7 悪役令嬢に転生した干物女は天ぷらを食べたい。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ
転生者のヒモが現れた
ミーティア家の酒宴からしばらく経った。
WASHOKUは大好評だったようでミラからお礼を言われた。
さらに寝間着にしてみたいとジャージの注文が数件入った。
ふふふふ、異世界ジャージ旋風が巻き起こるまであと少しか?
私は次なるメニューの試作のため、おなじみになったジャージを着て調理場にいた。
ボウルで小麦粉と卵と水を混ぜる。
ここ数日天ぷら食いたい欲が止まらないのだよ。
我がフローレンス家の屋敷は海から遠いから、エビやタコのような魚介を具に使えないのは口惜しい。
けれど野菜がある。乳製品がある。
具材に使えそうなのはピーマンとキノコ、チーズ、鳥肉は細切り。
最近嫌なことがあったから、食べて忘れるんだ。残業続きのときもいつもそうしていた。
デールがメモ帳を片手にワクワクしている。
「クリティアお嬢様。今日は何を作るのですか?」
「天ぷらを作るわ」
「天ぷら?」
「フリッターの簡単なやつね」
洋風天ぷらとも呼ばれるフリッターはメレンゲや牛乳を使うことが多いけれど、私のはザ・日本の天ぷらだ。
このために端材で箸も作ってもらった。トングより使い慣れた菜箸のほうが調理しやすい。
衣を油に落として、温度がいい感じになったら打粉をしておいたチーズやピーマンを揚げていく。
パチパチ音が心地いい。
「よし、いい感じ! 天ぷら完成よ!」
ピーマンを味見でかじってウマウマですわ。
炊いておいた白米に乗せていただく。
……ってあれ?
なんか減ってる?
「ヤッター! 天ぷら久しぶりーー! 美味しー!」
いつの間に侵入したのか、ミゲルがつまみ食いしていた。
私が楽しみにしていたとり天とチーズ天ぷらをモシャモシャ食んでいる。
「ぎゃ! なんでいるの!?」
「やあクリティア。婚約打診に来たよ」
「食いながら言……わないでくださいませんこと」
使用人がいるのにうっかり素が出てしまったい。
子どもでも、ミゲルは他家の貴族で次期伯爵様。
デールをはじめ、メイドたちが深々頭を下げている。
「イヤですわー。あなたとの婚約はお断りしたはずですのに」
「あんたに話したところで埒が明かないから外堀を埋め……コホン。子爵様のアポイントとって直接打診に来たよ」
姿だけなら美少年なのに、中身がヒモで言ってることがクズなんだよなぁ…………。
「おれとクリティアが婚約したら姉上が喜ぶじゃない」
「姉上のこと大事に思うなら、今世は本気を出して真面目に仕事しなさい」
ミラのことは友だちとして好きだけど、ヒモを養うのは絶対に嫌だ。
「ハッハッハ。本気とか真面目とかおれが一番嫌いなやつ」
「ふふふ。人にぶら下がってサボるヒモ、私が一番嫌いなやつ」
二人の間にバチバチ火花が飛び散る。
くっそ私のとり天とチーズ天返せや。楽しみにしてたのに。
「あらまぁ、クリティアお姉様はミゲルと気が合うのですね、嬉しいですわ」
私たちの因縁を何も知らず、このタイミングで入ってきたミラには仲良しこよし微笑みあう姿に見えるらしい。仲良しどころか、こいつは私の敵よ。
ジーニャが新たな手紙を運んできた。もう何も言わなくても差出人がわかる。
【ミーティア家のミゲルに求婚されたと聞いたよ。
僕というものがありながら他の男と婚約するなんてひどいじゃないか。あの日海辺で誓いあった僕らの愛は永遠だったはず……】
「あんたもヒモもどっちも赤の他人じゃーーい!!!!」
ロミオメールは紙飛行機にしてぶっ飛ばした。





