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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第三章 決闘開始
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第六十四話 意外となんとかなる

「はい、武田くん、伊達くん、やり直し。水無瀬さんたちも危ないなぁ」


「クソっ流石にキツイな」


「僕も魔力より先に集中力が切れる。まぁやりごたえはあるけどね」


「久しぶりにこんなにきちんと訓練したかも。なんだか新鮮だよね」


 柊木先生の指導はスパルタなんて域を余裕で超えていると言っても過言ではなかった。

 体力に自信のある龍之介や、魔術に優れた湊でさえも、ダメ出しをされるほどだ。普段から自分にスパルタな彼らだが、今はそれ以上に扱かれていた。


 朱音たちも、頑張ってはいるものの、ややしんどそうだった。

 練習メニューが龍之介たちよりも軽い分、まだ余裕そうだが、確実に息は上がっていた。


「蒼、なかなかやるねー」


「毎日ティアたちにもっと理不尽なトレーニングを強要されてるからなー。正直まだアップの段階だよ」


「……もうそれ人間辞めてない?」


「ティアたちにもっと言ってやってくれ……最近一日に100回は死んでる気がする」


 あの龍之介たちですらこなすのが難しい課題を、話しながらこなす者が約二名。

 それが俺と宗一郎である。

 自慢でもなんでもないけど、毎晩もっとひどい内容のトレーニングをティアたちに組んでもらっているため、正直まだまだ余裕はある。


 体力も魔力も、そして技も、ティアたちはもっと高度なものを要求してくる。


 そんなこともあって、俺は意外となんとかなっていた。

 宗一郎に関してはもう「こういうやつ」っていうので済ませるのが一番賢いと思う。


 本当になんでもそつなくこなすよね。

 龍之介や湊に課されたものを一人でやり切るんだから、俺からすれば宗一郎こそ「人間ですか?」と問いたくなる。

 しかも、本人は汗も流していない。


 俺と同じでまだ準備運動にもすぎないのだろう。


 宗一郎も俺と同じで、アーサーたちに扱かれているようだ。

 ちょっと仲間ができた感じがして嬉しいね。


「あ、あれがA班……」


「あんなの人間じゃないよ……宗一郎くんと蒼くん、身体強化の魔法すら使ってないよ?」


「マジか。ってことは、2人は素の身体能力で腹筋背筋、腕立てを一万回してるのか⁉︎」


「そう。だからおかしいんだよ。多分俺たちとは次元が違う」


「俺たちがA班に行けばあの訓練が……」


「「「「「…………」」」」」


 俺たちの訓練内容を遠くで見ていたB班以降のクラスメイトたちは絶句しているようだった。

 まぁ、明らかに普通ではないのは確かだと思う。

 でもこれくらいできないと、ティアのパンチ一発で存在そのものが消し飛ぶんですよ……


 数秒後には生き返るんですけどね。


 やっぱり原初の神はやることが違うね。


「一条くんと北小路くんには別メニューを与えた方が良さそうやな。君ら見てると、ほんまに人間なんかと疑いたくなってくるわ……」


 まぁ普通に生きていく上では絶対に必要のないことだしね。

 将来軍に行って、魔物討伐をするだとか、異世界に行って世界を救ってくるだとかがない限りは、俺たちの持つ力は発揮するところが無い。


 ただこうして実際に魔法専門学校があって、現役の魔法師が指導しているということは、そういうことなのだ。

 

 俺たちも将来軍で働いたりはしないだろうけど、自分の身は自分で守れるようにはしておきたいので、この力も必要なのだ。

 いつ日本に魔物が出てもおかしく無いからね。

 これはロキが言っていたことだけど、「近頃は魔族も騒がしくなってきている」らしい。


「とりあえず、今日は2人ともそのまま課題をこなしといて。次から2人だけ別の場所でやってもらうわ」


「わかりました」


「宗一郎と2人だけか……」


「なんで嫌そうなだよ。少しくらい喜んでもバチは当たらないはずだけど?」


「どうして男と2人で喜ばなきゃ行けないんだ。どうせなら可愛い女の子を所望する!」


「A班の中でこの課題がこなせてきた子らは一条くんたちの中に加わってもらう予定やから。2人は暫定S班ってことでよろしくな」


 柊木先生の言葉に、俺たちは頷いた。

 隣で朱音たちが不満そうな顔をしているけど、こればかりは慣れの問題でもあるので、頑張って欲しい。


 葛木先生も鬼では無いので、そのうちクリアできるラインを見極めているはずだしね。

 単に、普段どれだけ自分で鍛えているかという問題なのだが、俺たち以外の他の人たちはそれだけでは納得していないようだった。

 さっきまで、なんとしてでもA班に行く!という気迫があったけど、俺たちの訓練内容を見てからはその形を潜めて、コツコツと葛木先生から課された訓練内容をこなし始めている。


 別に悪いことでは無いのだが、せっかくだったらさっきみたいに頑張ってみてもいいと思うが、それを継続できる人は本当に少ないので仕方がない。


 ただ、何人かはさっきと同じように……それ以上に気合を入れて頑張っている人もいる。

 柊木先生も葛木先生もしっかりとその生徒たちのことは見ているので、きっと彼らが次のA班の候補になっていくのだろう。


 俺は漠然と自分に課された課題をこなしながらそんなことを考えていた。






「よーし、今日はこれで終わりやな。みんなお疲れ様」


 いつも以上に長く感じた午後の実技の授業も無事終えることができた。

 途中で終わった俺と宗一郎は2人で戦術ゲームをしていたので、まだまだ元気だが、それ以外の人たちは結構ぐったりとしているみたいだ。

 特に、身体的なトレーニングを言い渡された、龍之介と透はかなりキツそうだった。


「……この後ギルド戦だけど大丈夫?」


「だ、大丈夫。すぐに体力も戻ると思うし」


「俺も。宗一郎たちには負けるけど、すぐに回復するはずだぜ」


「ならよかったよ。朱音たちも大丈夫そう?」


「もちろん。憂さ晴らしの相手にはちょうどいいね」


「確か相手は火属性が得意なクランだったはずよね? 私の炎とどっちが強いかしら?」


「私も久しぶりに思いっきり暴れようかな……」


「みんなほどほどにしてね……」


 まだ全員暴れる元気は残っているようで、特に琴葉と佳奈がやる気のようだ。

 相手は十傑じゃ無いから、ちょっとは手加減したほうが良さそうだけど……その辺は俺と宗一郎で調整すればいいか。


「ってことで、よろしくな相棒」


「……言いたいことは想像つくけど、蒼も頼むよ?」


「俺が朱音たちを止めようとしてみろ。逆に燃やされるって」


「二人とも、今燃やされたい?」


「「ごめんなさい」」


 俺と宗一郎は、一瞬で土下座をして難を逃れる。

 

「まぁいいわ。それより、早く行きましょ?」


「そうだね。とりあえず、俺たちの初陣頑張りますか!」


「「「「「おー!」」」」」


 


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