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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第三章 決闘開始
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第六十五話 『永遠の彼方』の無双劇1

 俺たちが集合場所である、ギルド専用の競技場に着くと、すでに大勢の観客たちが席についており、一種のお祭り騒ぎとなっていた。


「す、すごい盛り上がりなんだけど……」


「外に出店もあるよ。向こうに賭博施設もあるし……これ大丈夫なの?」


 競技場の近くには、中で飲食ができるようにたくさんの種類の出店が設営されているし、入り口には堂々と『永遠の彼方』か『深紅の魔術師』のどちらが勝つかが書かれており、学園のポイントをかけることもできるみたいだった。

 今の倍率はちょうど半分半分だ。


 『深紅の魔術師』も中堅ではあるが有名なクランで、実績もしっかりしているため、人気があるようだ。


 一方で、俺たちは一年生ながらも全員十傑で構成されているため期待値も高い。

 しかし、まだ実績が無いのと、俺たちのことを知らない人も大勢いるので、それも加味して『深紅の魔術師』に賭けている人が多い印象だ。


「これ、俺たちも賭けれるのかな?」


「申し訳ございません。競技者たちは参加できないようになっております」


「当たり前でしょ。ほら、蒼いくよ」


「残念……」


 半ば琴葉に引きずられる形で、選手の控え室まで運ばれてしまった。

 もし、俺たちも賭けられるなら全財産自分に賭けたのに……


 まぁ仕方ない。


 なんでも、相手に高額のポイントをかけてわざと負けるのを防ぐためだそうだ。

 クラン内の9割が本気で戦っていても残りの1割が妨害工作を仕掛けて仕舞えば、正々堂々と勝負をすることができなくなってしまうための措置らしい。


 というわけで、俺たちはその後案内してくれる係の人が来るまでは控え室で着替えたり、軽く体を動かしたりして待つことになった。

 30分ほど控え室にいたけど、ちょうどその時くらいにみんなの準備が終わったためベストタイミングでもあった。


「それではみなさん。こちらの装着をお願いいたします」


「これは?」


「とある術式が込められたブレスレットです。古代兵器となっておりまして、専用の術式の中にいる間どんな攻撃を受けても死ぬことはありません」


「ちなみに、許容されている魔法のレベルは?」


「異界魔法までなら大丈夫とのことです」


 係の人のその説明を聞いて、俺たちは全員驚くように相槌を打った。

 異界魔法まで大丈夫となると、その上は世界魔法かerrorの2つとなる。この二つは国が滅ぶレベルでもあるので、これを防げというのは難しいのかもしれないけど、異界魔法でも威力とものによっては都市一つくらいなら簡単に消し飛ばすこともできるので、それを防げるとなるとかなり強力だ。


 古代兵器ということはかなり貴重なものなのだろうけど、その分効力も尋常ではないようだ。


 ただ、そのおかげで俺たちも遠慮なく暴れることができるので非常に助かる。


「でも、こんなのがあるなら決闘とか模擬戦の時にも使えばいいのにね」


「公式戦などでは使用されますよ。ただ、一般の試合で使用できるほど量産もできていない状態でして……」


「普通の試合でそこまで強力な魔法を使う機会もないですしね」


「そうですね。あと、攻城戦は専用の異界で行われますので、引き続きご案内させていただきますね」


「ありがとうございます」


 専用の古代兵器に、異空間まで用意されているのか……

 確かに、一つのギルド戦にここまで準備が必要になるとそれにかかるコストも大きいのだろうけど、そもそもこの古代兵器しかり異空間然り誰が用意しているんだろう?


 毬乃さんでもできなくは無いと思うけど、異空間を用意するのに毎回顔を出さないといけないはずだ。

 あの人も、理事長なのでそこまで暇では無いはずだ。

 となると、別の手段で準備をしていることになるはずだけど……


「この学園を創設なさった初代理事長が全て自動で準備できるように、術式を施しているようです。魔法戦争でお亡くなりになられましたが……」


「その人も厄災級のアウラを?」


「えぇ、詳しい文献は残っていないようですが……」


 なるほど。

 魔法戦争は日本も、外国も、そして異世界すらも巻き込んだ大戦争だったと言われている。


 その中で文化、技術、もちろん尊い命も多く犠牲になったため、もしかしたらその前の技術で作られたものなのかも知れない。


 係の人の話を聞いて、俺たちは少しだけ空気を重くしたが、それもだんだん聞こえてくる外の歓声で打ち消された。


「すごい人だね」


「普段はここまで賑わいませんけどね。きっと多くの学生が『永遠の彼方』のことを注目しているんですよ」


 係の人はそう言いながら、俺たちを外へと誘導してくれた。

 俺たちが姿を見せた瞬間、観戦席から大きな歓声が聞こえてきて少しだけ恥ずかしくなったけど、中には俺に堂々とブーイングしてくるようなやつもいた。


 うん。顔は覚えたからな。


 他の宗一郎たちにはいい歓声が飛んでいるのに、俺だけ実に平常運転である。


「蒼ってどこに行っても人気だよね〜」


「朱音さん、この惨状を見てまだそんなこと言えます? ちょっと人気すぎて泣きそうなんですけど」


 たまには可愛い女の子の声援だけっていうのも体験したい。

 まぁ100%無理なんですけどね。

 野郎どもからのブーイングがすごい。


「でも、女の子は割と蒼くーん!って叫んでない? よかったじゃん」


「透さん? なんか棘ない?」


「別にー。それより、私たちもクランで制服欲しいね」


「めっちゃ華麗にスルーされた……でも確かに。あれかっこいいな」


 俺たちの対面にいる『深紅の魔術師』たちはそのクラン名通り真っ赤なローブを全員纏っている。

 所々金の刺繍もされているのか、すごく豪華に見えるし、二十人全員が同じ服を着ているのは結構映える。


 きっとあれも人気の一つなのかも知れない。


「これが終わったらクランの制服も考えてみようか」


「だね。アイデアは蒼に任せるよ」


「あぁ、期待していてくれ」


「蒼に任せていいの?」


「透は不安かもだけど、蒼って意外と芸術のセンスもあるのよね」


「えー意外だ」


「「「だよねー」」」


「なんで女性陣全員でハモるんだよ!」


 全く失敬な。

 

 なんて、普段と変わらないやりとりをしていると、相手の人たちからすっごい不快オーラが伝わってきた。

 1年生の俺たちが全く緊張せずにこの場に立っていることが気に入らないのだろう。

 現に、『深紅の魔術師』リーダーの後ろに立っている人たちの中で数人足が震えている人がいる。


 これは単に場数の問題だと思うけど、普段から人に見られ慣れている俺たちからすればこの程度どうということもない。


 というか、この程度で力が左右されるのであれば初めから大舞台で戦うのは向いてないと思う。

 このまま緊張に押しつぶされるようであれば、期待外れでしかないのだが、相手は曲がりなりにもこの獅子王学園を1年耐え切った先輩たちだ。


 試合が始まるまでには、なんとか対処してくれるはずだ。


「これから『永遠の彼方』と『深紅の魔術師』によるクラン対決を始める!」


 審判の宣言により、場は一さらに盛り上がっていった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 十傑と上級生の普通の生徒だと普通の生徒のほうが実力が普通は上って認識なのかな?
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