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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第二章 初めての試験
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第二十一話 家族と仲間の違い

「おはよ〜蒼なんか疲れてんね」


「おはよー。まぁ、ちょっと色々な」


 俺が下に降りると朱音がジュースを飲みながら待っていた。

 まだ朱音以外は待ち合わせ場所に来ていないみたいだ。普通女の子は準備に時間がかかりそうなものだが、朱音に限っては全く問題ないようだ。


 最近は男も時間を使って準備をしないといけないので、俺もちょっとは身嗜みに気を遣っているけど、言ってもワックスつけたりピアス付けたりするだけだからそんなに時間もかからない。

 逆に宗一郎とか琴葉とかはガッツリ準備する派の人なので大体一番最後になったりする。


「あんたは単純な寝坊が多いけどね」


「……面目ない。っていうか、朱音も若干疲れてない?」


「あー……これ見てくれたらわかる」


 朱音はそう言って自分の携帯端末を俺に渡してくれた。

 そこには大体100件以上のメッセージが送られてきており、どれをタップしても朱音への熱い?メッセージが綴られていた。


 しかもすごいのが既読をつけた瞬間にメッセージを返してもいないのに追加でメッセージが飛んでくるのだ。

 それが全て男からのものだと知るとちょっと鳥肌が立って仕方がない。


「大変ですね……」


「昨日琴葉と佳奈にも聞いてみたけど、みんな同じ感じだって。別に好意を持ってくれるのは嬉しいんだけど、会ってもいない人に愛を囁かれてもね……」


「それだけ朱音が魅力的だってことだよ」


「ってか、蒼もすごいんじゃないの? 性格はともかくとして顔はいいじゃん」


「ひどい言いようだな……確かに俺も何件かはメッセージが来てたけど、全部返してるよ?」


 昨日みんなが寝た後に獅子王アプリを開いたらメッセージが数十件来てたから一応全員にそれとなく角が立たないように返事をしておいた。

 俺の場合は友達を作るためにも欠かせないことだしな。


 おかげで二時間くらい使っちゃったけど、あのまま起きてても理性との戦いを強いられるだけだったからちょうどいい時間潰しになった。


「うわっ……すごいね」


「まぁ俺の場合朱音みたいに気持ち悪……こんな長文は送られてきてなかったしな。それと、半分が男だったのもある」


 流石に朱音に本気で告白している人もいると思うので直接的な表現は避ける。

 半分言いそうになってたけど、セーフってことで。


 実際、俺の場合半分くらいは「お友達になりましょう」みたいなものだったからそこまでストレスなく返事ができた。


「それでも、半分はこんな感じのやつとか攻撃的なものだったんでしょ? あんまり真摯に付き合うとあんたが傷つくよ?」


「心配してくれてありがと。まぁ、うまく付き合っていくよ。もししんどかったら返事を返さなければいいだけだしね」


「全く、それにしても蒼にこんな健気な子たちもったいないよ。間違っても手を出しちゃダメだかんね?」


「わかってるよ」


 朱音は俺の携帯端末を取り上げるとメッセージを見ていった。

 他の人ならあまり見られたくないプライベートだが、朱音や他の仲間たちになら別に見られてもそこまで嫌じゃない。


 それにさっき無理やりにはなるが朱音のも見ちゃったしね。


 別にそこまでやましいこともないので見られたところで問題ない。

 朱音は俺のメッセージを見ながら「いいね〜」とか「この子かわいいー!」とか言って一人で盛り上がっていた。


 この反応だけでどれだけ昨日朱音が送られてくるメッセージに苦労したのかわかってしまい思わず同情してしまう。

 本人は何気ない感じで話していたけど、やっぱりちょっとは心にダメージがあるんだと思う。


 まぁ、男の狂気は恐ろしいからね。

 今も朱音のを見てるけど、同じ男である俺でさえ引いてしまうようなものもある。


