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2-17話 最後の戦い

「…面倒だな。」

 どこか懐かしさのある壁を前に、契が呟いた。

 契とフォルティを除く四人はいつかの忌まわしい記憶がフラッシュバックしたのか、大変気分が悪そうだ。


 そう。パズルである。


「…さて、とっとと突破するか。」

 と、さっきと同じ寸法で壁を破壊しようと試みるが、結界がガラスの割れる音を伴って壊れる。

 結構な速度で壁に飛んでいたので慣性の法則に従いそのままぶつかる。

「ッてて…」

「大丈夫ですか?!」

 心配したテラが契の下へと駆け寄る。


 矢張りパズルを攻略しなければならないのだろうか。

 そう考え始めた一同に、だが契だけはまだ何かをしようとしているらしい。


 ところで、嫌な記憶がフラッシュバックしていて気づけなかったが、よく壁を見てみるとなにやら鍵穴のようなものがある。

「鍵…か。」

 見た感じ扉のロックは三ヶ所。鍵穴も三つ。メリスに確認したところ、魔術的なロックはなし。

 ということはつまり、表面のパズルは只のカモフラージュで実際は、鍵を探すゲームということだ。


「…いつもこんな調子なのか?」

 唐突にフォルティが口を開いた。

 見たところ他のメンバーを置き去りに一人勝手に進めているが、それで良いのかと。

「はい…」

「じゃが、契に付いていくのは至難の技での。」

「そういう人だってわかってるッスから。」

「変に足引っ張るんやったら、其れこそ敢えてなんもせん方がええやろ?」

 口々に答えた。


 聞く限り取り敢えずは放っといていいのだろう。

「あ、また移動ッスね。」

 こう話している間も、彼は容赦なく勝手に行動する。

 他のメンバーは、これに付いていくだけで精一杯なのだ。



 サクッと二つの鍵を見つけ、残る一つの鍵もそれがあると思われる部屋の前まで来ていた。

「さて、ここか。」

 硬く重そうな扉を前に契が零す。

「最終決戦か?」

 もう終わりたいという思いを込めてフォルティが訊く。

 彼女にとって契に付いていくことは他のどんなことより難しいことだからだろう。

「多分な。」

 返ってきた言葉は彼女をホッとさせるものだった。


「じゃ、サクッと終わらせて来るか。」

 契はドアノブに手を掛け、不敵に笑った。



「…」

 扉を開けてみて、言葉を失った。

 眼前の光景を、敢えて一言で表すのなら“蟻の巣”という言葉が適当だろう。


 ボスの全体の姿はその巨大さ故に目には映らない。が、それはどうだって良い。

 問題はその取り巻きの数と大きさだ。


 その数は億を優に超えるだろう。

 百億…否、京か。

 とにかく数え切れない。


 また大きさも大きさだ。

 別に大きい訳ではない。寧ろ小さい。小さ過ぎる。掌にすっぽり収まってしまいそうだ。

 しかも契が感知出来ない程音が小さい。

 見た目はその小ささも相俟って、まあ可愛い。

 併し、これは数の暴力というものだろうか。正直キモい。


「…まあ、何とかなるっしょ。」

 何と呑気なことだろう。契らしいと言えばそうであるが。


「テラ、あれ頼む。」

「了解しました。」

 契が頼んだあれとはテラの固有技能『月精之加護』。


…半分忘れられていると思うので解説を。

『月精之加護』はテラだけがもつ固有技能。

 術者のパーティー全員の魔法の威力を満月時と同じ威力まで底上げする効果があり、 新月でも普段通りかそれ以上の威力で魔法を発動できるようになる。(2-6話参照)

 チートがかったスキルなので一日一回しか使えず、また時間も十分という制限がある。


※契は魔力がおかしいので新月でも(多少の制限はあるが)普通に魔法が使える。



 契は先ず、様子見を兼ねて『黒魔法』の上のランクの魔法を放った。

 併しそれがボス本体に当たることはなく、全て取り巻きが集まってそれを防ぐ。

 お陰で少しは取り巻きは減ったが、焼け石に水。殆ど意味がない。


「こりゃ想像以上だな。」

 契が今の感想を零す。

「まるで焼け石に水ッスね。」

「到底向こうに辿り着けそうにないなぁ。」

 メリス、レネーも続ける。


「どんな攻撃もまるで意味がないな。」

 全員が粗諦めモードになる。が、


「でも、どんなに熱い石でも、海の中に入れれば周りを蒸発させながらいずれ冷える。つまり量には勝てない。」

 という訳で

「全員、なんでも良いから同時に魔法を撃ってみて。」

 と、さらっと言ってみる。


…は? と。

 確か五人はそんな顔をしていた。

 それもそうだ。

 平常時ならまだしも、満月と同じ環境下で密集して魔法を使うと、互いに干渉しあってうまくいかないのだ。

 最悪は大爆発。


 だが、契が言うのならと、全員がそれぞれ違う呪文を唱える。

 そして契は全ての術式に意図的に干渉。持っている魔力の殆どをそれぞれに付け加え、無理矢理安定させた。

 膨れ上がった魔力は、軈て同じ魔力を含んでいることから合体。膨大な魔力の塊となった。


 その塊は部屋を埋め尽くさんばかりの大きさで、また強く虹色に輝いていた。


 それをボスめがけて投げると、先ず取り巻き共を軽く屠り蹴散らした後、本体に直撃。

 そのまま光と共に消滅した。


 床には三つ目の鍵が虚しく落ちていた。



 漸く揃った三つの鍵全てを使って扉を開けた。


「お疲れ様でした。皆様。」

 そこはどうやら外へと繋がっており、目の前にはこのダンジョンを造ったアルタナがいた。

「色々と言いたいことはあるが、取り敢えず寝たい。寝かせてくれ。」

 魔力の使いすぎで疲労が溜まり、契は一目も気にせず深い眠りに落ちていった─────



 目を覚ますと、懐かしい感じがした。

 そこはどこだっただろうか。

 確か、この無機的な建物の造りは…日本のものだ。


「(…に、日本…?!)」

 思わず契は跳ね起きる。

 どうやらここは病院みたいだ。

「(そうか…俺、交通事故にあって…)」

 そして無理に起き上がったので全身に痛みがある。

「…ッ…ァッ…」


 契が痛がっていると、隣に座って寝ていた看病していたらしい人が声で起きる。

「……ぁ…だ、大丈夫ですか?!」

 その女性は慌てながら契を寝かせ、事情を話し始めた。


 聞く限り、この人が救急車を呼んでくれて、どうなったのか心配だし気になるからと、ずっと看病してくれていたらしい。

 なんて好い人なんだ。

 何となく、テラに似ているな。なんて思いながらその女性の顔を見てみる。

 するとそこには─────……

…─────テラがいた。



┫■┣━┫□┣━┫■┣━┫□┣━┫■┣━┫□┣


 これにて本編完結です! お疲れ様でした!


 最後はまさかの夢オチです。

 さあ、このあとどうなったのでしょうねえ。

 ま、想像に任せますってことで。

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