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腹黒薬師の八つ当たり  作者: くろう
2/6

薬師の青年②

「アレン、なんだそれは」


 レオが僅かにたじろぎながら問う。


「これはアルコの実と言って、お酒の原料になる木の実です。で、こっちはヒーリン草。ポーションの原料ですね」


 いつの間にかレオの腕を捕まえていたアレンは傷口に水筒の水をかけながら説明を続ける。


「アルコの実自体は殆ど無味無臭なので、お酒にする時は果物なんかと混ぜて搾るんですが、その果汁には消毒効果があるんです。外傷治療には重宝するんですよ。あ、少し沁みるので我慢してください」


 そう言うとアレンは、傷口に躊躇いなく果汁を搾る。


「——っ」


 言われた通りの刺激がレオを襲うが、刺激自体は傷口を湯船に浸けた時と同程度のものだった。観念したレオはそのまま治療を受ける。


 次にアレンは、水で濡らした布にヒーリン草を包み、すり潰す。


「おいおい、それ、そのまま使うのか?」


 アレンの手元を見たレオが不安そうに問いかける。


「安心してください。ポーションほどじゃないですが、これだけでもそれなりに効果がありますので。それくらいの傷なら2、3時間程で完治しますよ」


 布地にヒーリン草の緑が充分に移ったのを確認し、その面を傷口に当てた。その上から包帯で縛り治療は完了した。


「はい、おしまいです」


 一連の治療行為を見ていたレオは素直に感心した。


「随分と手際が良いもんだなぁ」


「そりゃあ薬師ですし、これくらいは。僕も薬草採集なんてしてるとよくやりますので」


 前半はドヤ顔で、後半は少し照れ臭そうにアレンは言った。


「ともかく、ありがとよ。なんか礼をしなきゃな」


 レオの言葉を聞いたアレンは、満面の笑みで答えた。


「丁度よかった。実はレオさんにお願いがありまして」


 アレンの反応に、レオは最初とは別の意味で警戒心を強めた。


「おい、あくまで治療分程度だからな!」


「ふっふっふっ、大丈夫ですよ……お願いというのは……」


 勿体ぶるようなアレンの態度にレオは生唾を飲み込む。


「(ゴクリ)」


「実は、道に迷っちゃいまして。村までご案内いただけないかなーと」


が、予想外の言葉に脱力した。


「なんだ、そんなことか。それくらいならお安い御用だぜ」


「ありがとうございます」


 レオの承諾にアレンは感謝を告げる。


「そうと決まれば、早く行きましょう。手伝いますよ、ソレ」


「ソレ?」


 アレンの提案に一瞬キョトンとしたレオだったが、アレンの指した先を目で追い、直ぐに理解した。


「あぁ、そうだな、助かる」


 2人の視線の先には、先程倒した小猪が横たわっていた。



「ほら、見えてきたぞ」


 先頭を行くレオがアレンに声をかけた。その肩には小猪が吊るされた棒の一端が乗っている。


「よかった。なんとか日暮れ前には着けそうですね」


 返すアレンの肩も同様だ。


「ワンッ」


 2人の横でハヤテが満足そうにひと鳴きした。


「いやぁ、助かったぜ。流石に小猪を一人で担いで帰るのはしんどかったからな」


「お役に立てたのなら何よりです」


 レオの謝辞を、アレンは素直に受け取った。


「それにしてもアレン、お前、見かけによらず力持ちなんだな」


 確かにアレンは、十代男子の平均程度の体格であり、レオと比べると細身である。


 それでも小猪の体重をレオと分け合っており、更に採集籠を背負っているのだ。


「一人旅は何かと物騒ですからね、それなりには鍛えてます」


「確かにな。それじゃあ剣の腕にもそれなりに覚えがあるのか?」


 レオはアレンの剣に視線を向ける。


 視線に気づいたアレンは、腰の剣に手を添えて照れ臭そうに答えた。


「これは護身術程度ですね。危険を感じたら基本即逃げです。僕、体力には自信あるので!」


 そんな話をしているうちに、2人と1匹は村の入り口に到着した。衛士の男がレオに気づき声をかける。


「ようレオ、お疲れさん。今日は随分と大物だな」


「なぁに、ハヤテのおかげさ」


「ワンッ」


 名前を呼ばれたハヤテが自慢げに吠えた。


「そうかそうか。よくやったなーハヤテ」


 衛士はしゃがみ込んでハヤテをわしゃわしゃと撫でる。


 ひとしきり撫でて満足したのか、衛士は立ち上がり、今度はアレンに目を向けた。


「で、そっちの坊主は?」


「コイツはアレン。旅の薬師で昨日から村に泊まってるらしい」


 紹介を受けたアレンは、会釈して自己紹介をする。


「はじめまして、アレンと申します。昨夜からこの先のうさぎ亭でお世話になっています」


「あぁ、あんたがそうか。夜担当のやつから引き継ぎは受けてるよ。まぁ、ゆっくりしていってくれ」

お読みいただきありがとうございます。

本作品は不定期更新です。遅筆な上、数話分溜まったら纏めて更新する予定なので、更新頻度は少なめです。予めご了承ください。


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