5話 マヨ売ってみた。
ランチタイムのピークが過ぎた頃。冒険者はクエストへ出かけ、みれば酒場には両手で数えられる程しか人がいない。
俺達は今から酒場の料理長に会い、マヨネーズを使ってみてもらうつもりだ。
3人は、厨房へと歩く。どうも俺は少し歩くのが速いらしく、後ろの2人は時々はや歩きになる。
...可愛い...
厨房に着き、料理長を呼んでもらった。
その料理長は大柄で、熊の様だ。名をクオラと言った。
軽い挨拶の後、俺は単刀直入に話を持っていく。
「是非、このソースをここで使っていただきたい。」
「これは何だ?」
「俺の故郷に伝わるソースです。」
「これ凄いんスよ! ここの唐揚げと組み合わせたら、それはもう絶品で...」メリスが眼を輝かせて言った。
「そんなに凄いのか?! エルフが眼を輝かせる程に?」
エルフは視覚、聴覚、味覚が鋭いとされる一族だ。この場合メリスの言葉は、非常に信用度は高い。
「因みに名前は? それと一口貰ってもいいか?」
「名前は"マヨネーズ"と言います。是非食べてみてください。ただ、単体だと味が濃いと思いますよ? ソースですから。」
「そうか。ちょうどいい。サラダが少し余ってるんだ。それに使おう。」
生野菜×マヨネーズ→最強 これで勝る。
「これはなんと素晴らしい。」
クオラが感嘆の声を上げ、続けて
「是非使わせてもらうよ。ところで、どのくらいの周期でいくつずつ納品してくれるのか?」
「納品はしません。自足してください」
空気が一瞬凍る。
俺は今、金欠だから一つ作るだけで精一杯だ。どんなにこの後稼げる話でも、起動分のものがなければ意味がない。
「大丈夫です。この作り方通りに作れば、このソースができますよ。」
と、俺はマヨのレシピを書いた紙を渡す。
「..そうか。ありがとう。」
クオラは少し間を開けて言った。
たぶん彼はこう考えたのだ。
作り方が分かれば品切れにはならない。だが手間と材料費が掛かる。どっちの方が儲けられるか。
手間は雇用人数を増やして賄おう。幸い、金には少しばかり余裕がある。材料は朝の仕入れの時に一緒に買えばちょっとは安くなるだろう。自分で作れれば品切れになることはない。もしも自分で作れなくて夕食時までに売り切れてしまったら、夜の分の儲けがなくなる。それに毎日納品されてくるとも限らない。
結果自分で作ることにした。
金は幾らでも欲しいものだ。それにこの先、金の価値が下がるからな。気付いちゃいないだろうけど。
「こちらこそ、どうも。」
そう言って俺達は厨房を後にした。
──後日、酒場のメニューが一つ増えました──
◆
取引の後、街でゆっくり遊ぼう、という話だったのだが...
《緊急! 緊急! 街中の冒険者各員は、至急北門に集合せよ! 繰り返す、冒険者各員は、至急北門に集合せよ!》
マジかよ。折角の休日があ...
そんなことを考えながら俺達は北門へ向かう。
ここから北門まで、およそ一里ほどあるが、『移動速度上昇』のお陰であと10分程で到着するだろう。
北門には、既に人が集まっていた。
その多くは、ある一点を見つめていた。そこに何かあるのだろうか。
見ればそこには邪悪なオーラを纏った、魔族の軍と思われるのがあった。
「魔族軍の襲撃とか、いよいよらしくなってきたな?」
「それがですね? あの...」
「?」
次回 魔城に行ってみた。
短くて申し訳ない。リアルが少々忙しくなってきたもので。