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私と鏡の中のペルソナちゃん


私は写真写りが悪い。それも非常に。瞳で見れば普通の私なのに、写真を通すと変に歪んでいるように思える。お腹周りはもっとシャープでくびれがあるはずだし、足はもっと長いはず。


それに、もっと髪にツヤがあって、綺麗なストレートヘアのはず。なんか納得できない。ムカムカ。イライラする。


そんな話を友達にすると「そんなことないよ。かわいいよ」だとか「いつも通りじゃん。変に気にしすぎよ」と言われてしまう。友達にそう言われると、そんな気もする。でも、心の中で納得しない自分がいて、ぐるぐると駆け回って、私の心に悪さをする。まったく嫌なヤツだ、こいつめ。


でも、家の洗面台の鏡はちゃんと私を写してくれる。そこにはキレイな私がいる。まるで少女漫画を実写化した作品の主演女優のようだ。もちろんイケメン男子に告白されて、私はハーレム状態。


「いつまで鏡を見てるの」


と鏡の前でうっとりしている私に向かって母が言った。うるさいなぁ、もう。


私は気分が悪くなって、冷蔵庫からアイスを取り出した。ガリガリ君。がぶりとかじる。歯にしみる。イテテ。


「あんた私に似たんだから、鏡を見たって、顔は変わんないわよ」


と、しみる歯を押さえている私に母が冷めた表情で言った。確かに母の顔はキレイじゃあない。全体的に凹凸がなくて平ら。睫毛は長くないし、鼻は高くないし、唇は厚くなくて色気がない感じ。そんな母の顔に私が似ている。これは心外だ。ガリガリ君をがぶり。歯にしみる。イテテ。


「それは嫌だな~」


私は溶けかかっているガリガリ君を口に挟みながら言った。


「私の顔に似て申し訳ありませんね!」


と母は冗談半分で怒ったふりをして言った。怖くないもんね。


「でも、ちゃんとあんたの父親と結婚できたんだから安心しなさい」


安心できるもんかなぁ……。逆に不安になるかも。


「少女漫画に出てくる主人公のような顔が良かったな」


私は呟くように言った。


「あんたの顔には良いところがあるのよ」


と母が言った。どれどれ。聞かせてくださいな。ワクワク。


「愛嬌があるの」


母は愛嬌たっぷりの顔で言った。私はずっこけそうになった。なんとありきたりな褒め言葉。愛嬌以外はないと言っているようなもんじゃん。なんかがっかり。


「はいはい」


ガリガリ君が無くなった。私はまた洗面台に行った。


鏡の中の自分を見る。なんか母と話をしていたら、本当に母の顔に似ているような気がした。前はもう少しかわいく写っていたのに。でも、自然とイライラしなかった。


「まあ、いっか。女は愛嬌だもんね」


私は鏡の前でにっこりと笑って、母が使っているお高い化粧品を顔に塗りたくった。


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