするくらいは可能だからだ。


食料品エリアを抜けて、2人はいよいよアクセサリー店が立ち並ぶ辺りに来た。

ソウガはナディアが興味をしめしたら、プレゼントしようと構えていたがナディアはアクセサリーには全く見抜きもせずそのままそのエリアを抜けていく。


装飾品には興味がないのか…


なにもアクセサリーだけがプレゼントではないので、無理に引き留めず市場を後にした。


昼食は、今王都の女子に大人気のお店へ。

休日には長い行列が出来るというレストランだ。

この日は運良く平日だったので、行列も短く済んだので2人で入る。


周りを見渡すと、店内は女子、女子、女子。

男性はソウガだけ。

しかも、鬼人であるソウガはデカい。

屈強と言う言葉がぴったりの男の中の男だ。

すごく目立つ。


店内に入ってから周りの視線をバチバチ感じるが、ここは男として我慢の時。

セルトのメモにはそう書いてあった。

ナディアは目の前で女子達の視線に耐えようとしているソウガを見て苦笑いする。


ナディアは思った。


この人は、私のためにこんなお店に入ってくれたんだね…

しかも下調べまでして。


ソウガがずっと隠し持っているメモに気づくのは簡単だった。

王都に来てからセルトの為に屋敷に篭り、外出といえば隣の敷地の騎士団の練習場くらい。


ソウガはソウガなりに私に気を使ってくれたんだろうね。


普段から寡黙で多くを語らないソウガが

汗をかきながら座っている姿を見て

ナディアの胸はあたたかかった。


昼食の後、デザートのケーキまでしっかり食べた2人が向かったのは

王都で人気のスポットである「花の庭園」だ。

ここは1年中沢山の花が咲く庭園。

今の時期は白とピンクの花が見頃のようだ。


「これはなんて言う花なんだろうねえ」


花なんて今まで気にしたことのないナディア。

もちろんソウガもである。


「う、うむ…俺は花の事はよく知らんのだが」


そうだろうな。とナディアも思った。

ソウガも郷から出て来て大変な生活をしていた。

ナディアもそうだ。

セルトと生きていくのが精一杯だったあの頃。

花を見ると「食べられるだろうか」と

まずは考えたのだった。


それから考えると、今の生活はなんと幸せな事か。

まずは、食べるものにも寝るところにも困らなくなった。

どちらかというと、食べ過ぎでナディアは少し太ったくらいだ。

そして何より、自分の大切な家族セルトが元気に生活をしている事だ。

ましてや、勉強が得意だと言うセルトの為に王都の学校の試験まで受けさせて貰える。

こんな幸せがあるだろうか。


ナディアは寝る前にふと考える事がある。


意を決して病気の弟を抱えて隣国に逃げたあの日。

もしかしたら辿り着けないかもしれない。

でも、少しでも希望があるなら!と命をかけて亡命した。

隣国に無事に着き、やって来たカルニートと言う街でカズに出会い雇って貰えることになった日。

病気の弟がいる事でこの話が無しになるのでないか…と気が気ではなかった。

しかし、あの時のカズの言葉が私たちを救った。


「一緒に連れて来てください。ここなら誰かが必ずいますし、弟さん1人にしておくのも心配でしょ?」


神様は居たんだなと思った。


そして目の前を歩いているソウガもナディアの人生においてかけがいのない存在だ。

亡命中に出会ったソウガは目つきが鋭く冷たい雰囲気を出していた。

しかし、セルトが病弱で走ることもままならないと知った時からセルトの移動はソウガの背中だった。


カルニートに着いてからも言葉では言わないが気にかけてくれていたのはナディアは分かっている。

マツヤで一緒に働くようになってからもナディアとセルトの事をいつも心配してくれている。

そんなソウガに心を寄せるには時間は掛からなかった。

誰かに頼ることさえで出来なかったナディアが初めて頼れる人を見つけた。

口下手でぶっきらぼうだが、心のあたたかい人。

今日だってきっと必死に色んな所に連れて行ってくれてるはず。


ここはあたいも少し勇気を出さなきゃね。


ナディアは少し前を行くソウガに向かって走り出した。

そして、思い切りソウガの腕にしがみつく。


「う、うわっ」


いきなり抱きつかれて驚きまくるソウガ。


「ちょっと、なに先に行ったんだい?デートはこうやって並んで歩くもんなんだろ?」


「デ、デート?…」


「あれ?違ったのかい?」


「い、いや…そうだが…」


「だろ?それじゃあ、あたいさ!欲しいものがあるんだよ!ちょっと見ていいかい?」


そう言いながら、街中をぐいぐいソウガの腕を引っ張りながら進む。



「あたいさ!武器屋に行きたいんだよ」


「武器屋?」


「あれ?だめかい?」


「いや、そうではないが…装飾品とかそういうので見たいものはないのか」


「うーん、ないねぇ」


「ふっ、そうか…」


ソウガはナディアだからな…と思った。


「あ!ソウガ!今笑った?笑っただろ?」


その後、武器屋に防具屋などをまわった2人。

最後にセルトへのお土産に文房具屋で少し良さげな羽ペンを購入する。


「お前の分はいいのか?」


「あたいには必要ないよ、持ってても字が書けないしね」


ちょっと奮発して買った羽ペンを抱きしめながら王都の丘にやって来た。

ここは夕陽に染まる王都が見渡せる場所だ。


ベンチに座りながらぼーっと景色を見る。

どれくらい時間が経ったのだろう、気づけばナディアはソウガにもたれ掛かって寝入っていた。

起こさないようにそっと背負ってカイウス男爵家の屋敷まで幸せを噛み締めながらソウガは帰って行った。

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