噴水広場の少女
しばらく呆然とたちつくしていたが、とりあえず召喚した本人を探すことにしようと思った。
「召喚しておいて、そのままってわけでも無いだろうし、言語もさっきの獣人に通じたんだ、観光でもしよう」
街中をぶらぶらと歩く。格好が珍しいのだろうかジロジロと見られる。
確かに上下ジャージ姿でアジア系なんてこっちじゃ珍しいのだろう。
中世ヨーロッパのような街並みで結局召喚したらしい人物も見当たらず石畳を辿って歩いていくと開けた場所が現れる。
噴水の広場だ。
「とりあえず、ここで初期装備でも確認するか」
ポケットから財布を取り出す。
「保険証、キャッシュカード、さっき買った同人誌と中古ゲーム...って全部使い物にはならないか」
その後肩を落とし右ポケットを探ると角ばった何か入っている
「おっ!」
スマホだ
「まぁ圏外でも色々と使い道は...圏外じゃない?」
スマホの電波はしっかりと立っていた。
自分にとってはいきなりこんな世界に連れてこられて露頭に迷っていたが、少しの光に希望を見出すことができた。
なくなって大切だと気づくことはあるが、あることによって大切だと気づくことなんてあるのか、と
呑気なことを考えながらスマホをいじっていてスマホの仕様について色々と分かった。
最新の情報はどうやら見えないらしい。
また、SNSや他人との連絡は一切できない。
インターネットのサイトや検索エンジンは使えるみたいだ。
「とにかく情報集め無いとな...自分の能力もわからないし、金が無きゃ生きていけないよな、っとその前に」
空に手をかざした。
「はぁぁぁっ!!」
渾身の力で魔力を絞り出す
様にイメージする
「何してんの?キミ」
声をかけられる。
女の子の声だ
「何か魔法が使えればと思ったんだよ」
そうしてその声の主に目を落とすと
少し桃色のショートカットの女の子がいた。
他の人と比べて正装のような格好をしている。
綺麗というより可愛げがあるという表現が合う様な子だった。