クレゾール
—ドレッシングの日っていつでしょうか。
幼い瞳で訊ねる君に、鼻で笑って返す。すると、頬に膨らませそっぽを向いた。全身で不機嫌を表現している君は多分、ハリウッドスターよりも名役者だ。
機嫌を取ろうと、頭を抱え、唸り、眉間に皺を寄せる。
—10月4日?
君はこちらに顔を向けて、大きな口を開けて笑っている。
—違うよ、8月24日。
ベッドに笑いながら寝そべる君に、今度は僕が口を尖らせる。君は白い袖で目を拭きながら、姿勢を戻した。
—じゃ、今度はドレッシングの日に来てよ。
楽しそうにペンを持ち、カレンダーの空白に走らせる。その後ろ姿が、目に映る全てで一番愛おしい。身体に収まらなくなった愛が温もりを求め、きつく抱きしめる。
少しの文句を口にして、君は僕の腕に手を添え、雫を落とした。
カーテンを開ける音が、2人の間を引き裂く。少し気恥ずかしくなった僕は、さよならもろくに言わずに部屋を出た。
ドレッシングの日がやってきた。
僕の机の上にあるのは、余白の埋まったカレンダー。