目覚めたら異世界
拙い文章力で足掻きます。
よろしくお願いします。
「別れよう。」
彼からはこの一言しか発されなかった。特に言い訳めいた言葉をつらつらと言い連ねるでもなく、本当にこの一言だけ。
何が悪くて、とか、どちらかが浮気をして、とか、そんな決定的な原因はないが、お互いどこか“ 合わない ”とどこかで感じてしまっていた。それでも始まった関係にそう早く終着を見出すのも早計であろうと約2年の交際を続けていたのだが、積もりに積もった双方の価値観のズレにようやく限界がきたのだろう。
私、平坂芽依も、淡々とその言葉を受け止めて、そして了承した。
「あらら、ついに別れたかー、めいっち達。」
「人の別れ話なのにそんな日常会話の延長線みたいなノリで聞かないでよ、有里」
後日、会社の同僚でもあり大学時代からの友人でもある河内有里と仕事後の軽い飲み会をしていた。その際、彼と別れたと報告をしたのだが、有里は私たちの破局を聞いても驚く素振りすら見せず、むしろ、まだ続いていた事に驚いていた。
でもさー、と有里は続ける。
「正直、別れられて良かったんじゃない?めいっち、なんか表情が晴れやかだよ。」
「……まあ、確かに」
彼に何か欠点があったわけじゃない。むしろ恋人時代はマメにプレゼントをくれたり、どこかに連れていってくれたり、甲斐性のあるいい彼氏だったのだ。だが、行動を共にする時間が長ければ長いほど、彼と自分の間のズレは深まり、それが互いの負担となっていく。逢瀬の後は、ただ疲労感だけが残っていたのだ。おそらくそれは彼も同じだろう。
よくそれで2年も続いたものだと我ながら感心してしまう。
「これからはフリーライフを楽しむよ」
「非リアの世界にようこそ!めいっち」
余談だが、有里は明るくて可愛いのに、何故か恋人がいない。彼女を狙う男性はそれなりにいるが、どれだけアピールしても靡かず、諦めていく男もやはりいるのだ。有里本人曰く、「私には心に決めた人がいるからね」とのこと。お相手はまさかの既婚者で会社の上司であるらしい。有里は不倫やその上での泥沼展開など似合わないし、本人もその気は無いらしい。早く不毛な恋だと諦めて次の恋に移った方がいいと思うのだが。
まあそんな友人の内情はともかくとして、私は自由の身を手に入れ、それを祝うかのようにささやかな乾杯もし、終電ギリギリで帰路に着いたわけだが。
「ああ、無事に召喚できてよかった」
「……はい?」
どういうわけか、目覚めたら全く見慣れぬ風景が目の前に広がっていて、
「イシュタールへようこそ、僕のお嫁さん」
この訳の分からない状況を作り出したであろう張本人は涼しげに微笑んで、混乱状態でいっぱいいっぱいな私を嫁認定しやがりましたとさ。
いやいや、展開がベタすぎるでしょ。