10、従業員勢揃い
ドワーフのシルヴェストさんが
今日、他の人たちを連れて来てくれる事になっている。
この前、プルに聞いた従業員の事を
もう一回プルに聞いてみる。
「えーと、じいちゃんとープルとー、それからおひげのおじさんとーみみのながいおねえさんとー、おにいさん!」
やっぱりねー
耳の長いお姉さんとお兄さんって言ってるよねー
それ、エルフだよねー
だって、ドワーフがいるんだから
エルフもいるよな
ちなみにお兄さんの方も耳が長いそうだ。
じいちゃんが生前お世話になった人たちだし、わざわざ旅館まで来てくれる訳だから
お茶とかお菓子とか出した方がいいのかな?と思ったので、とりあえずこの前買って来たクッキーとかチョコレートとかを、ばあちゃんが昔みかんとか盛ってた木の皿があったから盛ってみた。
それからコーヒーとかは飲まないだろうから、紅茶とかがいいのかな?と思って
急遽、街の小さい商店に行って
お馴染みのティーパックの紅茶を買ってある。
とりあえず、旅館の一階のスペースに用意はしてみたけど…
いや、エルフってさ…そもそもお菓子とか食べるの?
なんかヘルシーなものしか食べないイメージなんだけど。
今更気づいてももうすぐ来ちゃうから間に合わないけど…野菜スティックとかの方が良かったかな…。
そんな事をやりながらあたふたしていると
旅館の扉がノックされた。
「おい、来たぞー!」
「はい、今開けますー」
ガチャリ
異様に重い扉を開けると
小さい髭のおじさんのシルヴェストさんの後ろに、透き通るような白い肌をした女性と目鼻立ちのハッキリした超美形の男性が。
そして、2人とも耳が長い。
「シルヴェストさん、いらっしゃい」
「おう!邪魔するぞ!」
とりあえず中へ通して
お茶を用意したスペースへ。
みんなに座ってもらい、プルは俺の膝の上だ。
「そんで、これがクラスティアとユストフじゃ」
「初めまして、クラスティアと申します。こちらではプルちゃんと一緒にお掃除とベットメイキングなどを担当しておりました。それからお食事の配膳などもしておりました。」
クラスティアさん、めっちゃ美人だぁー。
なんだろう…昔ホビットとかエルフとか出て来る映画に出て来たエルフのお姫様みたいだ。
「私はユストフ。ここでは計算、お金の管理などを任されていた。あと、予約の管理などもしていた。よろしく頼む」
ユストフさんも、すげーイケメンだ。
「この二人はエルフじゃぞ!」
「ええ、分かります」
「そうか!エルフはお前さんの世界にもいるか!」
「いや、いませんよ…」
「なんじゃ、そうなのか」
エルフとドワーフもスライムもいません。
「ああ、それから二人は夫婦じゃ」
…………
へー!そーなんだー
夫婦なんだー
美男美女夫婦かー
………。
羨ましくなんかないぞ!
決して羨ましくない!
とりあえずと話を逸らす感じで
用意したお茶とお菓子なんかを勧めたら
クラスティアさんもユストフさんも
甘いものが大好きとかでクッキーもチョコレートもパクパク食べてくれた。
エルフもお菓子食べるんだな。
よくよく聞いてみると、エルフは他の種族より長生きなので、その間に色々な美味しいものを好んで食べるそうだ。
お肉も大好きだしお酒もいけるとか。
野菜しか食べないとか偏見だったね、申し訳ない。
「俺も酒は好きじゃぞ!」
ドワーフだもんなー
ドワーフってめっちゃ酒好き多そうだもんな。
「プルはねー、あるじのつくったごはんがすきー!」
プルー、なんていい子なんだー
本当に可愛いやつだなー
「プルー、ありがとうー」
俺はプルを抱きしめて頬ずりした。
「きゃーくすぐったいー」
それを見てみんながにこやかに笑った。
「それで、再開するかどうか決めたのか?」
「いや、まだ何にも。みなさんにもご相談しようかと思いまして」
聞けば、クラスティアさんとユストフさんは現役の冒険者らしい。
エルフの寿命は350歳くらいで、長生きだと500歳くらいだそうだ。
ちなみにクラスティアさんは192歳でユストフさんは197歳なんだって。
「100年くらい冒険者をやって来たので、その後の何十年かは違う仕事をしてもいいかと思っていたのです。こちらの先代様から手伝ってくれないかと打診された時は願ってもない事でした。また再開していただけるならば嬉しいです」
100年ですか…そりゃ、飽きるよな
ハハハハハ。
「私も是非また再開していただきたい。ここの仕事はとてもやりがいがある。こちらで食べる食事もとても美味しかった。街のみんなも冒険者の仲間もここが再開されるのを心待ちにしている」
「プルもまたおてつだいしたいー!」
プルがポヨポヨと揺れてる。
「そうだなー、でももう少し考えてもいいかな?」
「うん、わかったー」
「と言う事で、もう少し考えさせてください。じいちゃんの残したこの旅館を続けたいという気持ちはあります。ですが、簡単に決める事もできないので」
「そうじゃな、ゆっくり考えてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「そういえば、昨日言っていたれしぴとやらは見つかったのか?」
昨日、プルがあるかもしれないと言っていたじいちゃんのレシピノートは調理場に置いてあった。
いつの日かここを俺に任せられるようにとじいちゃんが長い時間をかけて書いておいてくれたノートだった。
「はい、プルが見つけてくれました」
「そうか!その…すきやきっちゅうのもあったか?」
「ええ、サラッと見ただけでしたがすき焼きの作り方もありましたよ」
「ほお!そりゃ、よかったわい!」
すき焼きと聞いて、クラスティアさんもユストフさんも目を輝かせている。
みんなお好きなんですねぇ、すき焼き。




