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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第三章 決闘開始
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第五十話 十傑会議に向けて1

 透が無事十傑第八席となった次の日、俺たちは八人全員で揃ってAクラスへと向かっていく。

 毎年、十傑の中でも何人かは仲がいいみたいな話があるらしいが、俺たちみたいに十傑の過半数が揃って仲がいいなんてことは歴代でも数えるほどしかないようで、ただ通学しているだけなのにめちゃくちゃ目立っている。


 そもそもこの獅子王学園というのは他人との蹴落とし合いが主となっているので、馴れ合うこと自体が珍しいのだが俺たちの場合は元々仲良いメンツが揃っているので寝首をかかれる心配もない。


 まぁ普通の人たちでも八人の集団というのは結構目立つ要因になるし、それが俺たちということでさらに注目度は上がっているのだろう。

 朝から元気な人たちは遠くから俺たちのことを盗撮している。


「朝から元気だねぇ〜」


「何呑気なこと言ってんだよ。ほら、シャキッとする」


「お前は俺のお母さんか」


「宗一郎お母さんって呼んでみ?」


「絶対やだね!」


「二人とも遊んでないで早くいくよ」


「「はーい」」


 湊に注意されて俺と宗一郎は大人しく返事をして後ろをついていく。

 龍之介が「朝から元気な奴らだな……」と呆れているけど、元気なのは俺じゃなくて宗一郎の方だ。


 俺は眠くて仕方がない。


 最近、寝てる間も夢の中でティアたちにしごかれているので、身体的には疲れてないんだろうけど精神的な疲れがすごい。

 きちんと三時間ほどは寝てるけど、それ以外は基本的に鍛錬なので普通にしんどい。


「ふわ……平和だね」


「それも今日までだと思うけどな。これからが本番だろこの学園」


「まぁだろうね。せいぜい退学しないように頑張りますか」


 この一月は上級生からの接触が禁止されていたり、一年生同士でも決闘などは禁止されていた。

 それが、この試験を終えて全て解禁されるはずなので、十傑である俺たちは今まで以上に忙しくなると思う。


 噂によれば、この学園面白い試みをしているようなので、葛木先生から説明を受けるのが楽しみである。


「とりあえずは上級生の十傑と合わない限りは安心だな」


「もしかしたら蒼とかはもう目をつけられてるかもよ?」


「一年生相手して喜ぶような人が十傑にいたらびっくりするけどな。どうせなら二、三年生で競い合ってて欲しいね」


 この時、俺は流石にまだ上級生の十傑に会うことはないだろうと思っていた。

 でも現実は非常である。

 この一時間後に葛木先生から放たれる一言によって、俺たちは渋い顔をせざるを得ないのであった。







「明日の放課後、十傑の君達には十傑会議に出てもらうから、予定を空けといてね」


 朝のホームルームの時間、葛木先生は連絡事項としてそんなことを言っているのだが、最初は言葉の意味を理解できなかった。

 別に会議をしなくてもここに十傑が揃っているのではないかと。

 ただ、葛木先生が言いたいのはそういうことではなかったらしく、しっかりと俺たちにわかるように説明を始めてくれた。


 他の生徒のみんなも、話は気になるようで誰も文句を言うことなくそのまま葛木先生による説明が始まった。


「十傑会議っていうのは、一年生から三年生までの十傑が揃って学園の方針を決める大事な会議なんだ。明日はその顔合わせだね」


「へぇ……じゃあ特に気負わなくても大丈夫そうだね」


「そうでもないんだよね。詳細は後で十傑のみんなに話すんだけど、特に一条くん、武田くん、伊達くん、水無瀬さん、西園寺さん、橘さん、出雲さんは準備が必要だから今日の放課後に訓練場に来てほしい」


「なんで宗一郎だけ省かれてんの?」


「……ここで話すのはできない内容って言えばわかる?」


「なんとなく……」


 俺たち八人に共通しているものといえば厄災級のアウラと契約しているという点である。

 ただ、厄災級というのはその膨大な力のせいで忌避されることも多いし、十傑会議であれば上級生から目をつけられてもおかしくない。


 きっと、葛木先生が言いたいのは、それまでに等級の低いアウラと契約しておいてと言いたいのだろう。


「1級、最低でも2級のアウラと契約してくれると助かるんだよね。十傑会議にはアウラも具現化させないといけないからさ。……できない?」


 葛木先生は気まずそうに俺たちにそう聞いてきた。

 なるほど。宗一郎はすでに1級のアウラと契約しているから問題がないのか。


 もしくは学年主席なので一人くらいは厄災級がいてもいいという判断かも知れない。


「私は多分できますよ。カレンに頼めば1級のドラゴンと契約できると思う」


「私も酒呑童子に頼んでみようかな」


「ん〜私もソロモンの伝を信じるしかないね」


「閻魔の部下に1級のアウラがいるそうなので私も大丈夫です」


 女性陣はみんな問題なくクリアしそうだ。

 男性陣も、龍之介と湊は問題なくアレスやラプラスの部下などと契約して無事明日に備えるだけとなった。


 ただ問題は俺だ。


 一度実技の授業の時にもあったけど、俺の場合はすでにティアたちと契約しているのでそんじょそこらのアウラではそもそも近寄ってすら来ないのだ。

 下級精霊はもちろんのこと第1級のアウラですら、ティアたちを見るとビビり散らかすか、敬い崇めたてて、全く動かないので大ピンチだ。


 しかも俺は十傑第七席。

 俺が厄災級のアウラと契約しているということは言外にそれ以上の席の人はみんな厄災級のアウラと契約してますよと言っているようなものだ。

 これが朱音や龍之介ならギリギリ誤魔化せたかもしれないけど、俺は何がなんでも第1級のアウラと契約する必要がある。


「まずい……非常にまずい」


「確かに一条くんの事情を考慮してなかったね。なるほど、だから実技の授業で精霊たちが怖がっていたのか」


「そうなんですよ。っていうか、なんで明日十傑会議があるのに今日こんなことしてるんですか?」


 そうだ。

 そもそも前々からこの十傑会議があるのがわかっていたのなら、その時点で告知してくれてたらまだやりようはあったはずだ。


 それが前日まで告知されなかったということは、何か事情があるのかな?


「……忘れてた。てへっ」


「やばい初めて先生に殺意湧いたかも」


「ごめんごめん。でも、前の試験で順位が入れ替わる可能性があったから、告知できなかったのは本当だよ」


「それにしたって昨日教えてくれればよかったじゃないですか」


「……それは本当にごめん。忘れてた」


「はぁ……」


 ため息しか出なかったけど流石に許して欲しいね。

 とりあえず泣き言を言っても仕方がないのでなんとかしなければ……


 さて、どうしよう?

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