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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第三章 決闘開始
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閑話 龍之介と静香

ーー龍之介視点ーー


 合コンに行く前、蒼は何故か呆れた様子で俺と湊の方を見ると、そのまま買い物に連れて行かれ、無理やり服を買わされてそのまま送り出された。

 今日は制服で参加でいいかと湊とも話していたんだが、蒼からすればそれはナンセンスだったらしい。


「いいか? 宗一郎は間違いなく私服で参加だ。そこにお前たち二人が制服で参加すれば浮くのは必然だ。後髪の毛もセットしていけよ? 香水も忘れずに……」


 蒼は普段女の子の尻を追いかけてるから忘れがちだけど、俺たちのグループの中では一番身なりに気を遣っているやつだったのを思い出した。

 俺は基本的に、今まで体を鍛えることしか考えてなかったから、そう言ったのは最低限のことしか知らなかったけど、蒼に連れられて買い物をしていくうちに段々と仕上がっていた。


 蒼の話を聞いているだけで眠たくなったけど、確かに相手の女性に変に見られないために最低限の身だしなみは必要なのは確かだ。


「よし、二人とも最低限送り出しても問題ないレベルになったな。いいか? 絶対にがっつくなよ? お前らレベルなら自分から話さなくても向こうから話を振ってくれるはずだ」


「ありがとう。助かったよ」


「あぁ、俺たちだけならここまで準備をしていくことはなかったぜ。サンキューな蒼」


「おう。あとのフォローは宗一郎に頼んでおいたから頑張ってこいよ!」


 蒼はそう言って、リンを連れて帰っていった。

 普段からああしていれば、朱音たちも素直に蒼のことを褒めてやれるんだろうけど、そうは問屋が卸さないのが蒼の良いところであり悪いところなのかもしれないな。


 まぁ俺たちは毎日退屈しない日常を過ごさせてもらってるからいいんだけどな。

 

「蒼って真面目なのかそうじゃないのかわからない時があるよね」


「あいつが真剣になるのはいつも他人のことを考えている時だけだしな。自分の優先度が低いんだよあいつは……」


 昔からずっとそうだ。

 あいつは何かを選択する時、必ず自分のことは後回しなんだよ。


 そのせいで悪評が流れようが、自分が傷つこうが全く関係ないって顔をしている。


「チッ、また蒼に借りができたな」


「本人は貸したなんて思ってないだろうけどね。今に始まったことじゃないし、僕たちも蒼に支えられているだけじゃないし深く考えたら負けじゃない?」


「それもそうだな。とりあえず、今日はいい人と出会えるといいな」


「だね。頑張るか!」


 こうして俺たちは合コンに向けて気合を入れたのだが、結局は空振りに終わった。








「はぁ……まぁ仕方ないっちゃ仕方ないけど、簡単に恋なんて出来ねぇよなぁ……」


 合コンが終わって、俺はなんとなくそのまま寮に帰る気分じゃなかったから、その辺をぶらぶら歩いて帰ることにした。

 宗一郎が呼んでくれた女の子はみんな一年生で、確かに顔は可愛いし家柄的にもなんら問題ないいい子達だったと思う。もし、本気で付き合っても問題ないところを連れてきてくれた宗一郎には感謝しているけど、いまいちこの子だって子はいなかった。


