第3話 パックを買ってみよう!
『24時間限定! 新規プレイヤー専用UR1枚確定パック』
『水属性ユニットカードピックアップパック』
『水属性魔法カードピックアップパック』
『アイテムカードピックアップパック』
『ノーマルカードパック』
『1日1回サービスパック』
『パック購入』の文字を押すと、6つのバナーが表示された。
中でも特に目を惹くのが1番上の『24時間限定! 新規プレイヤー専用UR1枚確定パック』だ。ド派手なカラーとフォント、いかにもな美少女イラスト。他のバナーよりひと回り大きいうえに『24時間限定!』がピカピカ点滅している。
「……う~ん、なんて言うか、この、う~ん」
トンデモナイ非現実の世界から、いきなり現実に引き戻された感がある。
……と言うか、思いっきり引いた。
ドン引きである。
――このスキル、本当に大丈夫なのか?
完全にノリがソシャゲのそれだ。
幸い拓郎はカードゲームもソシャゲも嗜んでいたから意味は理解できるが……バナーに表記されている『10+1枚10PP』のくだりで首を傾げた。
「『PP』ってなんだ?」
おそらくパック購入の代金、その単位なのだろう。
そこまでは予想がつくのだが……どうやってその代金的なものを手に入れるのかがわからなかった。
「ん?」
ポケットの中に熱を感じた。
中を探ると……先ほどゴブリンを倒したところに転がっていた黒い石が『ヴォン、ヴォン』と唸りながら淡い光を放っている。
念のために拾ってきたのである。
石を拾い上げて【万象の書】に近づけると、光量が増して――ある地点で石ごと消えた。
【万象の書】の表紙裏、つるりとしたディスプレイめいた光沢に表示されていた『0PP』が『10PP』に変化した。
「なるほど、そういうこと」
モンスターを倒すとドロップする石――仮に魔石と呼ぶ。
魔石(仮)を【万象の書】に吸い込ませると『PP』になる。
そして、集めた『PP』を使ってガチャもといパックを購入する。
で。
『1日1枚限定10PP』
『1枚100PP』
『10+1枚1000PP』
これが『ユニット』『アイテム』『魔法』『ノーマル』の各バナーに記載されている。
この4つとUR確定をあわせた5種類のパックでは、レアリティ『R』すなわちレア以上のカードのみが排出されるとのこと。
「ますますソシャゲっぽいな」
残るひとつ『1日1回サービスパック』は無料だが、こちらに封入されているのは低レアのみ。
そして、課金もとい……いや、課金パックには1日1枚だけ安くゲットできる――ソシャゲで言うところの『おはガチャ』のシステムが組み込まれている。
さらに10枚分の金額(1000PP)でまとめてカードを買えば、1枚ずつ10枚買うのと同じ金額で11枚のカードがゲットできる。
さて、どうする?
そういう話である。
「……まぁ、UR確定パックを買わない手はないよな。どう考えてもアド」
計ったようにゴブリン1匹分だし。
そもそも魔石(仮)の使い方、これ以外にわからないし。
ここでケチってカード0の状態でモンスターと戦って死んだら、たぶんそれで終わりだし。
買う買わないを考えると言うよりは、チュートリアルの一環に見える。
「ほかのパックについては後で考えるとして、封入率はどんな感じかなっと」
指を滑らせてウィンドウをスクロールさせると、お目当ての数値はすぐに見つかった。
R:82.197パーセント
SR:17.5パーセント
SSR(スーパーSレア):0.3パーセント
UR:0.003パーセント
「クソ確率ってレベルじゃないんだけど!?」
僕のスキル、本当に大丈夫か!?
下から二種類のレアリティで99パーセントを超えていた。
URに至っては確定で1枚引いておかないと、下手をしたら一生お目にかかれないかもしれないエグイ確率だ。
「これは……引くしかない。アドじゃなくて、もはやマスト」
拓郎は胸に手を当てて深呼吸を一回……二回……
心臓のドキドキが止まらない。『ステータスオープン』と叫んだときよりドキドキしている。
「買う、買うのは確定なんだ。先延ばしにするメリットもない。今、買う、買え、買おう、買わなきゃ!」
人差し指を『購入しますか(YES/NO)』のYESに添えて――押した。
【万象の書】から10個の小さな光の玉が宙に飛び出して、猛烈な勢いで円を描き、ほどなくしてスピードが落ちて……光はカードの形に姿を変えて……
「白が5つ、銀色が3つ……金色がひとつ、虹色がひとつ」
白色=R
銀色=SR
金色=SSR
虹色=URだろう。
「これは、いいんじゃないか?」
SRもSSRも確率より多め。
拓郎は、グッとこぶしを握り締めた。
叫び出したいところだったが、それは我慢した。
「いや、でも、これ……なんか幸先いいな」
えへ
うふ、うひ
にゃはははは……
身体がグニャグニャとツイストする。
さらに、傍から見れば不気味極まりない笑みが勝手に滲み出てくる。
完全にカードの形をとった光は円の形に並んで、宙に浮いている。神秘的な光景だと思った。ソシャゲっぽいけど。
まぁ。
それはともかく――
「さて、ご開帳だ!」
人差し指で、中空に浮かんだままのカードを弾く。
光が弾けて、ウィンドウが開いた。
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R:HPポーション
R:万能薬
R:HPポーション
R:MPポーション
R:アイアン・ゴーレム
SR:狂戦士の剣
SR:リュンクス
SR:サンダー・ブレード
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