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僕がもっと、ずっと小さかった頃。よく母さんに叱られた。たくさん叩かれて殴られてとてもとても怖かった事がある、それでも大好きだった。大きくなってそれが少し周りと違う事を知っても、僕はそれが変だとは思わなかった。

小さい頃の僕は母さんに「地球を超えるくらい大好き」と心の底から何度も伝えてたらしい。


母さんは本気で僕の未来を案じて、より良い方に向かわせようとしてくれた。


初めは一番になりなさいと言われた、そのうち二番でも三番でも良いからと言われた。その後はあなたにはあなたのペースがあるから、と言われた。




僕はやっと、一番になれた。


「凄いもんだな。」

砂と煤で汚れた顔を制服の袖で拭った。振り返ると先程の、ファイアボールを放った薄い茶髪でいかにも運動部といった風貌の少年が呆れたように笑っていた。


「そうかな? 」

「惚けなくてもいいのに、俺の名前はトーマス。トーマス・ハーデリアだ。」

トーマスと名乗った少年は人の良さそうな顔に苦笑いを浮かべて自己紹介する。



胸がチクリと痛んだ、その苦笑がどうにも気に食わない、というよりも見ていて苦しくなる。生きていればいつかは自分の上位互換に出会う、オンリーワンなんて言ってられないくらい負けていて、どれだけ自分を甘やかしてもその差を思い知らされる。


「僕の名前はエディルトス・ディアマン。……申し訳ないけど、今日は疲れたからまた今度ね。」


事実を飲み込んで諦めれば、いつかはその痛みは薄れていく。誰かのそんな顔が見たくなかった。素っ気なく彼に背を向け、僕は逃げるように闘技場を後にした。



ーーーーーー



「それで? 負かした相手に同情して、自分の方が辛くなってしまったと。」

自室のベッドでうつ伏せに不貞腐れながら、ティナに今日の経過を報告していた。ティナはいつだって僕の味方で、否定も肯定もせず僕の話を聞いてくれる。


「多分同情とかじゃないんだと思う。分からないけど、僕が見たくないだけなんだと思う。」

「で? 」

「で? ってなんだよ。」

「見たくないのなら見なければいい、という訳にはいかないのですか? 」

「見たくないけどね、忘れるのはもっと嫌なんだ。」



ティナが何か尋ねようとした時。部屋の扉が三度ノックされた。


「エディ、おかえり。先ほど学園から手紙が届いたのだが……いいかな? 」


先ほどの冷たい雰囲気は消えて、代わりに冷や汗と苦笑いの中間のような引き攣った顔の父さんが扉を開き僕の部屋に入ってきた。

「ただいま。今ティナと話してたんだけど、どしたの? 」

「いや、お前。今日の入学試験でとんでもないことしたろ? 」

「別に……大したことはしてないです、気に入らない奴が居たので学園を少しばかり爆破しました。」

父さんがガクッと肩を落とし溜め息をついた。


「少しばなり破壊の意味が分からない……まぁお前に怪我がないなら私達は良い。しかし学園はそうもいかなくてな、魔法耐性コーティングで覆ったコロシアムの壁に大穴を開けられてはいそうですかとはならないよ。お前に非が……非がない訳ではないと思うが学園側は特に賠償などを求める気はないようだ。しかしお前の魔法によって、試験管補佐を行なっていたサーフィア様……サーフィア生徒会長が頭から泥を被ってしまったようでな……。せめて個人的な謝罪を行うように、との事だ。」


賠償が無いのなら何故父さんは冷や汗をかいているのか、それにサーフィア様? ということはどういうことだろうか。

「とにかく僕は明日そのサーフィア先輩に頭を下げればよいのですね? 」

「まぁそうなのだが。あまりあの人に目をつけられ無いようにな? 手遅れかもしれんが。」


頭を下げるくらいなら安いもんだと思う。何とかなるだろう。たぶん。

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