表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/32

7話 装備を整えてみた。

 なんか色々あった日の翌日。

 俺達3人は、ヴァルク達のところに向かっている。

 此方の世界では規則正しい生活を心掛けていたが、昼近くまで寝過ごしてしまった。


 一階に降りると、また騒ぎが起こっているようだ。

 面倒は御免なので無視してヴァルク達を探す。

 発見。人だかりの中に。

 さっと連れていけるかと思ったが、人だかりのかなり内側にいる為そうもいかないらしい。

 というか今回のは円陣の様になっていて、間に入れそうもなく、内側の会話も聞こえない。


 よし、待つか。

 俺達はテキトーに席に座り、円陣がほどけるのを待った。


──数分後──


 終わったようだ。話し声が消え、顔を上げる。そして何故か全員が此方を..向....く.....

...へ?


 周りをみても俺達3人の他誰一人として居ない。俺達を見ているのか?


『心理眼』を使って集団を見ると、あることに気付く。


 全員の感情がばらばらだ。

 怒り、嫉妬、感謝、喜びなど、まとまりがなく、またその全てが俺に向けられている。


 そしてその集団は俺に向かってゆっくりと移動を開始する。


 な、何の真似だ?

「逃げ..る....か。」

 3人は席を立ち、スタコラ出口へと走る。



 現在地は本部裏の訓練場。そこで例の集団と対峙している。


「け、契さん契さん、も、もしかして何かやらかしたんスか?」

「や、やらかしてねーし! 滅多なこと言うなよ!」

「もしかして昨日の午後のことじゃないですか? お姉ちゃんに会ったことが...」

「あ...それか? でもそれだと感謝や喜び、嫉妬の感情が居るのが理解できない。それに怒りは少人数だ。」

「確かにそうですね。しかし感謝..喜び..が居るのが私には理解できません。契さんが人の喜ぶようなことをするとは御世辞にも思えないですから。」

 パコーン

 俺はいつぞやのスリッパでテラの頭を叩いた。いい音がする。


 隣で頭を押さえながらまるくなっているやつはほっといて、俺は直接訊いてみることにした。直接訊いた方が早いし確実だ。

 俺は集団に向かってこう言った。

「あの、さっきから俺についてくる理由を教えてくれませんか?」


「マヨネーズを発明したのはあんたか?」

 なんだ、そんなことか。

「そうですが、何か?」

 すると集団は俺に向かって走ってくる。



 そこから先は覚えていない。



 目が覚めると宿屋に居た。北の窓には橙色の空が見える。


 えっと、何をしたんだっけ?

 えっと、何があったんだっけ?

 えっと、何でここに居るんだっけ?


...思い出せない。


 そんなとき、部屋のドアが開く。

「「「ただいま」」」

 聞き慣れた二人の声と、丁度1日前に聞いた声がする。

 テラとメリスとディオニルの声だ。

 でぃ、ディオニル?!


「っと、どうしてディオニルがここに居るのかを説明してくれ。」

「クエストから帰って来る途中でお姉ちゃんに会ったので、連れてきました。」

「は?」

「仲間になりたさそうにこっちを見てたから連れてきたッス。」

「いいのか? 敵対勢力の街に居ても。」

「問題ない。契は街で最強なんじゃろ?」

「ディオニルがいいなら構わないけどさ、今俺達金が無いの知ってるよな?」

「その問題は既に解決済みです。」

「どういうこった?」

「クオラさんが言ってました。[新メニューの"マヨネーズのコールスロー"が凄く売れたからマヨネーズのお礼に1日の売り上げの5%を毎日やる]だそうです。」

「で、その5%ってどのくらいなんだ?」

「大体100アークくらいです。」

「そら凄いや。飲食店って儲かるんだな。」

「ものすごく落ち着いてるッスね。100アークッスよ?」

「まあ、一時期1000万アークくらい持ってたことがあるからな。その程度では。」この世界に来る前の話だがな。

 メリスの顔が青くなっていく。


 俺は話を少し戻す。

「...100アークか。じゃあ、装備を揃えるか。」

「そうですね。さすがに初期装備はそろそろ。」

「異論なしじゃ。」

「い、1000...万...!」

「じゃあ明日は買い物だな。ついでに昨日取り損ねた休暇を楽しむか。」


「ところでさ、俺、あの後どうなったの?」

「あの後、と言いますと?」

「昼頃の"マヨネーズ開発者襲撃事件"の後。」

「いつの間にそんな名前がついていたんですか?」

「...今テキトーにつけた。それはそうと、あの集団が俺に駆け寄って来てからの記憶がないんだ。どうなったのか知りたくてよ。」

「その...聞かない方が...いいです。」

「おk。」

「あと、別件ですが、コーダ兄妹はしばらく顔を出さないそうです。」

「了解。何でだろ。」

「さて?」

 テラはなぜなのかを既に分かっているらしく、小馬鹿にするように微笑しながらそう言った。教えてくれたっていいのに。



──翌日──

 俺達は今、装備を整える為商店街に来ている。

 異世界に来てもう5日になるが、流石にダルグリーンのジャージ上下ではファンタジー感ぶち壊しだ。


「資金は一人25アークだ。これには朝昼晩の三食と風呂代、宿代が含まれているから注意すること。集合時間及び場所は、日入りの時間にいつもの部屋だ。以上。自由行動開始!」

「「「おー!」」」

 自由行動とは言っては見たものの、メリスは俺から離れると虐められるだろうし、テラとディオニルは店員に相手にされないだろうから...

