39 悪役令嬢に転生した干物女はコタツムリになる。
前回までのあらすじ。
タコワサと酒は最強である。
朝晩寒い日が増えてきた今日この頃。皆さんいかがお過ごしだろうか。
私は恐ろしいものを異世界に持ち込んでしまった。
コタツである。
フローレンス領お得意の木工技術を駆使して、ちゃぶ台とコタツ、季節によって変えられるように魔改造した。
コタツ布団も、領地で育てている綿花をふんだんに使っている。
魔法の湯たんぽ的なものをテーブル板の裏に仕込むと、火傷しないけど温かい、程よいぬくもりが維持される。オンオフ切替可能。
試作品第一号が、私の調理場横の小上がりに設置された。
ちょうど遊びに来たミラとミゲルが、入って数分でコタツムリ化している。
ミゲルなんて座布団を枕にして、ミカーン(みかんに似た甘酸っぱい果物)をほおばる。貴族の子とは思えないくつろぎっぷりである。
ミカーンの食べ過ぎで両手の指が真っ黄色になっている。
ジャージ、はんてん、そしてコタツ。
もはやここは異世界の日本だ。
湯呑みで緑茶をすすり、ミカーンをむくミラ。
「はぁあ、素晴らしいですわ、コタツ! なんて温かいのでしょう。暖炉を使わずとも暖を取れるなんて」
「やー。おれは最初会ったときから期待してたよ、クリティアみたいな干物ならコタツをこの世界に持ち込むって」
「褒めてるのか貶しているのか、どっちかしら、ミゲル」
「半々?」
いい度胸だなヒモ。
ルールーがおかわりのお茶を運んできて、ミラは三杯目を飲む。
「お姉様、わたくしコタツを二台いただきたいですわ! お父様とお母様にも試していただいて、うちの領地に広めたいです。ミーティア領は他の領に比べると雪深いですから」
「もちろん、職人たちが喜ぶわ!」
商談がまとまったところでクロムが調理場に入ってきた。
ミラとミゲルに気づくと会釈する。
「姉上、またやぼったいものを開発したんですね………」
コタツを見るなり表情がひきつった。
クロムはジャージも孫の手もはんてんもダサいって一蹴するんだもんなぁ。
便利ならなんでもいいじゃんと私は思うけれど、クロムは見た目も気にしろと言う。
あれ、なんか姉と弟の立場逆?
「見た目はちょっとアレだけどあったかいのよ! コタツは正義! あなたも入ればわかるわ! 我が領地を発展させる冬に外せない商品よ!」
「はぁ………わかりました」
しぶしぶ靴を脱ぎ、小上がりにあがる。そしてコタツに足を入れるなり目をみはった。
「あははは。あったかいよねー、いいよねぇコタツ。顔に書いてあるよクロム。素直になりなって。ダサくてもコタツは良いものなんだよ」
「そうですねミゲル様」
ニヤニヤと笑うミゲル。クロムがコタツ内でミゲルに蹴りを入れた。ミゲルが笑顔を保ったまま反撃する。
私は気配を察知して、サッと足を引っ込める。
ミラも湯呑みを持って避難した。
コタツ内で喧嘩する弟たち。
ハッハッハ。クールな堅物に見えてうちの弟、意外と子どもっぽいわ。
職人に頼んで両親の部屋とクロム用にもコタツを作ってもらったら、三人ともコタツムリ化した。
ミラの家族も気に入って、ヨイやコリン、そしてカインも注文してくれた。
カインが取り入れればカインのファンも欲しがる。
コタツは冬の防寒家具としてまたたく間に広まった。
異世界の人々の間でコタツは、人を食らって離さない魔性の家具と呼ばれるようになるのであった。
コタツムリ化して動かないから
ビールっ腹は成長して雪だるま腹に進化した。





