8話 王城行ってみた。
「このパーティーってさ、壁職居なくね?」
「それだと何か問題があるんッスか?」
「ああ。例えばだ。動きの素早い敵対生物が6体散らばって出てきたとする。遠くから魔法で狙撃していけば倒せないわけもないが、背後に回られてしまったら確実に一本取られる。また、いくら接近戦で強くても、三体に囲まれてしまっても同様に取られる。数に囲まれてしまったら絶対に死角ができるからな。」
「「「はあ。」」」
「そこで壁職の出番だ。壁職が敵を惹き付ける。敵にとって厄介だと思うことをすれば簡単に寄ってくる。そして攻撃職が寄ってきた敵を背後から殲滅。」
「囮役ってことッスか?」
「そうだ。」
「なら、一人最適だと思われる方はが居るのですが。」
「確かにそうじゃな。」
「この中で一番防御力高くて、攻撃スキルと補助スキル持ってる人が。」
なるほど俺にやれと。
大変今更ながら、パーティーの編成が決まった。
〇前衛
・壁 兼 補助 俺
・近距離攻撃 メリス
〇後衛
・魔法攻撃 ディオニル
・魔法支援 テラ
「では、これを踏まえて武器を買ってくれ。」
「「「了解。」」」
◆
先に店を出たのは俺だったらしい。
仕方ない。待つか。
俺が買ったのは、双剣一対と小型の杖。盾は買わなかった。
自分のスコアを見てみると、
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防御力 : 3077 Full
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だった為、[盾なしでも攻撃通らないな。]と思ったのである。
「しかし、ステータスが全て3000を超えていたのは驚きだったな。」
「もうそんなに強くなっていたんですね。」
「をおお!ビックリするから耳元はやめろお。」
テラには後で今の"お返し"をしてやろう。
「ところでテラは何を買ったんだ?」
「これです。」
と言って、身長と同じくらいの大きさの木製の立派な杖を見せてきた。
「凄く...大きいね...」
「カッコイイでしょう?」
「うん。凄く。だから..その、振り回すの止めようか。」
さっきから杖をブンブン振り回している。通行人の邪魔になるので止めてくれないだろうか。
「何だか楽しそうじゃな。」
「ッスね。」
ディオニルとメリスも終わったようだ。
ディオニルは背中に大きな黒い杖を、メリスは片手剣を一本とダガー二本を腰に提げている。
「おお、メリス達も終わったか。」
っとここでディオニルの腹が鳴る。
ディオニルは顔を真っ赤にする。
あは、可愛。
「そろそろ飯食うか。まだ朝食を取ってないし。」
「同意ッス。」
「ですね。」
俺達はディオニルのテレポートで酒場に行った。スキルの無駄遣いだと思う。
「おいおい、またかよ。」
また騒ぎが起こっているようだ。
「あれは...王都の騎士ッスね。こんなところに何の用ッスかね?」
「まあ、それはほっといてご飯食べましょうか。」
「そうじゃな。」
「メシメシ~♪」
「楽しそうッスね。」
「おっと、空腹で理性が。」
なにそれ怖い。
ディオニルの闇の面が見えたところで料理が運ばれてきた。
「これがここで作られたマヨネーズか。」
俺は例のコールスローを注文してみた。
「見た目はできてるな。味はどうだろうか。」
そして一口。
「うん。悪くないな。ただ、もう少しよく混ぜてもいいかな。」
少し油の感じがあった。まあ問題はないだろう。
「何してるんですか?」
「教えた通りにちゃんとできているかどうかを確かめているんだ。」
そんな話をしている時、遠くからこんな声が聞こえてきた。
《ここに"陽谷契"という人物が居ると聞いて来たんだが。》
さっきの騎士の声だ。俺に何の用だ?