「やっぱこうなるのか。」

 俺の右側にテラ、その右にディオニル、そして左側にメリスがいる。


 手始めに、どこへいくかで揉めた。外見重視派、性能重視派で真っ二つになり、まずどの店に行くかで10分は言い争った。

 結果じゃんけんで決めることになった。じゃんけんのルール説明には苦労したが、この世界では《魔物》という単語が非常に便利だ。[なぜ紙が石に勝てるのか?]という質問には困ったが、[その紙は包んだ物を溶かす性質がある魔物だ。]と答えたら納得してくれた。本当に《魔物》という単語は便利だ。


 俺達は今、じゃんけんで勝った外見重視派の買い物をしている。テラ、ディオニルがそっち側だ。


 俺は昔、"敗北の神"という嬉しくない称号を与えられたことがある。俺が応援したものは、悉く敗退していった。俺はその事をつい忘れ、自分を応援してしまったのだ。本来ならば、相手側を応援することで勝つ、という使い方なのだが。


 外見重視派の買い物はとても時間が掛かる。AとBだとAが弱く見えるだの、CとDだとDが強すぎるだのとなかなか決まらない。ただ、俺は気付いた。これは性能重視派にも言えることだ、ということに。

 例えば、AとBならある一つに対する耐性が高いが、別の一つの耐性が非常に低くなる。しかしCとDを使えば全体的に耐性を得られるが、上昇率が悪い。のようなことと同じと言えるだろう。なら時間が掛かるのも納得だ。


──数分後──


「契さん、契さん!」

 先に出てきたのはテラだった。

「これ、どうですか?」

 先程と変わった様子はなく、簡単に言うといつも通りだ。

「? どれのこと...です...か..?」

 テラの顔がみるみるうちに怒り顔に変わる。ひょっとしてこれのことだろうか?

「あ、怒った顔も素敵ですね。」

 笑顔でそう言ってみた。

 テラは怒りながらも頬を赤らめる。

 そして俺は、ポケットに入れてある、ツッコミ用スリッパがないことに気が付く。



...まだ頭がじんじんする。

 スリッパって結構痛いんだな。テラの背が低い所為で変なところに当たったから余計に。


 さっきは何も変わっていないように見えたが、よく見ると服の柄が変わっている。よく見ると。


「テラは本当に白が好きだな。」

「 白には、清潔な印象を与える。実際よりものを軽く感じさせる。汚してはいけないと思わせる。等の心理効果があるのです。 」

「膨張色だけどな。」

「それは言わないでください!」

「契さんとテラさんはときどき意味不明な会話をしてることがあるッスよね。何処の地方の人なんッスか?」

 際どいところを訊いてきたものだ。

「..テラ、これは言って良いのか?」

 と、小声で訊いてみる。

「だ、ダメですよ。」

「マジで?」

「マジです。」

 どう誤魔化そうか。


「俺はここから物凄く遠くにある島の出身なんだ。そこ独自の文化の中で育ったから、こことは少しズレてることがあるかもしれないな。」

...間違ってはない。

「そうなんッスね。」

 納得してもらえたようだ。


「何の話をしておるのじゃ?」

「をおお?!ビックリした!」

 耳元で言われると流石に体が反応してしまう。

「何事じゃ?大声を出しよって。」

「[何事じゃ?]じゃねーよ、超ビックリするわ。」

「はは、すまんかったのう。」

 性格は全く違うがやはり姉妹。笑顔が似ている。

「ところでこの格好、どうじゃ?」

 紫のワンピースだ。なんだろう、イメージ通りで反応しずらい。

「なんと言うか、イメージ色通りだね。似合ってる。」

「すごく可愛いッス。」


 紫には緊張や不安を癒し穏やかな気分を与える。性的なものを感じさせる。心と身体の回復を促す。等の心理効果がある。また、高貴と下品という相反するイメージを持つ色でもある。ディオニルにはそんな一面もあるのだろうか。


「テラとディオニルはもういいか? じゃあ俺達の番だな。」

「そうッスね。」



 次は、俺とメリスが買い物をする番だ。


──数分後──


 した。

 買い終わった。


 俺は防御力が軽く1000を超えているので、重装備はしない。とはいえ、斬られると痛いので籠手と胸当て、カチューシャ型の頭装備を付け、服装もファンタジーっぽくしてみた。

 18アークも使えるといろいろと揃う。お釣が来る場合もある。物価が低いのは、金持ちにはいいことだ。


 メリスも終わったらしい。

 とても動きやすそうな格好をしている。


「二人とも性能重視とか言ってた割には見た目もしっかりしてますね。」

「まあな。世界観をぶち壊す訳にはいかないからな。」

「世界観ってどういうことッスか?」

「さあな。いろいろあるんだよ。さて、次は武器だな。」

「武器と言えば、ここから少し遠いですが品揃えのいい店が街の南東にありますよ。」

「どれくらい遠いの?」

「普通に歩けば一時間、走れば40分、飛べば2分くらいです。」

「飛ぶって何スか?」

「じゃあ飛んでいくか。」

「だから飛ぶってどういうことッスか?」

「おやおや、わしを忘れてもらっては困る。」

「そういえばお姉ちゃん、『瞬間移動』スキル持ってましたね。」


 と、言う訳で『瞬間移動』することになった。


 文字通り一瞬で目的地に着いた。今更ながら街中でこんなスキル使っても良いのだろうか。


 それと、

「一つ今思ったことを言ってもいいか?」

 武器を買う前に知っておきたいことがある。

「このパーティーって壁職居なくね?」

「「「あっ」」」

「テラ、あの変化は気づけないよ。小さ過ぎる。」

「そうですか? 白滝と糸蒟蒻ぐらい違いますよ?」

「いや、それ同じ物だから。」


次回 王城行ってみた。



次回はストーリーを少し進めます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