2-13話 差出人不明の脅迫状
改めて二国が併合して連邦へと変わった日からもう半月が経つ。
二国がスポンサーとなって結成されたアイドルグループは《ポンス》という名前がつけられたという。
二日前に行われたライブは大成功に終わり、結成からたった半月で世界中から注目されるほどに成り上がっていた。
...ところで契はどうしているかというと、
「動かなくていい、ってサイコー...」
ただのニートに成り下がっていた。
「いい加減仕事しませんかー?」
テラの声だ。だがその声は鋭さを失っている。
原因はその体勢にある。
「…明日から本気出すのポーズで言われてもなあ。」
明日から本気出すのポーズとは、俯せで顔だけ前を向いている姿勢のことである。
契は、テラも駄目人間に近づいて来たなと思い始めていた。
窓から射す光が暖かい。耳をすませば鳥の鳴き声が聞こえる。
今日もいい日だ。
契はうとうと、夢へと誘われていった。
「いるか、契!」
ドアがバンと開き、ある女性が飛び込んで来る。
その衝撃で契とテラはベッドから転げ落ちる。
飛び込んで来たのはフォルティ。彼女も契と同じ騎士だ。
どうやら急いで来たらしく、やや息が切れている。
「はいはい、いるよぉ。急にどうしたのぉ?」
寝る寸前で叩き起こされ、不愉快極まるといった顔の契が訊く。
「大変だ。」
「睡眠時間を削られることよりも?」
「一大事だ。」
「そう。」
と返事をして、契はまた寝ようとする。
「ちょっ、話だけでも聞いてくれ。」
契を起こそうとするが、一切起きる気配がないので、フォルティはテラに助けを求めた。
テラは契に近づくと、耳元でこう囁いた。
「契さん、お仕事ですよ。」
刹那、契は部屋の隅に体育座りになる。
それは『テレポート』か。
否。
テレポートしたのかと思うような速さで移動したのだ。
文字通りの瞬間移動だ。
目の前で起こった光景にフォルティは「大丈夫なのか...?」と心配するが、テラは問題ないと言う。
「お...お願いです...何でもしますから...二度としないでください....」
震えながら紡がれたその契の言葉は、もはや懇願だった。
その様子を見てもう一度フォルティは「大丈夫なのか...?」と心配するが、テラは問題ないという。
ついでにテラは、契が墓穴を掘ったことを聞き逃さなかった。
「今、"何でもする"って言いましたよね?」
「.........はい。ですから、もう二度としないと約束していただけますか...?」
「考えておきます。」
◆
「これは...多分こっちッスね。」
今回のクエストは、簡単に言えば人探しだ。
手紙の送り主を特定しろ。
最初聞いた時は無理ゲーだろと思ったが、メリスが任せろと言うのでそれに甘えている。
手紙と言っても、普通の手紙ではない。
脅迫状だ。
フォルティは内容について全く知らされていないらしくわからなかったが、移動中に玉座の間の前を通りがかったときに盗み聞きしたところ、脅迫状がどうとかいう会話が聞こえたのだ。
メリスはどのようにして送り主を特定しているかというと、ワーエルフだけが持つ能力『魔力追跡』を使っているのだ。
『魔力追跡』はスキルではないので、契がコピーすることは不可能。ワービーストの優れた五感とエルフの魔力観察力が合わさって初めて可能になるからだ。
「ここからッスね。」
しばらくメリスに付いて歩いていると、ある屋敷に辿り着いた。
そこは...
「そこは…どこ?」
「次回まで秘密です。」