第十九話 蒼の家族2
ーティア視点ー
「寝ちゃったね」
「色々あって疲れてたんだと思うよ。むぅ〜僕も膝枕したいんだけど」
「だーめ。今は私の番よ」
蒼が寝ちゃって私たちは各々蒼の部屋を探索し始めたけど、私はこのまま蒼の寝顔を楽しんじゃう。
前までは蒼の家だったから周りの目も気にしなくちゃいけなかったけど、ここは私たち以外は誰もいないからストレスが少なくて私たち的にも嬉しい場所かもしれないわね。
このフロア一帯は私が強力な結界を張っているから、万が一にも他の人に邪魔をされる心配もない。
蒼と元々のセキュリティーだけじゃ不安だし、ゆっくりと寝かせてあげたいからね。
「それにしても、5人で会うのは久しぶりだな」
「そうね。私はリオンとはいつも一緒だったけど、あなたたちとは久しぶりね」
私はリオンとは毎日同じ場所で生活してるから珍しさはないけど、他の3人は結構久しぶりだった気がするわ。
昔はこうして5人全員をこの世界に召喚するのは色々とリスクがあったから蒼も渋っていたものね。
「魔界は血気盛んだからな。落ち着いて挨拶などしてる時間がなかったのだ」
「幻界は平和だったよ〜。僕がいなくても全然大丈夫!」
ロキとアーニャはそれぞれ対照的だけど、天界もどちらかというと忙しかったからこうしてゆっくり話せるのは素直に嬉しい。
「というか、そこの3人が凄すぎるのよ。私も初めて会った時は流石に驚いたわよ?」
「まぁ、ティア様もロキ様もアーニャ様もそれぞれの世界の最高権力者ですからね。なんの因果かわかりませんが、こうして3人がともに会話をしているというだけでも奇跡みたいなものです」
「ミカエルも大概だと思うけどね」
「それを言うならリオン様もですよ。この中だと私が一番弱いですから」
「比べる尺度がおかしいのよ。まずあの3人はそもそも理から外れたerrorだしね」
「も〜ひどいよね! どうせなら僕たちにも順位をつけてくれたらよかったのに」
アーニャは残念そうにしているけど、私たちにも等級がついても多分厄災級の枠には収まれないと思うから結局無駄なのよね。
さっきミカエルがこの中だと一番弱いって言ってたけど、それでも厄災級第5位だし、リオンは厄災級第一位なのよね。
2人とも通常時でそれだから、戦うってなると多分私たちと同じUnknownとして処理されるんじゃないかしら。
そう、私たちは全員が全員常識という理から外れた存在であって、力が強いとかそう言った次元ではないの。
そんな私たち5人が全員同じ人間に寵愛を向けているから、蒼まですごい注目を受けてるけど、おかげさまで三界で戦争が起きることも無くなったから蒼にはすごい感謝してる。
前までは私もロキもアーニャも他の世界や自分以外の存在に興味すらなかったけど、一人の男の子に『愛』を教えてもらって大きく変わったのよね。
今は3人ともできるだけ戦争をしないで済むように努力してるの。
だって、戦争なんてくだらないことが始まったら蒼と一緒にいる時間が減っちゃうもの。
今は蒼がすごいスピードでいい男の子に成長している時期なの。そんな大切な時に他のくだらないことで時間を割かれたくない。
もし邪魔してくる奴がいたら私が直々に消滅させてあげるわ。
「あ、そうだ。どうせならみんなでここに住まない? 私が戻ると下の子たちがずっと成長しないのよね」
「それはいい。妾もそろそろ蒼の住居で生活しようとしていたのでな。ちょうどいい機会だ」
「僕も意義なし! 幻界は平和だから僕がいなくても平気だしねー!」
「なら私もここに残りましょう」
「4人が一気にいなくなるって知ったらすごい混乱しそうだけど……楽しそうだからいっか」
私の提案にみんな賛成してくれてよかった。
確かにリオンの言う通り、最初は混乱しそうだけど別に私たちって直接何かをすることはなかったから実際いなくても変わらないはずなのよね。
もともと蒼とこの4人以外にはそんなに興味ないし、それよりも早く準備しなくちゃ。
私は蒼を膝枕してるから、他の4人に用意をしてもらう。
私たちが生活できるように、蒼の部屋にもう一つ異空間を作って誰かが来客した時にはそこに避難できるようにしておけば、万が一にもバレることがないはず。
寮自体のセキュリティーもこっちでちょっとだけいじらせてもらって、常に結界を張ってなくても私たちの気配が外に漏れないようにしておく。
これで万全ね。
あとは起きてから蒼に許可を取るだけだけど、流石に嫌とは言われないでしょう。
もし言われたら多分泣く自信があるわ。
ほんと、どうしてここまで入れ込んじゃったのかしらね。
100年前の私が今の私を見ても多分信じられないと思う。
それだけここ10年のうちに大きな変化が私たちの中であったのだ。
昔はみんな退屈そうだったけど、今は笑顔で楽しそうに笑ってるし、私たちみたいな人外でもちゃんと感情があって、今は本当に幸せと感じているの。
ロキなんて昔はただ壊すだけだったしね。
「ん? どうかしたか?」
「いいえ。昔は壊すだけだったあなたが積極的に物を作っている姿を見てみんな変わったなーって思っただけよ」
「あー……あの時は荒れていたのだ。妾も暇で仕方なかった。ティアには迷惑かけたの」
「僕にもだけどね!」
「私たち、蒼がいなかったら本当に仲が悪いまま殺し合ってたかもね」
「そうだな。蒼にはそう言った面でも感謝せねばな」
「そうだ! 蒼が起きたらみんな裸になってたドッキリしようよ! 僕、そろそろ蒼と合体してもいいと思うんだ!」
「魅力的ですが、蒼様が困るだけですよ。こう言うのはタイミングが重要なのです」
「なんでみんな乗り気なのよ。蒼のお姉ちゃんでいようって言ってたの誰だっけ?」
「まぁまぁ、寝たふりしてる蒼がいつまでも起きれないからこの話は一旦お預けにしましょう。ね?」
私はそう言って蒼の頭をなでなでしてあげる。
さっきから私の太ももの感触を楽しんでたみたいだけど、そろそろ起きないと本当にアーニャが脱ぎそうなのよね。
別に私も蒼としていいと思ってるけど、それは今じゃない。
もっともっと蒼がかっこよくなった時に、私の最初で最後の初めてをプレゼントするの。
「バレてたか……あわよくば皆の裸をっ!」
「蒼が望むのであれば本当に脱ぐが?」
「……ご飯作ってくるね」
蒼は気まずそうにキッチンに向かって、料理を始めた。
私たちは基本的に食事を必要としないのだけど、せっかく蒼が作ってくれるんだし、久しぶりに食事をするのも悪くないわね。
蒼が作ってくれた料理はとっても美味しくて、みんな嬉しそうだった。
そのあと、私たちが蒼と一緒に住むことを許してくれたから全員でお風呂に入ってベッドで気持ちよく眠りにつけた。
久しぶりの睡眠だけど、蒼が隣にいるから気持ちよく寝れそう。
みんな、おやすみなさい。




