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エピローグ

「あ…」

「どうかされましたか?」


 空腹も疲れも思考を低下させる。休憩と食事をして満たされたの俺たちは話し合いに万全の状態。

 本当なら出発前に確認すべきことだったが、ホロウの事件もあり落ち着いて話すことができていなかった。


「なんだかんだ色々あって情報整理できないまま出発したけど、今後について確認しておかないか?」

「そうだな!」

「す、すみません」

「全然、俺もすっかり忘れてました」


 俺とナイトは苦笑して顔を見合わせた。ユーリはと視線を動かすと、わくわくとしていることが分かるぐらい目を輝かせている。まったく、相変わらず過ぎて力が抜けてしまう。


「さて。いまさらになるけど、俺たちの目的の確認をしよう」


 俺の言葉に目の前にいたナイトは喉はごくりと音を鳴らした。


「俺が認識しているのはーー…世界の邪気を吸収し、そして、浄化する役目をもつ大樹ガイアが、現在いまなにしかしらの理由で機能していない。俺たちはガイアが正常な活動できるようにすること」


 あらためて口にすると、なんとも虫食いだらけの地図のようだ。

 まるで子供の頃に繰り返し聞いたユーリの『オレは勇者になる!』に近いものを感じる。


「そのために、俺たちは”聖地ネリヤカナヤに向かうこと”で合っているか?」

「はい」


 ナイトは迷いなく、こくりとうなずく。


「と言うことは、聖地ネリヤカナヤはあるってことでいいんだよな? 正直、存在していると思ってなかったんだけど」

 

 そう。代々語り継がれてきた物語だけあって、お伽話、非現実的。

 地図にのっている、場所がわかっているなら旅なんて話にならないだろうし、最初から「1週間ほどで到着する」とか伝えるだろう。

 だけど、王令にもただ「勇者として任命する」「勇者の共として任命する」として、”旅の役割”しか書かれていなかった。


「ある、はずです。場所は不明です」

「たしかにゲームの中でも、場所はマップ上にも表示されてなかったような…」


 歯切れの悪いナイトに対して、ユーリはまたしてもユーリ語を混ぜて雄弁に語り出す。ユーリの話は分かりそうで分からないので、そのまま聞き流すことにする。


「げ、げーむの中?」


 いまだにユーリに慣れていないナイトは戸惑いの声が漏れ出ている。


「ナイト。ユーリの話は半分で大丈夫だ」

「えっ」

「それじゃあ、俺たちは向かう場所がわからないまま歩き回るってことか?」

「いっいいえ。勇者の任命は女神からの啓示になりますので、その際に、聖地ネリヤカナヤに向かう方法も教えていただきました」

「方法?」


 場所を啓示するのではなく、()()

 聖樹ガイアが機能しなくなったから()()として()()を選んだ。

 実際、世界に影響を及ぼしているのだから、早く改善した方が良いはずなのでは…?

 女神も場所がわからないってことか。

 

「はい。啓示の中で、聖樹ガイアに関する伝承がある地を巡ればおのずと導かれる、と」

「なるほど」


 いくためには()()をふむ()()ってことか。

 儀式みたいなものだろうか。


「あぁ、そうだった! 忘れてたぜ。マップの中、はじからはじまで歩いて周回したわー。だけど途中に入るエピソードがまじヤバくてさー。ちょっと面倒だなって思ったけど、神エピがあると周回するのも悪くないなーって思ってたら、いつの間にかガイアんとこ到着してたんだっけかな? いやさー…」

