【ハッピーバースデイ】
※この作品には軽度のゴア表現があります。
※この作品は世界中の思想や哲学等、様々なイデオロギーが反映されています。
「神は死んだ」
大昔に何処かの哲学者が言ったらしい。
きっとこうなる以前なら馬鹿げていると嘲笑したし、
その真意すら理解らなかっただろうが、
今ならその切っ先くらいは理解出来る。
光の差し込む隙さえ与えない、
暗い箱の中で目が覚めた。
大きさにすると、ごく一般的な車が2台が並んで
停められる程度の四角い靴箱の様な部屋の真ん中で。
何故こんな所に幽閉のか理解は出来なかったが、
ここで自分の有様を嘆いていても永遠に状況が好転することがない事は知っていた。
そこを部屋だと認識できたのは部屋の中心正面に取手のない扉があったからだ。
真っ先に浮かんだのは何かの実験施設ではないか?
という実に3流SF地味た妄想だが有り得ない可能性ではない。
目が暗闇に慣れてくると壁に何かが描かれていて、
その輪郭まではぼんやりと視ることができた。
きっと初めての経験であったし、視覚的には極めて暗いかもしれないがよく想像に出てくる南洋の海の様に思考は極めてクリアだった。
部屋は夜の帳が落ちた後より、月のない夜のように
漆黒という点を除けばそこまで窮屈する広さ
という訳でもない。
と言ったところで、壁の文字を要訳すると
「ここから出してくれ」
「願わくばこの暗く陰鬱とした孤独の牢獄から
俺を解放して欲しい」
「俺を忘れないでくれ」
随分願い事が多いな...
どうやら前任者がいたようだ。
しかし、辺りを見渡してもそれらしい遺骸が見付からない事から彼(彼女)は、かのアルカトラズが可愛く見える程の暗く孤独な牢獄から脱獄することが出来たのだろうか?
「これを視ている君に頼みたい事がある」
「この私を救ってくれ」
文字が少し霞んでいる。
「きっと君にしか出来ない」
その他くまなく辺りを探したが、
つまらない壁が何も語らずそこにいるだけだった。
ガチャンッーーー!
背後の壁から音が聞こえた気がする・・・
恐る恐る近づいて押してみると壁が扉の様に開き、
光が見えた。
母親のお腹から出てくる赤ん坊は、
正しく全員こんな気持ちなのだろうか?
扉の先に何があるかよりも、
久方振りに出会った閃光の眩しさ故に
眼を開けることもままならない方が問題だった。
一体誰がこんな所に閉じ込めてくれたんだ?
何の為に?
頭に浮かぶ数々の疑問は降り頻る
雨季のスコールの如く尽きることを知らない。
しかしそれ以上に、飽くなき好奇心が疑念から来る
畏れ(おそれ)に勝ったという訳だ。
その扉をさらに強い力で押した。
※作品の無断転載は禁止ですが、二次創作は可です。
※この作品は小学生時代の構想を元に創られています。




