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道化な僕とギャルな君  作者: 月うさぎ
第一章 ようこそ獅子王学園へ
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第十二話 豪華なランチ

「くぁ〜。疲れた」


「あんた後半寝てたでしょ」


 午前の講義が全て終わり、俺たちは食堂へと向かうことになった。

 授業はまだ基礎的なことしかやらなかったので、寝ていても特に問題はなかった。


 いや問題がないわけではないんだけどね。


 ただ既に知っている範囲で今更真面目に聞かなくてもいいかなーって思ったら急に眠たくなってしまったのだ。

 うん。眠いなら仕方ないね。


「幸いあんたは一番後ろの席だったからよかったけど、他の人に見られてたら殺されてたわよ?」


「蒼の席いいよな。寝てても気づかれないし」


「龍之介も真面目に授業は受けときなさいよ。蒼と違ってあんたは本当に馬鹿なんだから」


「俺はダメなのっ⁉︎」


「珍しく蒼が許されて龍之介が許されないパターンだ」


 ふんっ、いつも俺だけが怒られると思ったら大間違いである。

 俺は龍之介と違って馬鹿ではないから、まだ余裕はある。


 龍之介は放っておくとテストが大変なことになるから、きちんと授業を受けないとまずい。中学の時は琴葉と朱音がすっごいイライラしながら勉強を教えていた記憶がある。

 脳筋は本当に困っちゃうね。


「私からすれば変態の方がタチ悪いけどね。龍之介はその辺真面目だから、見てても可愛いのよ」


「蒼みたいに途中で屁理屈言ったりしないからね〜」


「へっ、俺のがマシだったな!」


「2人とも、どんぐりの背くらべって言葉知ってるかな?」


「「佳奈が辛辣だっ!」」


 と、いつもと同じようなおふざけをしながら食堂に到着したわけだが、既に席がどこも埋まっていて少し困ったことになってしまった。

 俺たちもそこまで急いできたわけではないので、多少混んでいるのは想定済みだったけど、ここまで混んでいるとは思わなかった。


 この学園の食堂はバリエーションが豊富で安いものなら100円から高いものなら1万円以上するものまであるみたいで、ちょっと気になってたのだがそれは俺たちだけじゃなくみんなそうだったらしい。

 味が値段に比例するみたいな噂を聞いたことがあるので、ちょっと楽しみにしていたけど、これでは午後の実技の時間に間に合わなそうなので残念だけど引き返したほうが良さそうだった。


「ねぇ、あそこ。何か書いてない?」


「えーっと……すごいね。俺たち専用の席があるんだけど」


 一番日当たりがいい席が空席のままだったので見てみると、机の上には十傑専用と書かれたプレートが置かれており、ここでも優遇されるんだなーと今回ばかりは少し申し訳なくなってしまった。

 今も席が全て埋まっているせいで諦めて引き返している生徒もいる中、俺たちだけ順番関係なく席を確保できてしまうのはなんとなく気まずかった。


「また十傑特典か。ありがたいけど申し訳ないよな」


「まぁ明日になったら少なくなると思うし、今日くらいは利用してみてもいいんじゃない?」


「俺たちが座らないとずっと空席のままだし、せっかくだし甘えるか」


 この食堂は当然のことだけど一年生しか利用していないため、先輩に気を使うと言う必要がないためせっかくなのでありがたく使わせてもらうことにした。

 俺以外の6人は当然のことながら最高級のランチセットを注文していたので、俺はあえて逆張りで100円の素うどんを頼むことにした。


 やっぱり冒険も必要だよね。


「うぅ〜普通のうどんだしこれじゃ足りない……」


 うん。シンプルに後悔しました。

 味は何の変哲もないうどんだし、しかも量があまり多くないから食べ盛りの男子高校生には全く足りない一品だった。

 まぁ100円だからケチつけられないんだけどさ……


「やっぱりやめといた方がよかったじゃん。ほら、口開けて。私こんなに食べられないから少しあげるわ」


 俺が涙を流しながら麺を啜ってると、隣で琴葉が肉を俺の口に放り込んでくれた。

 めっちゃ美味しいんだけどなにこれ……


 よくうどんと一緒にこんな美味しい食事まで用意できるなーっと食堂のシステムに驚いたけど、今はそんなことより何となく餌付けされてる気分になりながら琴葉からご飯をもらっていく。

 一回一回琴葉がお箸でつかんで俺に食べさせてくるため、絵面がひどいことになってるはずだ。


 小鳥の餌付けみたい……


 一通り琴葉から分けてもらったけど、まだ食べれるな……


「俺のはやらねぇからな」


「いらないし……」


「そんなに悲しそうな顔しないでよ。ほら、私のあげるから」


「私も分けてあげる」


「2人ともありがとう!」


 朱音と佳奈も少し分けてくれるみたいなんだけど、なんでみんなお箸で食べさせてくるんだろうか。


 いやまぁ美味しいからいいんだけどね。


「これちょっと楽しいね」


「琴葉の気持ちがちょっとわかるかも」


 俺がなにも言わずに黙々と食べ続けていると、朱音と佳奈が楽しそうにどんどん食材を俺の口に運んでくる。

 なんだかヒモの完成形みたいになってるけど、俺も楽しいし何より美味しいから別にいいや。


 周りからクッソ睨まれてるけど別に構わないね。


 お前たちも早くAクラスになってこの贅沢を味わってみればいい。


 基本的にAクラスの生徒はみんな財力に余裕があるから最高級のランチを注文しているみたいだしね。

 逆に俺と同じ100円の素うどんを食べている生徒は……残念ながらそう言うことなんだろう。

 俺も素うどん食べたからわかるけどこの物足りなさは逆に悲しくなるよね。


 味自体は不味くはないんだけど、男子高校生からしたら量が足りないんだよなぁ。


 多分500円から1000円くらいのメニューからそこそこのボリュームがあるんだと思うけど、毎日継続的に500円ずつ消費するのは結構痛手だしな。

 


「蒼は次からきちんと頼みなよ」


「うん。ここまで差を見せられたらもう100円の素うどんは頼めない」


「それでよし! はい、これあげる」


「完全に餌付けされてるじゃん」


 宗一郎の呆れた呟きにみんなが笑って、結局俺はその後も満腹になるまで餌付けをされ続けるのであった。

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