あっ、目が合った。
その騎士はこちらに向かって歩いてくる。
「"陽谷契"という人物を知っているか?」
3人が俺を見る。
「...ご飯食べてからでいいか?」
「あ、ああ。」
「で、俺に何の用だ?」
「王からの召集が掛かっている。城まで同行願いたい。」
と、言うことで王城に行くことになった。これまた面白そうなことが起こりそうだ。
「しかし物好きな王様だよな。俺を呼んで何をするつもりだ?」
「さあ。私はただ"連れてこい"と言われただけだ。」
「ところでさ、何でお前らも居るんだ?」
「別にいいじゃろ?」
「街に残っててもあれッスし。」
「私は契さんのマネージャーみたいなものですから。」
もう、何でもいいや。
「...今更だけどさ、別に馬車を使わなくてもよくない?」
「...」
「馬車が最速の移動手段だった筈だが。」
「俺の場合、走った方が速い。」
「馬車よりも速く走れるのか?」
「まあ、頑張れば30m/sくらいで。」
「なっ!?」
◆
馬車を使った所為で着くのが遅くなったが、俺達は王城に居る。
「連れて参りました、陛下。」
"アニメの騎士"っぽい言葉に感動を覚えつつ、俺は王に深々と一礼する。
スゲー! アニメで見たことがあるような展開だ!
そして王は俺に質問を始める。
「汝が"陽谷契"か。」
「はい。」
「魔族に連れていかれたというのは本当か。」
本当のことを言っていいのだろうか?とテラの方をこっそりみる。
大丈夫らしい。
「はい。」
「その時の話を聞かせてもらおう。」
言ってもいいのだろうか。とりあえず事実が歪まない程度に言葉を濁そう。
一通り説明した。間違ったことは言っていない。筈。
「なるほどな。」
「あの、用はこれだけでしょうか?」
「いや。汝は迚も強いと聞いた。その腕を見せてはくれないか。」
「嫌です。」
こう言うのは軽々しく人に見せてはならないというのはお約束だ。でも、
「但し、俺と握手してくださるのならば、別の答えが出せます。」
我ながらこの考えは素晴らしいと思う。こうすれば間違いなく握手をしてくるだろう。そうすれば戦争を止める為にできることが分かるだろう。
「いいだろう。」
とりあえず成功。
「しかし見せるとはいっても、相手がいなければ意味がありません。...ちょうどいい、騎士さん、手合わせ願いたい。」
「かまわない。」
◆
さすがに城内で暴れる訳にはいかないので場所を変えた。普段ここは兵士の訓練場らしい。流石、王都とだけあって広い。ざっと4haくらいある。
相手の騎士は、国一の強さを誇る剣精の一族らしく、彼奴に敵う者はいないという。が、たぶん楽勝。
「いつでも構わないぜ。」
「おやおや私も嘗められたものだ。では、こちらから行かせてもらおう。」
と言って、騎士はこっちに向かって飛び込んでくる。
「遅いな。」
俺は初撃をひょいとかわし、騎士の背中を殴る。
すると騎士は、まるでドラ〇〇〇ールのように160mくらい吹っ飛ぶ。
「少し強かったかな?」
砂埃が舞う中、騎士はよろよろと立ち上がり剣を構える。生きていたようだ。いくら力を抜いたとはいえ、常人が俺のグーパンを喰らったら即死なのに。
「まだだ。」
まだやる気かよ。まあ付き合ってやるか。
そして騎士は走り始める。
今度はさっきと違う。明らかに足が速くなっていて、態勢や構え方も変わっている。何より、騎士が持っている剣が青白く光っている。
どうなるのか興味があるので、自分に防御力がひたすら高くなる支援魔法を掛けておく。念のため、双剣でガードもしておく。
「うおおおおぉぉっ!」
パリーン
剣が砕ける音がした。
さっきまであった青白い光は消え、代わりに騎士の顔が青白くなっている。
騎士はその場に崩れ落ちる。
勝ったった。
「なあテラ。彼奴って"国一"強いんだよな?」
「の筈ですよ。」
「あんまり手応えなかったけども。」
「まあ、契さんは規格外ですから。」
次回 お食事会に呼ばれてみた。