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4話 人(?)を救ってみた。

「じゃあ、早速作っていくか。」


 今日は冒険者業はお休みして調味料を作る。

 別に作らなくてもレシピを渡せば済む話なのだが、うまくいくと決まったわけではないので、まずは自分達で作ってみることにした。



「しかしここって本当に色々安いよな。」

「そうですね。おかげで直ぐに色々揃えることができます。」

「でもまあ、いつまでもそうって訳にもいかないらしいけどね。」

「お? 契さんも気づいたんですね。」

「ああ。つまりこの国はインフレさせたい訳だろ?」

「お見事です。貴族と貧民との格差は社会問題になっていましたからね。やっと国が対策を講じたのです。」

「なるほどね。」



 なんて話していたら、

「よし。マヨ完成。丁度昼頃だし、これ持って昼飯食いに行くか。」

「そうしましょう。お腹空いてきました。」



 なにやら酒場が騒がしい。

 騒がしいのはいつもの事だが、今日のはなんとなく雰囲気が違う。ピリピリとした感じだろうか。

 見ると入口付近に人だかりができている。


 俺はそこに駆け寄り、近くの同業者に話を訊いた。

 どうやらワーエルフが倒れているらしい。


 ワーエルフと言えば、この国の差別対象の一種だ。

ワービーストの高い身体能力と、エルフの高い知力を持っているため危険視されている。だからピリピリとした雰囲気をしているのだろう。


 俺は人をかき分け、そいつの姿を見た。


 同い年くらいで、背丈は160cmとちょっと。狐のような尻尾が生えていて、尖った耳をしている。スラッとした美人だが、全身痣だらけで服はズタボロだ。

 痣は最前列の冒険者がつけたものだろう。先程から蹴ったり撲ったりを繰り返してる。

 それを見ていた俺は、気が付けば仲裁にはいっていた。


「おい。止めないか。」

 その場の全員の視線が俺に向く。


 それに少しビビりながらも続ける。

「幾ら相手が差別対象だからといって、そこまでしていい訳ではなかろう。」

「何だお前? こいつの仲間か?」

 いかにもチンピラな冒険者が返す。

「そいつは俺の友達だ。俺に会いに来たんだ。」

 さっきポイントを使って最大までレベルを上げたスキル『催眠術』を使いながら、今作ったでたらめを言ってみる。

 俺に対する殺気がさっきよりも強くなった気がする。『心理眼』を使って見てみると、その違いは明らかだ。つまり催眠成功。


 そのチンピラは俺を下に見るようにこう言った。

「お前、俺と勝負しろ。俺が勝ったらお前とこいつをボコボコにする。万が一、お前が勝ったらお前とこいつを見逃す。それでどうだ。」

 俺に喧嘩を売るとはいい度胸だ。

「売られた喧嘩は買う主義だ。受けて立つ。」


 俺とチンピラはこの建物の裏で対決することになった。



 ギルド本部の裏には、テニスコート3面分程の訓練場がある。そこがフィールドらしい。


 対決のルールは簡単だ。どちらかが倒れたら負け。

 荒くれた冒険者らしくて少し感動する。


「俺は対戦相手とは試合前に握手をする主義だ。」

とかテキトーな事言ってチンピラのステータスを貰う。これで完璧。

 全ステータスがFullを超えた。その上、相手のスキルを自分のものにした。

 明らかに俺の方が優位にある。




 勝負開始


 まず俺は、さっきあいつからコピーした『投擲』と『狙撃』を使って、そこら辺に落ちていた石ころをあいつに向けて投げた。


 石は目標の眉間に命中。そのまま倒れて動かなくなった。



「...は?」

 俺を含めたその場の全員が驚き、声を漏らす。


...今起きたことを整理しよう。

 俺はまず石を投げた。すると石はあいつの眉間にビンゴ。あいつは気を失ってバタリと倒れた。

 俺の勝ち?