 それは湊も同じだったみたいで、今日は二人とも空振りに終わってしまった。


 まぁ仕方ない。


 確かに今日の子達はみんな可愛かったし、文句の付け所がないくらいにいい子達だった。

 ただ、普段から朱音や琴葉、佳奈に最近では透も一緒に行動していることもあって、ただ可愛いだけでは何も魅力を感じられなくなっていた。


 それに、みんな俺を見ているよりもその先……宗一郎や蒼のことを見ている気がしてなんか気が乗らなかった。


 帰り際、宗一郎が申し訳なさそうに俺たちに謝ってきていたけど、全然気にしてないし、むしろ宗一郎には感謝している。

 あと一応蒼にもな。

 蒼の言った通り、宗一郎は当たり前のように私服で着ていたし、俺たちだけ制服で行く羽目にならなくてよかったと思っている。


 俺が普段着るような服とは違ったけど、蒼がチョイスしてくれた服はこれからも大切にしないとな。


「んーそろそろ帰るか……」


 あまり遅くまで出歩いていると、明日に影響が出てしまう。

 俺たち十傑は特に門限のようなものは設定されていないおかげで、23時を回った今外で歩いていても止められるようなことはない。


 確か、Cクラス以下の生徒がこの時間に出歩いていると即刻退学だったはずだ。


 だから、帰り道は誰にも会うことはないと思っていた。


「ん? 一年生か。もう23時を回っている。今回は見逃してあげるから早く帰りなさい」


 声をかけてきたのは女の人だった。

 身長が170センチはあるであろう高身長で、髪の毛を後ろに束ねてポニーテールのようにしていた。


 昔ながらの大和撫子スタイルに、俺は一瞬ドキッとしたけど、動揺した素振りは見せることなく堂々と返事を返した。


「俺は十傑なんで門限がないんですよ。そういうあなたは……」


「あぁ、なるほど。それなら納得だ。止めてしまってすまなかった」


「いえ。あ、俺の名前は武田龍之介です」


「私は織田静香だ。二年生十傑第二席の名をいただいている。なるほど、君があの武田の……」


 織田といえば、武芸で武田と並ぶ超名門だ。

 俺は昔から織田に負けないようにと常に教えられてきたけど、まさか目の前にいる先輩がその織田だとは思わなかった。


 織田先輩も同じことを考えているのか、場の空気が緊迫している。

 ただ向こうにも戦う意思がないようだったので、その空気もすぐに霧散した。


「あの、織田先輩……」


「静香でいいよ。私も龍之介くんと呼ばせてもらおう」


「なら、静香先輩は何をしてるんですか? 一応もう夜なんすけど」


「風紀委員の仕事でね。深夜徘徊をしている生徒がいないか見回っているんだよ」


「風紀委員?」


「龍之介くんは十傑なのだし、きっと明日にでもわかるよ。それより、君とは一度話をしてみたかった。武田と織田、昔から仲が悪いので有名だが、私個人としてはそこまで武田に敵意を持っていない。むしろ、興味を持っている」


 静香先輩は興味深そうに俺のことを見ている。

 それが、さっきのような打算のある一年生たちとは違って純粋に『俺』個人に目を向けてくれている気がして、少しだけ嬉しかった。


「俺もあんまり興味ありませんよ。正直、武田がどうとか織田がどうとかどうでもいいと思ってます」


 これは俺の本心だ。

 昔からことあるごとに「織田には負けるな」と言われてきたけど、そんなことはどうでもよかった。


 それよりも超えたい相手が身近にいるしな。


「ふっ、君とは馬が合いそうだな。もしよかったら、時間のある時に一度手合わせをお願いできないか? 君自身に興味が湧いてきたところだ」


「いつでもいいですよ。俺も織田の戦い方には個人的に興味はありましたから」


 俺が静香先輩の提案に乗ると、懐から携帯端末を出して、何かを求めるような目でこちらを見てきた。


「ほら、連絡先がわからないと手合わせできないだろう? もしよかったら……私と連絡先を交換して欲しいのだが……」


 静香先輩は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。

 その姿が意外で、そして可愛くて思わず笑ってしまった。


「ははっ、静香先輩って意外と純粋なんすね」


「わ、悪いか。男子と連絡先を交換するなんて慣れてないんだ」


「意外っす。静香先輩なら引く手数多でしょ」


「それは君も同じだろう? 君は元から知り合い以外の女子と連絡先を交換した相手が何人いるんだ?」


「0っす……」

 

「そういうことだ」


 結局合コンの相手の子達とは連絡先を交換せずに解散したため、朱音たちを除くと誰もいない。


 よく考えたら普通のことなんだけど、静香先輩に言われると無性に腹が立つな。


「よし。ありがとう。それじゃあ明日も早いから今日はさっさと帰るだぞ」


「わかってますよ。先輩も気をつけて。おやすみなさい」


「あぁ、おやすみだ」


 俺はそう言って静香先輩と別れると、その後は寄り道をせずに寮を目指した。


 結局合コンはうまくいかなかったけど、少しだけ面白い先輩と会えたから今日はいい日だったのかもしれないな。


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