第2話3
——大豆生田が探偵事務所を訪れてから三日。場面は雨上がりの昼下がり、浮気調査の張込みのシーンへ返ってきた。
「稲森さん!出てきた!」
「わかってる。やった!男と一緒だ!」
稲森探偵事務所のターゲット、大豆生田陽子は、見た目には三十代程度と思われる若い男と腕をくんでマンションの一室から出てきた。陽子と男は未だ逢引きの余韻に浸っているのか人目も憚ることなく通路でキスをしている。
カシャカシャカシャカシャカシャ————
稲森は持ってきた一眼レフカメラを連写モードにして写真を撮っている。これでもかと言うほど撮りまくっている。真美は、もう十分だろ。どんだけ撮るんだよと若干呆れていた。それにしても————
「何で好きあって結婚したはずなのにこうなっちゃうんだろう。それによくこんな自宅が見える場所で浮気ができるなぁ」
「うん?家が見える?」
「ほらあそこ。ここ高台になってるから街がよく見えるんだよ?」
そう言って真美が指さした先には、南城市の色褪せた街並みの中に場違いなほどに鮮やかな赤いとんがり屋根の家が見えた。大豆生田氏の自宅である。高台から見たその家は周りの家と比べ広く地元ではフルーツ御殿と呼ばれている。
「灯台下暗しってやつなのかな?でもこの神経は確かに信じられないね。ともかくこれで任務完了だ。戻って少し休もう」
「お疲れ様。戻ったら報告書は私が作るね」
ありがとうとお礼を言うと稲森は車のエンジンを始動した。稲森と真美を乗せた車は南城駅前商店街へと帰っていった。
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