「うん。やっぱりみんな蒼にはもったいない子たちばっかだね。蒼の毒牙にかかる前に私が忠告しに行かなくちゃ」


「おいやめろ。俺の未来の彼女になるかもしれないんだぞ」


「無理無理。あんたと付き合って行く途中で挫折する子ばっかりだって。いままでだってそうだったでしょ?」


「まぁ、そうだけど……」


 朱音さまの正論にぐうの音も出ません。

 いやでもここ獅子王学園だよ? もしかしたらワンチャンあるかもしれないじゃん。


「まぁ、俺よりもお前は絶望的だな」


「うぅ〜十傑とかいう制度が悪いよ。これのせいで変に目立っちゃうんだよね」


「それがなくてもあんまり変わらないと思うけどなぁ。この人、朱音が前助けた人じゃない?」


「うん。一番気持ちを伝えてくれてるんだけど、ちょっと荷が重いというか……上手くかわしてるつもりなんだけどね」


 朱音は少し困った顔をしながらそう言った。


 俺たちは昔から無理やり好意を押し付けられるようなことも多かったけど、今回は特に堪えているようだった。

 まぁその人の気持ちもわかるけどね。


 自分のピンチに駆け寄ってくれる女の子は無条件で異性として好きになってしまうに違いない。

 それが十傑第二席でルックスも整ってて可愛い女の子なら尚更だろう。


 だからと言って朱音に人を助けるなとも言えないのが難しいところなんだけどね。


「ま、何かあったら相談に乗るよ」


「色恋のイロハも知らないあんたに頼ってもねぇ」


「おいこら。このちょーぜつイケメンの蒼さまに向かって何を言うか」


「童貞……」


「おまっ! 言ってはいけないライン越えたな! 胸揉むぞこら!」


「ふんっ、やれるもんならやってみなさい」


 かっちーん。


 これには僕ちんもキレちゃいましたよ。朱音は絶対に無理だと言いたげな表情でこちらを挑発してるけど、俺だってやる時はやるんだぞ。

 今朝はちょっとチキったけど、俺だってその気になれば……


 ぽふん


 俺が朱音の胸に手を向け、一歩踏み出して揉むふりをしようとしたらなんとアンラッキー。

 俺の足元に何故かバナナの皮が置かれてて滑って本当に朱音の胸を揉んでしまった。


 いやそんな偶然ある?


「え、えーっと……や、やったぞー!」


「このバッカ! 本当に触る奴がいるかー!」


「理不尽だっ!」


 俺は朱音に思いっきり吹っ飛ばされた。


 飛ばされている最中、視線を寮に向けるとそこでは悪い笑みを浮かべている宗一郎の姿が見えた。


 うん、あいつだけは絶対に一回ぶっ飛ばす。







「いたた……」


「大丈夫? 全く世の中ひどい人間もいるもんだね」


「お前一生恨むからな……」


 俺が100メートル以上のお空の旅をしている最中に宗一郎たちも集合場所に降りてきたみたいだった。


 よく俺生きてるなーと自分ながらに褒めたくなるけど、それ以上にニコニコ笑ってる宗一郎の顔面に一発蹴りを入れてやりたいね。

 

「はて、俺は何か恨まれるようなことしたっけな」


「お前が俺の足元にバナナの皮を転移させたことをいちいち証明しなきゃダメか?」


「たとえそれが事実でも蒼なら気づけたでしょ? わかってて朱音の胸を揉みにいった蒼に問題が……」


「宗一郎、それほんと?」


 宗一郎が依然としてニヤニヤしながら俺をからかってくるが、話を後ろで聞いていた朱音がすごい形相で宗一郎の方に詰め寄っていった。


 よし、作戦成功。


「あー……まぁ、よかったでしょ?」


「あんたも一回宇宙の景色見に行く?」


「大変申し訳ございませんでした」


 今回は珍しく総一郎も成敗されていた。


 謝っただけで許されたのはちょっと解せないけどな。俺なら多分もう一発くらい殴られてる。

 結局、その後宗一郎をからかい返した俺が朱音から怒られるという珍事はあったが、今日も楽しく学園生活を送ることができてよかった。

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[一言] とても面白かったです! これからも頑張って下さい!
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