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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第二章 初めての試験
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第二十話 プロローグ

ーミカエル視点ー


 おはようございます。

 私の名前はミカエル。蒼さまに御仕えしているしがないメイド兼大天使でございます。


 今は早朝、まだ蒼さまもティア様たちも誰も起きていません。昨日から無事蒼さまと一緒に暮らすことができたので、今日から私も気合を入れてメイド業をこなしていきたいと思います。

 私はまだスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている蒼さまの頬に軽くキスをしてから皆さんの朝食の準備を始めます。


 普段であれば時を止めて作業をするのですが、まだ皆さん深い眠りについているためその必要もありません。


 ということで、私は朝日を浴びながら優雅に朝の準備を始めていきます。


 まだ蒼さまも眠っているので起こさないように細心の注意を払って掃除などをこなしていきますが、私にとっては造作もないことです。

 もしここで蒼さまを起こしてしまったのであれば……そうですね。罰ゲームとして今日一日語尾にニャンをつけましょうか。


 まぁ、絶対にあり得ないことなんですけどね。


「おはよう。ミカエル」


「お、おはようございますにゃん」


 前言撤回。

 そういえば、蒼さまだけは何故か私がいくら周囲に気を遣って音を殺してメイド業をしてもバレてしまいましたね。


 それだけ蒼さまが私のことを大切にしてくれているという証拠なのかもしれませんが……や、やっちゃったにゃん。


「にゃん?」


「い、いえ。なんでもないにゃん。それより、起こしてしまいましたか?」


「ははっ、可愛いなそれ。いや、俺も目が覚めたからさ。今日は一緒にミカエルと朝の準備をしよーかなーって」


 蒼さまはなんでもないようにそう言ってくださいましたが、私にとってはすごく嬉しい一言です。


 なんと言っても、こうして蒼さまを独り占めできる貴重な時間ですから。

 いつもであれば、ティア様たちも一緒なので、2人きりの時間というのはそう簡単に訪れません。


 これはティア様たちも同様なので、私は少し舞い上がってしまいます。


「ミカエル、嬉しそうだね。ちょっと俺顔洗ってくるから、待っててー」


「わ、わかりました……」


 さすが蒼さま。


 私のことなんて全てお見通しのようです。ほんの5年前まではまだ小さくて可愛い男の子だったのに、もう今は立派な男性です。

 少なくとも、天界にいる節操のない神や天使とは大違いで、蒼さまいい男です。


 蒼さまに出会うまでは私もいつかその男の誰かと結ばれなければいけないのかと、少し絶望していましたが今はいつになったら蒼さまと結ばれることができるのか楽しみで仕方ありません。

 今度ティア様達と一緒に恋愛神に問い詰めてみるのも悪くないかもしれないですね。


 彼女であれば私たちに足りないものを教えてくれるかもしれません。


 そんなことを考えている間に蒼さまは洗顔と着替えを済ませてキッチンへと戻ってきました。

 もちろん今日も学校なので制服なのは当たり前なのですが、こうして間近で蒼さまの制服を見るのは初めてなので不覚にもキュンキュンしてしまいました。


 これを当たり前のように見ている朱音様たちには嫉妬心しかありませんが、それは幼馴染の特権として素直に悔しがってあげましょう。

 その代わり、蒼さまの寝顔とか恥ずかしいところとかは私たちのものです。


「ミカエル、俺は何を手伝えばいい?」


「そうですね。じゃあそこにある野菜を切ってもらえますか?」


「おっけー」


 私が指示すると、蒼さまは眠そうにあくびをしながらも手伝ってくれます。

 ここで「まだ寝てていい」と言っても蒼さまはいうことを聞いてくれないのは長年の経験からもわかっているため、諦めました。


 この人は困ったご主人様です。


 雑用なんて私に任せておけばいいのに、蒼さまはそれを許してくれません。


 しかも、今では私と遜色ないくらいに料理などはこなせています。

 ここまで完璧な男子高校生などそう簡単に見つかりませんよ。しかもルックスも天界にいる男たち以上です。


 そんなの他の女にモテないはずがありませんよね。


 今も手際よく野菜を千切りしています。普通男子高校生がそんなに綺麗にものを切れないと思うんですけど、やっぱり蒼さまは一味違いますね。


 ……これ以上心の中で語ると蒼さまへの愛が止まらなそうなので少し控えないといけないですね。


 昔の私が今の私を見ても鼻で笑って信じないでしょう。ロキ様やティア様たちも昨日おっしゃってましたが、私も随分と丸くなったものです。

 いや、『私たち』と言ったほうが良いですね。


 あのままだと私もティア様たちも感情のない機械となって破壊の限りを尽くしていたかもしれません。


「ミカエル?」


「……ごめんなさい。少しぼーっとしてたみたいです」


「しんどいなら休んでてもいいよ? まだ俺もみんなとの集合時間まで時間あるし」


「いえ、ちょっと昔のことを思い返していただけです。蒼さまはティア様たちを起こしてきてもらえますか?」


「うん。わかった」


「変なことしちゃダメですよ?」


「わ、わかってるよ!」


 あれは絶対に何かしようとしてましたね。

 蒼さまの顔を見れば大体何を考えているかわかりますが……あれは隙があったらえっちなことをしようとしてましたね。


 蒼さまは自分から仕掛けておきながら、私たちがそれを受け入れると過度に狼狽えるんですよね。多分、あと1分もしないうちに蒼さまの悲鳴が聞こえてくるはず……


「うおぉぉぉ⁉︎ ティア! 起きてたの⁉︎」


「もっちろん! さぁ蒼! 思う存分触って良いのよ!」


「女の子なんだから恥じらいを持ちなさい! こら! ロキも服を脱がない!」


「ふむ。お前の股間は喜んでおるみたいだが?」


「見ないでくだしゃい……」


「蒼、僕たちを朱音ちゃんたちと同じ感じで接してるとそのうち本当に襲っちゃうよ?」


「あんたもバカね……」


「ちょっとした出来心だったんだもん。もっと怒ってくれるのかと……」


「あんたは私たちに怒られたいの? ……もしかして、マゾ?」


「決してそんなことはありませんから引かないでぇ! ほら、ミカエルが美味しい朝ごはんを作ってくれてるからみんな起きて!」


 蒼さまは4人に耐えきれずにそう叫んでこちらに戻ってきました。

 でも残念。

 彼女たちの裸を見たのに私のを見てないなんて不公平ですよね。


 なので、ちょっとしたスパイスを……


「ミカエル聞いてよティアたちが……」


「ふふっ、どうですかにゃん?」


「すっごく似合ってるけど、本当にもう俺の色々が爆発しそうだからさっさと元に戻して!」


 私がしたのは裸エプロンと言われているもので、もう太古の文化となってしまいましたが破壊力は抜群です。

 自分で言うのもなんですが、私も女性として恥ずかしくない体をしているので蒼さまも喜んでくれています。


 ただこれ以上続けてしまうと、蒼さまが本当に色々と大変なことになってしまいそうだったので、ぱぱっと着替えて朝食の準備を始めましょうか。

 

 ふふっ。今日も楽しい一日が始まりそうです。







 ねぇ、昔の私。

 今の私はすっごい幸せですよ。


 いつか……いつかその時が来たら蒼さまに本当の私を見てもらいましょう。


 もし蒼さまが受け止めてくれたその時は……身も心も全てを捧げようと思います。

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