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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第二章 初めての試験
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第三十話 宗一郎たちの力1

 試験の概要を説明されて、Aクラスのみんなは俄然やる気が出たのか、午前の座学はいつも以上にピリッとした空気の中授業が行われていた。

 ただその分お昼休憩の時はみんなその反動でざわざわしていたが、俺たちは変わらず食堂で昼食を取ることになっている。


 というか今頃はいつもの席で快適に食事にありつけているはずだったのだ。

 それが今朝からやけに邪魔に入ってくる光田くんのせいで台無しだ。


「あの、出雲。俺と連絡先交換してくれないか?」


 確かにお昼に連絡先を聞いてみたらとは言ったけど、本当に実行するとは思わなかったじゃん。

 こういうのって、言うのは簡単だけどやるのは……っていうやつかと思ってたのに、光田くんは自信満々な顔をしながら透の連絡先を聞いている。


 これもある意味才能なのかもしれないけど、こんなみんなが聞いているところですることではない。

 公開告白も同じ手法にはなるけど、普通ならみんなが聞いていることもあって、こう言った提案を拒否するのは難しいし、仮に俺が透側だったらいやでも一度交換してから後々角の立たないようにして距離を取る手段を取る。


 しかし、透は普通ではないみたいだった。


「えーっと……君、誰だっけ?」


「の、野口光田だよ! 一条に邪魔されたけど、あの時も一緒に喋ったでしょ?」


「あー……確かにいたね。光田くん、だっけ?」


「そうそう! それで、俺今日闇の上級精霊と契約できたんだ。これで、俺とも連絡先交換してくれるよね?」


「? 何で光田くんがいいアウラと契約できたら私と連絡先を交換できることになってるの?」


「だ、だって! 出雲って強い男じゃないと靡かないんじゃ……」


「ふふっ、そんなことないよ。でも、ごめんね。私今男の子に興味ないの。あ、これは前に言ったね」


 透は楽しそうに笑っているけど、それを言われている光田くんはすごい顔をしている。

 まぁ、悪意のない本音って無自覚に人を傷つけるからタチが悪いのはわかる。

 多分今と同じ会話を朱音や琴葉がすると煽ってるようにしか聞こえないと思うけど、透は全くそんな嫌な感じを出さずに素で言ってるのだからすごいなーと思う。


 言われている側はたまったもんじゃないと思うけどね。


「じゃあなんで一条とは連絡先交換してるんだよ。男に興味ないんじゃないの?」


「んー。じゃあこう言ったほうがいいかな? 蒼に気があるから今は他の男の子に興味を持てないの。これで納得してくれた?」


「「「「なっ⁉︎」」」」


 透の言葉に光田くんだけじゃなく、俺や宗一郎、朱音たちも一緒になって驚いた。

 

「そういうことだから、ごめんね? 蒼、行こっ!」


「行こってお前……ちょっ!」


 俺の言葉も聞かずに、手を引っ張ってAクラスから食堂へと向かい始めた。

 それに俺や宗一郎たちもついて行っているが、みんな透の言葉待ちである。


「ごめんね蒼。前のこともあるし、これが一番かなって」


「そのせいで透じゃなくて俺にヘイトが向いてるんですけどねぇ……まぁいいけど」


「それにしても透、流石にあれはないんじゃない?」


「いやお前たちがいうなよ。全員俺に一回はなすりつけたことあるだろ」


 なんだか俺と一緒になって透を責めている人が3人ほどいますけど、その3人全員が一度は俺にしてきたことである。

 なんで毎回毎回俺なんでしょうかね。


 隣に屈強な体をしてる龍之介がいるんだから、そっちになすりつければいいのに……


「なんだ、朱音たちも一緒なんだ」


「まぁ一番上手くやり過ごしてくれそうだし」


「嫌われ役はこいつが一番得意だし」


「た、頼りになるよ? 多分……」


 三人ともひどい。

 誰が好きで男どもの嫉妬を買わなきゃいかないだ。それより可愛い女の子の愛情を所望する!


 とまぁ馬鹿なことを考えていたわけだが、結局俺は実技の時間も光田くんに睨まれることになってしまったのだった。

 ちなみに実技はいつも通り柊木先生に扱かれるのであった。

 あの人俺と宗一郎には容赦ないんだよな……


「さて、じゃあ始めますか」


「おー!」


 実技の授業が終わり、朝話していたみんなで自主練をするために、この五日間俺と透が使っていた訓練場へとみんなでやってきた。

 もともと二人で使うには広すぎるところだったので、宗一郎たちがきても何ら問題ない。

 それに、透も俺だけじゃなく宗一郎たちの力を見ることによって何かインスピレーションのようなものがあるかも知れないので、宗一郎たちの自主練参加は非常にありがたいものであった。


 訓練場に着くと早速朱音たちは元気にアップを始めたので俺もそれにあやかることにした。


 朱音たちのアップはいつも俺がやっているような丁寧なアップではないので、隣で参加したそうにしていた透にはいつも通りのアップをさせた。

 宗一郎たちもそうだが、俺たち仲間のアップ方法は「全力で体を動かせば良くね?」を元に考えられているため普通の人からしたらそれはもうアップでもなんでもないものなのである。


 せっかく透のコンディションがいい今、俺たちのアップに付き合わせて体を壊されてもたまらないので大人しくゆっくりとアップをしてもらうことにした。


「よし、じゃあ早速アウラ呼んで戦うか」


「ちょっと待って、私がいるのに見せても大丈夫なの?」


「蒼から聞いてるよ。もうすぐ俺たちの仲間になるみたいだし、俺たちも五日間透を見てきて信用に値するなと思ったから問題ないよ」


「そーいうこと。私のアウラ、ちょっとすごいから楽しみにしててね」


「俺のアウラも派手だぜ!」


「僕も結構すごいよ」


「私も自信あるよ。佳奈もすごいけど」


「そ、そんなことないよ。みんなすごいよ!」


 みんな自信満々と言ったような顔をしているが、これはハッタリでもなんでもなく事実である。

 後で練習風景を見ることができると思うが、宗一郎たちは一人一人唯一無二のアウラと契約している。


 それぞれベクトルが違うが、もちろん強さも一級品である。


「じゃあ早速俺から行くぜ!」


 どうやらトップバッターは龍之介のようだ。

 俺たちは知ってるけど、透は龍之介がどんなアウラと契約しているのか知らないのでワクワクした様子で龍之介のことを見ていた。


 そんな透のことを見てちょっと恥ずかしがっている龍之介ではあったが、そのまま龍之介はアウラを召喚するのであった。

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