 俺の攻撃力はだいたい1200。あいつの防御力は450くらいで体力は560前後。ダメージは750くらい。

 相手は死ぬ。

「やっべ、とりあえず『リスレジオン』!『レコペロ』!」

 生き返りと回復呪文を掛けておいた。多分これで大丈夫だ。数十秒もすれば目を覚ますだろう。


...野次馬の目が痛い。化け物を見るように怯えた目をしている。

 さて、どうしたものか。



 色々あって、今俺達3人は少し遅めの昼食をとっている。


 あの後、チンピラが目を覚まして2人は和解。野次馬は、少しずつ立ち去っていった。


 ワーエルフに回復呪文を掛け、事情を話した。

 ワーエルフの娘は"メリス"と名乗り、ここに来た理由を話してくれた。

「オイラ、凄く腹減ってたッス。そんで、いい匂いがしたからここに来たら、いきなり撲ったり蹴ったりしてきて...そこからはあんまり。」

 要は食いもん探してここに来たら、ボコボコにされた、と。

 はは、散々だな。


「多分俺と一緒にいるときは何もされないだろうから安心しろ。俺は契だ。よろしくな。」

 と言って右手を差し出す。

「よろしくッス。契さん。」

 メリスは俺の手を握る。


「あの、契さんのスコアを見せてもらっていいッスか?」

「別にいいよ。」


 俺のスコアが大変なことになっていた。

──────────────────────────────

名前  : 陽谷 契

性別  : 男

レベル : 13

クラス : 無所属

年齢  : 21

種族  : 人間


ステータス

体力  : 1724  Full

筋力  : 1584  Full

攻撃力 : 1816  Full

防御力 : 1577  Full

魔力  : 1693  Full

魔力容量: 1948  Full

知力  : 1955  Full

総合評価:  Full


スキル

ポイント  362

・---  飛翔     習得済

・---  白魔法    習得済

・---  黒魔法    習得済

・---  催眠術    習得済

・---  状態異常耐性 習得済

・---  千里眼    習得済

・---  暗視     習得済

・---  心理眼    習得済

・---  再現     習得済

・---  剣技     習得済

・---  狙撃     習得済

・---  投擲     習得済

・---  拳技     習得済

・---  回避術向上  習得済

・---  移動速度上昇 習得済

・---  跳躍力上昇  習得済


討伐した魔物

・コアットロ     4

・カプラエノーム   3

──────────────────────────────

「げ、限界突破!?」

 メリスが目を見開いてそう言った。


「限界突破ってどういうことだ?」

「唯の予言だとしか思ってなかったんスけど、本当に居たんッスね。」

「その予言ってあれか?」

 さっき握手した時に入手した記憶だ。


───人類が危機に瀕したとき、限界突破した者が救世主として現れることだろう───


「それッス。」

「そういえ今魔族と戦争をしてて、此方がかなり押されてるんだっけか。」

「この街は戦いの中心部から一番遠い街ですから。まだ被害が出ていないだけです。」

「この娘の言う通りッス。」

「じゃあ、その救世主ってのが俺?」

「たぶんそうッス。」

「俺スゲー。」



 そして俺は大事な用を思い出す。

「そういえばマヨネーズ。持ってるよな?」

「はい。」


 大事な用とはつまりマヨネーズの試食だ。その為に蛙の唐揚げを頼んでおいたんだ。


 蛙の唐揚げに今朝作ったマヨネーズを乗せてかぶりつく。

 大変美味である。

「よし。マヨネーズは大成功だ。」

「契さん、契さん。そのクリーム色のものはなんスか?」

「これはマヨネーズって言って、俺の出身地の魔法の調味料さ。どんなものでも美味しくしてしまう魔法の。」

「凄いッスね。オイラもそれ使っていいッスか?」

「ああ。勿論。此方の人がどう反応するのか気になるしな。」

 メリスも俺と同じようにして唐揚げにかぶりつく。


「うまいッス!! なんスかこれ!?」

 メリスは目を輝かせた。

...というか発光してるんだけど...


「ちょ、おいお前、眼が発光してんぞ! どうなってんだ?!」

「ああ、これッスか? これは、エルフは気持ちが昂ると眼が輝くんスよ。その血を半分引いてるから、オイラの眼も輝いたんスよ。」

 変な奴も居たものだ。


「お二人さんは、これからどうするんスか?」

「これからこのマヨネーズの作り方を酒場の店主にでも伝えようかと。」

「勿論、メリスさんもですけどね。」

「付いて行っていいんスか?」

 その質問に、俺は、はあ、と息を吐き、

「お前俺に付いて来ないとまたさっきと同じめに合うぞ?」

 と言った。

 メリスは、なるほどそれもそうだ、と手を打った。

「マヨネーズ出来ましたね。」

「キュー〇〇には劣るけどな。」

「だとしてもこれは食文化の進歩と言っても過言ではないですよ。」

「そこまでか?」


次回 マヨを売ってみた。



エルフには妖精がはっきりと認識できる、という設定ですので、メリスはテラと会話ができます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 種族固有スキルとかあればコピーしたいですねぇ。 吸血鬼など、魔族側?の不死系スキル欲しいですね。 敵と握手って実力差がかなりないと無理ですよね。 不死の怖いところは、痛覚無効がないと拷問など…
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