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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第三章 決闘開始
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第七十八話 最強降臨3

 ロキはティアを下がらせると、今度は自分の番だというように魔力を周囲に撒き散らした。


「り、リバイアサン! やれっ!」


 加藤陣営の一人がそう指示を出すと、リバイアサンは大きな咆哮を上げながら、ロキに襲いかかっていく。

 その巨体から繰り出される攻撃は、どれも普通のアウラや人が当たってしまえば、ただでは済まないはずだが、ロキはそれを平然と避けたり、防いだりしている。


 リバイアサンもれっきとした厄災級である。


 昔、この世界ではないところで一度リバイアサンの怒りを買った人族がいた。

 そして、その次の日には……言うまでもないだろうが、その人族はもとより国自体が消し飛んだという逸話が残っている。


 そんなリバイアサンが今全力で暴れているのにも関わらず、ロキはおろか蒼にすらまともに攻撃が当たっていないのだから、加藤陣営の戦闘員たちは皆口を開けて驚くしかない。


 まぁ、現在蒼の護衛にはミカエルとティアがついており、どう頑張っても蒼に攻撃がいくことはない。

 そして、これが一番大きな要因だが、今ロキと相対しているリバイアサンはオリジナルではない。


 ただのレプリカなのだ。


 どれだけ頑張っても、日本の軍や政府が用意できたのは人が人工的に創り出したレプリカだ。


「ふむ、どれだけ頑張っても、贋作は贋作ということよな。本物のリバイアサンはこんなただのでかいだけのヤツではないぞ?」


 ロキはそう呟きながら、リバイアサンに向かって蹴りを入れた。

 ただの蹴りだ。

 されど、その蹴りは天地を裂くほどの威力がある、厄災級を超えしものが放った蹴りだ。


「グオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


「思ったよりも頑丈だな。では、これはどうだ? 『彼岸花』」


 ロキが魔法を展開する。

 『彼岸花』は、名前の通り古の日本に存在した死を意味する花である。


 ロキはそれを魔法に転用し、出来上がったのがこの『彼岸花』だ。

 魔法の威力は、彼岸花に触れたものを殺す。


 まさに破壊神を体現した「必殺」の魔法である。


 見ている分には、美しくあたり一面に咲き誇る彼岸花は圧巻であるが、その魔法を受けるであろうアウラたちはたまったものではないだろう。


「ちなみに言っておくが、この花に触れたものは向こうの世界には帰れない。永遠と死を彷徨い続けよ」


 ロキは不敵な笑みを浮かべながらそう言うと、その効果範囲をどんどん広げていく。

 それと同時に、花に触れたアウラたちは皆一様に一瞬で意識を刈り取られ、この世界から姿を消していく。


 先程のロキの話の通りなら、今彼岸花に触れたアウラたちは元の世界に戻るわけではなくみんな死んでしまうようだ。

 全て人工アウラなので何ら問題がないように感じるが、軍や政府からしたら大事な戦力を失うわけなので経済的にも軍事的にも大打撃である。


 先程のティアのように、元の世界に返すこともロキならできたと思うが、わざと存在自体を消しとばしたと言うことは、この人工アウラについてロキの中でも何か思うところがあるのだろう。


「蒼、妾の分は終わったぞ? あとはアーニャとリオンに任せる」


「ありがとう。ロキは優しいね」


 蒼は、全てを察したような優しい笑みを浮かべながらロキを労うと、ロキはそっぽを向いた。

 しかし、両手はしっかりと葵の方に差し出されており、頑張ったご褒美と言わんばかりのハグを求めてられていた。


「妾がか? ふっ、破壊神が優しいなど、あるわけないだろう?」


「優しい破壊神も悪くないと思うよ?」


 蒼はそう言いながら、ロキの抱擁に答えるとロキは幸せそうな顔をしながら思いっきり蒼に甘え始めた。

 蒼の考えで言えば、先程言った通り三人の中で一番万人に優しいのはロキであると思っている。


 逆に一番、冷淡なのはティアである。


 彼女は自分が興味のないものにはとことん興味がないのだ。


 慈愛の神と称えられているティアではあるが、もとより最近ではロキたち仲間の四人と蒼にしか興味が向いていない。

 なので、先程も蒼が求める最善の結果をティアは出したし、今後もティアの中心には蒼がいることになる。


「ま、ティアも優しいけどね? 俺はそんなティアのことが好きだしね」


「ふふっ、私も蒼のことが大好きよ」


 蒼の好きは家族に対しての好きだったのだが、ティアはそれでも嬉しそうに笑いながらロキと同じように蒼のことを抱擁した。

 側から見れば、決闘中に二人の絶世の美女に抱擁されて喜んでいる男にしか見えないのだが、別に側から見る必要もなく蒼は喜んでいるので問題ない。


「蒼さま、流石に朱音様たちに怒られますよ?」


「おっほん。でもねミカエル。シリアスってそんなに長く続いちゃダメなんですよ。抜くところはしっかり抜かないと!」


「なら私が実際にぬいて差し上げましょうか?」


「ごめんなさい真剣にやります……」


 普段蒼に甘いミカエルだが、ここでミカエルまでそちらにいくと際限がなくなるため、珍しくミカエルが蒼のことを制した。

 確かにまだ決闘の最中だ。

 ほぼ勝ち確定ではあるが、気を抜いていい場面ではない。


「クッソ! 他のアウラはどうした!」


「全てアーニャ様とリオン様に壊されてます!」


「僕はロキほど優しくないけど、君たちにこのおもちゃはまだ早すぎだよ。悪いけど、全部消しとばすよ」


「私はどっちでもいいけど、どうせなら私が力を取り込もうかしら」


 リオンの特性は、相手の力を自分が取り込むことだ。

 それが、リオンを厄災級第一位にまで引き上げた根源なのだが、アーニャは微妙な顔をしてそれを止める。


「やめといた方がいいよ。この人工アウラって不純物が多いから……あんまり意味ないと思うよ」


「なるほど、じゃあゴミと一緒じゃない。さっさと終わらせましょ」


「その方がいいね。生きている人を殺すのはちょっと可哀想だけど、あのおもちゃは別だよ」


 アーニャとリオンはそんな会話を交わしながらも、他のアウラたちを蹂躙していく。

 その力は、加藤陣営に畏怖を与え、もうすでに加藤陣営でまともにやる気があるものはいなくなっていた。


「こ、こんなの卑怯だっ! 一条! 女の力で勝って、アウラの差で勝って嬉しいか⁉︎ 最後に、お前が出てこいっ!」


 いや、最後の最後まで一人現実を見れていないものがいた。

 そんな加藤に、ティアたちは冷めた視線を向け今にも存在自体を消し飛ばそうとしていたが、蒼はそれを静止して一歩前に出た。


「加藤翔太……わかった。最後の一騎打ち乗ってやるよ」

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