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まだ石柱とトラックに挟まれ自分の頭がカチ割れた感触がズキズキと残っている。


しかし意識はここにある。よしんば生きていたとしてもあの怪我では到底今まで通りとはいかないだろう。


何故意識があるんだろうか、真っ暗闇だが意識はハッキリとしているし痛みも引いてきた。

これが死後の世界なのだろうか、 死後の世界があるんなら何のために生きているんだろう。


目を開こう。おそらく目である場所に力を入れる。

するとぼんやりと目に光が射し込んでくる、良かったと安堵する。同時に目の前にセミロングに白銀の髪を持つ自分と同じか少し上くらいの年齢の美女がいた。



「まぁま? 」



口癖のように口から溢れた。白い睫毛の下の青銀色の瞳に白銀の髪、健康的ではあるが白くシャープな頰に薄桃色の唇。どれをとっても僕の母親ではない。しかしその瞳の中にある情は見たことがあった。


「あらあらどうしたのエディ、起きてしまったのかしら。ごめんなさいね」


エディと言うのは誰だろう、この人は誰だろう。

銀髪の美女はふんわりと微笑んで僕の頭をサラサラと撫でる。その温かな感触は堪らなく気持ちよかった、そのまま微睡みに落ちてしまいだった。





目を覚ましたとき周りには誰もおらず、良かったと安堵し。起き上がろうと右手を持ち上げる。


……手も足も上手く動かない。慌てて自分の体を見てみる。


「ぁぅん? 」


上手く話せないというか、舌ったらずで声が安定しない。首に力を込めて頭を傾け自分の体を見る。


自分の体ではない、それどころかまだ小さな赤子の体だ。

夢でも見ているのか。と、思えた時点でおそらく夢ではない。

死後にも世界があったのだろうか。

元の世界には、戻れないのだろうか。自分は戻りたいのかも分からない。



手に汗が浮いて気持ち悪かった、服で手を拭いて乾かした。持ち上げた首の筋肉が重くぽとっと頭を揺りかごの底に落とす。この中は暖かくてぽかぽかする。ゆっくりと目を閉じた。



ーーーーーー

ーーーー

ーー



この体になって2年が経った。この世界についてもそれなりに分かってきた。今の僕は二歳とすこし。

どうやら僕の新しい名前はエディルトス・ディアマン、長い。


そしてあの銀髪の美女は僕の母親のエメリア・ディアマンという、僕を産んだのが19歳、つまり父さんははたちに満たない少女の母さんと不純異性交友を行ったらしい。


まぁそれはいい、そしてこの世界には魔法というものが存在する。謎パワーの魔法である。この世界ではこの魔法こそが指標であり、人の優劣を決める。ものが変わっただけで前世とさして変わりはない。


そしてこの世界は貴族社会が根付いており、僕の父であるアウル・ディアマンは一代限りの領地を持たない名誉貴族なそうな。

どうせなら領地も金も自分に残してくれ、と言うのが本音だが。美形である両親のDNAはさぞかし価値あるものだろう、美男美女というのはそれだけで大きなアドバンテージである、はず。



時が経ち、僕は待ちに待った自分の手足で動く事ができるようになった、よちよち歩きではあるが自分の体は思いのままに操れる。


実のところ、この二年焦りに焦っていた。というのも転生したはよいものの肝心なチートを持っていかどうか分からないのだ、是非持っていて欲しい。

この世界の子供は六歳ごろになると潜在的な魔力との親和性が計られる。僕の両親はどちらも優勝な魔導師であるらしいがそれが遺伝されているとは限らない。


そしてこの魔力は後天的に発達することも大いに有るらしい、であるならできるだけの準備はしておいた方がいい。

中身は変わらない自分自身のまま、このまま何なければ同じ人生が待っている。

しかし何かしようにも言葉は出せず動く事すらままならない、焦りは募るばかりだった。


二度と同じ轍は踏みたくない。あんな惨めな思いはごめんだ。



こうして晴れて自走できるようになった僕は、父さんの書斎へ忍び込む、もちろんよちよち歩きだ。自分の全長ほどの高さにあるドアノブを扉にもたれかかり握りしめる。

そのまま体重をかけて手首を捻る、赤子の姿は本当に大変である、自分では何もできないのでつまらない。


ガチャリと音が鳴り、反動で僕の体は一回転する。幸い屋敷の誰も気がつかなかったのでそろそろと書斎へ進入する。



広い。父さんの書斎は円状の部屋の周りに木製でできた本棚がグルリと置かれ、その中に隙間無く様々な書籍が収納されている。


この世界の言語は英語にちかい。ところどころ訛りのような部分はあるがコミュニケーションに困ることは無かった。本格的な論文となると僕の能力では賄えないが、今の僕が欲しているのはせいぜい児童の教科書程度の魔法指南書である。



身長では届かない場所へは足場を用意しよじ登り、一時間程かけて父さんの書斎をメチャクチャに散らかした。


「……ぁー」


少しだけ反省し、目的のものを見つける。結局、僕が届くように一番下の本棚にエディと書かれたシールがぺたりと貼られた場所に『魔法指南書 初級編』『中級編』『上級編』と揃っていた。




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