「わかった、わかった。あとで話は聞く」


 とりあえず儀式かなんか、場所に行くための準備や素材が揃うまでは世界中を歩き回るってことは間違いない。

 これは長い旅になりそうだ。


「ふぅ」


 思わず、ため息をがこぼれる。


「あ、あの。やはり、このような終わりの見えにくい旅はお嫌ですよね?」


 ナイトなりに俺がこの旅について出した結論を察したようだ。


「いや、想像より長い時間がかかりそうだなって思ったぐらいだ」

「ですが……ユーリ様は逃れることはできませんが、セイ様はまだ逃れる道が……」


 心なしか、暗い影が落ちたように見える。

 口早に紡がれる言葉も仄暗ほのぐらい。


「いやいや。なんでそんな後ろ向きなんだ? 一度、受けたからには最後までって思っている」

「え?」

「それに…ホロウの時に思ったんだ。あれは邪気によって狂わされてしまった魔獣だよな?」

「えぇ、そうですが……」

「あのホロウ、子供いただろう? 邪気に狂いながらも、子を守ろうと最後までもがいたんだと、俺は思ったんだ」


 あのあとすぐ、倒した魔獣の回収とカシュリの森の調査が入った。

 その際に判明した…巣穴の奥にいた幼い魔獣の子供たち。本質は変化しないとしても、邪気に狂わせられた状態は苦しかったに違いない。

 だから、たとえ親としての本能であったとしても、子を巣穴に隠し、餌を集めたことは、あのホロウなりのもがきだと俺は感じてしまった。

 魔獣は人に害する場合もあるけれど、それは人が魔獣に対して害を与えた場合が多く、魔獣からというのはごく一部。

 基本的には、魔獣と人間は共存をしている。

 あのホロウの子供たちは王都の魔獣管理局に保護されることになった。

 だけど、それは邪気によって変わってしまった未来。なにもなければ、あの自然豊な森で親子で過ごす日々があったはず。


「だからさ、たとえ魔獣でも自分の意思を曲げて終わるようなことはなくしてあげたい。全部とは言わないけど」

「セイ様……」

「大した魔術も使えなし、治癒術にちょっと自信があるぐらいの一般人だけど・・・最後までよろしく頼む」

「はいっ!」


 どこにどう感動したのかわからないけれど、ナイトの瞳はすこし潤んでいて、太陽の陽が射してキラキラと輝いていた。

 本当にナイトは純粋すぎる。


「いいぞ! もっとやれ!」


 ユーリ語を聞き流しはしていたものの大人しくさっきまで近くにいたユーリが、いまは俺たちからすこし離れ、茂みの中に体を埋めていた。そしてそこからユーリの荒い鼻息が聞こえる。

 なんだか既視感がある光景である。ごくごく最近で。


「はぁ、ユーリ。ちょっと落ち着いてくれ」

「えーっと、ユーリ様?」

「こんな序盤に親密度が爆上ばくあがりとか、なにこれ。オレのチートとかじゃないよな……」


 またしても、ぶつぶつとまた別の空想をはじめたユーリ。

 当分、現実に戻って来ないのは経験済み。


「ナイト。コレはユーリの通常の行動だから、深く考えなくていいからな」

「は、はい」

「まったく。それでナイト、俺たちが向かうべき最初の伝承地はどこになるんだ?」


 昼食の片付けをしながらまとめた旅行鞄を背負う。

 同じく片付けをしていたナイトは思い出したようにハッと顔をあげた。


「あっ、えっとですね。リリエール領です。そこには領主のみに引き継がれている伝承がありましてーー…」

「伝しょ…」

「なぬっ!? リリエール領だとっ! オレの前世チートが火を吹くぜぇー」


 ナイトに質問した俺よりも先に反応するユーリ。俺の言葉はユーリのやる気がみなぎる大きな声によって消えた。

 べつに大した内容ではないので問題ない。時間はたくさんあるのだから。それよりもーー


「ゆゆユーリ様ぁ!? おち落ち着いてくださいっ!?」


 ユーリはなんだかんだ言っても相変わらずだし、ナイトは当分ユーリに慣れなさそうだし。


「はぁ…」


 前世だのチートだの意味はわからないし、俺はどこにでもいる平凡なしがない人間だけどーー世界を救う旅に出ることになりました。



…See you next journey!

セイ達の世界を救う旅はこれからまだまだ続きますが

ここで一区切りとさせていただきます!


タイミングなど合えばエピソードを追加しようと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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