最終話 悪役令嬢に転生した干物女は料理学校の講師になる。
前回までのあらすじ。
ラーメンは最強である。
ごきげんよう、クリティアです。
王都で開催されたグルメフェスで指揮を取り、ラーメンを広めた。
どの屋台のラーメンもお客様からは好評で、完売御礼。
ラーメンのレシピもひろめたら、この世界でラーメン食べ歩きを楽しめる日が来るかもしれない。
ここで私はさらに勝負に出ることにした。
父上の書斎で、父上母上クロムに打診する。
「父上。フローレンス領に料理学校をつくりましょう!」
「なんだいクリティア。本を出すだけでは飽き足らず、学校で料理を教えるだって? 料理なんて教える意味はあるのかい」
父上は呆れ顔をしている。
「何をおっしゃいますか。水と空気だけで生きている人間はいません。老若男女、貴賎問わず、人は必ず毎日何かを食べて生きます。つまり命の根幹です! 一人でも多くの人に料理の良さを教え広めることは、いずれ領地のためにもなります」
料理をするには食材が必要。うちの領地で学校を開けばそこで食材を使う。村は野菜の作付面積と生産を増やし、雇用を増やせる。
活気が出る。あんなにいい村を過疎化なんてさせませんとも。
「フローレンスはオーキナの所属だ。国内の学校を新設するなら国の許可が必要だぞ」
「家族みんなの意見が固まったら国に打診するのです。経営計画書はすでにまとめてあります」
母上とクロムも計画書に目を通して、考える。
「ふむ。甘いところは俺と母上で詰めていけば、悪くない話ではありませんか、父上。最近は領民も増えてきていますし」
「そうね。騎士の学校や勉学を教える学校との差別化もはかれていいかもしれませんわ」
クロムと母上も賛同してくれて、二日後父上は折れた。
二ヶ月後、国から許可がおりてフローレンス領に料理学校を建設する運びとなった。
講師は誰がつとめるのかというと、我がフローレンス領出身の料理人、クック。
クックは基本的にこの世界の料理を。
私は和食を教える。
一年制の学校で、基礎から料理を教えていくことになる。
卒業生には飲食店での就業斡旋や独立開業のサポートをする体制もつくる。
生徒の募集も、身分問わず行う。
私がこの世界で前世の記憶を取り戻してから、四年目。
ついに学校が開校した。
毎日料理を作るから、汚れてもいいようにジャージが制服だ。
生徒たちはやる気に溢れた子ばかりで、半数は女の子だ。
【女は家庭を守り夫が外で仕事をするもの】という風潮の強かったこの世界では、目覚ましい変化と言える。
教室に入ると、生徒のシャーリィがバスケットを抱えて駆け寄ってくる。
「クリティア先生ー! 見て見て。家で作ってきたんだ! 食べてみて!」
「あら美味しそう! 腕を上げたわねシャーリィ」
シャーリィが持ってきたのはごま塩むすび。
形はきれい、握りもよし。口に含めばふんわりほぐれる。美味。とても美味なり。
初日では米をたくときに水分を多くしすぎておかゆになっていたから、すごく進歩している。
「美味しい! 今からでもお店を出せるくらいよ!」
「本当ですか? わぁ、うれしいなぁ! お店を開いたら先生が一番最初のお客様になってくださいね」
「もちろんよ。朝イチで並んで食べに行くわ!」
シャーリィのおにぎりを試食したら、次から次へ、俺もわたしもと生徒がお弁当を持ってくる。
流石に私の胃袋にも限界があるぜよ。
食べきれない分は持ち帰ってクロムとミラに分けてあげよう。
早よ告白しろと思っていたが、弟は去年の冬ついにミラに求婚して、オーケーをもらった。
なのでミラは今、ミラ・フローレンス子爵夫人である。
可愛い妹ができて嬉しいねぇ。
ヨイは軍学校にて武術の先生になった。海辺の領地で細々暮らしていた令嬢から一転、大躍進よ。
王子は今日も今日とてファンの女の子たちに追い掛け回されて、お忍びで城下のレストラン食べ歩きをしている。
コリンはお菓子の研究をして、お菓子の店を開いた。
ミゲルはようやく脱ヒモする気になったようで、領主様の側付きをして領地運営の勉強をしている。
イイ男になってまたクリティアのとこに求婚に行くねと言っていたが、根がヒモだからいつまで持つやら。
「先生、今日の課題はなんですか?」
席についた生徒たちを見渡して、私は黒板に大きく料理名を書く。
「今日作るのは、肉じゃがです! 甘じょっぱくて酒がすすむのよ!」
今日も私は講師として生徒たちにWASHOKUを伝授していく。
悪役令嬢に転生した干物が料理学校の先生になる、なんていう未来があってもいいじゃない。
美味しいものは世界を平和にするんだから。
さ、仕事が終わったら町の食堂でラーメンを食べつつ、キンキンに冷えたビールをグイッといきましょう!
END





