2-15話 パーティーの招待状
あれから数日が経った。
いつも通り契はだらだらと過ごしていた。
彼曰く、王城の図書館にあった小説が面白いのが悪いとのことだ。
ところでテラはというと、部屋のドア付近で何やら作業をしているようだ。
何をしているかは契からは見ることが出来ないが、確かそこにはカレンダーがあった筈だ。音から推測するに、印をつけているのだろう。
何のまではわからないが。
小説を読みつつテラの作業を眺めていると、何者かがこの部屋へ早足で向かっている足音が聞こえる。足音の主は恐らくフォルティだろう。
ドアが急に開きそうなので、テラに警告する。
「テラ、多分ドアの近くにいない方が良いと思うぜ。痛い目に逢うよ。」
テラは振り返り、頭にはてなを浮かべるが、とりあえず従っておこうと下がろうとしたとき、ドアがノック無しで勢いよく開けられた。
逃げ遅れたテラが飛ばされたことは言うまでもない。
◆
「…すまない。」
フォルティはテラの前に正座をしていた。
その姿からは本気の反省の色が伺える。
フォルティのその様子にテラは、
「もう大丈夫ですから、契さんの『純白魔法』で腫れも痛みももうありませんから。」
と、もう気にしていないと伝える。
「ところで、また何かあったのか?」
契は話を変え、真剣な眼差しでフォルティに本題を問う。
「ああ。今度は"招待状"が来た。」
「は?」
"招待状"という言葉に、契は思わず聞き返した。
脅迫した奴が自分の下へ招待する理由がさっぱりわからないからだ。
「だが今回は差出人が違うらしい。その事はメリスに確認済だ。」
そしてフォルティは「実物もあるぞ」と言って背負っているカバンから一通の手紙を契に渡す。
受け取った瞬間、契は手紙に違和感を覚えた。
「"パーティーの招待状"…?」
契がフォルティから受け取った手紙のタイトルはそうだった。だが、契が訝しいと思ったのはそこではない。
「…俺宛て?!」
「そうだ。」
そう。手紙の宛て名は"陽谷契"であったのだ。
契は何だかよくわからないまま、とりあえず内容を読むことにした。
◆
契達はパーティーの会場と書かれていた所に来ていた。
だが、見た感じパーティー会場とは程遠い。
「"新月の日、陽が地平線と接するとき。祠の中心に来るいい。"、か。もっとストレートな言い方で良いのにねぇ。」
なんて愚痴ってみるが、まだ少し早かったらしく、契達以外の姿はない。
ここはョツァハニという街の外れにある、ちょっとした山。の山頂。
そこに契、テラ、ディオニル、メリス、レネー、フォルティの六人がいる。
暫くして、六人の目の前に全身を黒のマントで被った男性と思われる者が現れる。
「初めまして。アルタナ・コーダと申します。ョツァハニの領主です。」
その男は、軽い自己紹介をして一礼する。
「俺らの紹介は不要だろ? で、要件を聞こうか。」
契はアルタナと名乗った男を睨む。
アルタナは微笑し答える。
「簡単ですよ。このボクを楽しませてください。最近退屈しておりましてねぇ。」
アルタナの言葉に、五人は固まる。契だけは冷静だった。
「それは大変だなぁ。」
「共感していただけてなによりです。」
アルタナはまた一礼する。
「ステージは用意してごさいます。是非そこで踊っていただきたいのです。」
そしてアルタナは「さあどうぞこちらへ」と全員を誘導する。
誘導された場所は、ダンジョンだった。
もうそろそろ終わるんじゃよ。