2-12話 自宅以外の警備
「...意外と集まるものじゃな。」
募集をはじめてから二週間が経った。
応募総数は凡そ八千。さて、これをどう捌いたらいいのだろうか。
「は、八千!?」
「そうなんじゃ。」
ディオニルの言った言葉に驚いた契の声が城内に響いた。
グレイスから帰ってきてもう一週間が経つ。
その間に契は正式に騎士に任命され、またテラ達も契の従者として王城に住むことになっていた。
「思った以上だな。」
「多すぎてどう絞ったらいいかわからんのじゃ。」
「いや、絞るのはそんなに難しくはないぜ。」
それを聞いてディオニルの目に光が戻る。
「そ、それは本当か?!」
「...て、手順は、だがな。」
契は人差し指を立てて「先ず」と手順を説明していく。
「書類審査。確か、名前、年齢、種族、特技、自己紹介、意気込みを書けっていう風に応募かけたんだろ? 記入漏れがあったらとりあえず不合格。多分これで二千は減るを思う。で、残った中で次のステップだ。」
契は中指を立てて続ける。
「書類審査その二。パッとしないやつとかを落とす。これでだいたい六分の一くらいまで減らしたい。」
そして薬指を立てて続ける。
「一般審査。残った人を全員城に呼ぶ。そして城を一般開放する。来てくれた人たちにじっくり審査してもらう。城の出口で集計する。上位十位までの人が合格ってことでどうだ?」
契の説明にディオニルは拍手を送る。
「うむ。異議なし、じゃ。大切なのは主催者側より観客側の意見じゃしの。」
◆
「......」
契の言った通りにやって見たものの、そう簡単に数が減ることはなかった。
負の感情の色が室内を染めるなか、響いたのはノック音だった。
「失礼します。どうだ、うまくやって...る...か......?」
室内の異様な空気に契は。
なかなか絞れない苛立ちに加え軽度の不眠によってできたクマが、よりヤバいオーラを出している。
それはまるでテメーも手伝えやコラと言っているようで。
「...」
契は無言で椅子に座り作業を手伝いはじめた。
◆
あれからなんとか千人まで絞ることができた。
ので全員をお城に招待。
「賑やかだな。」
それもそのはず。今城内には凡そ三万人が居る。
「これだけ人が集まると、警備が大変そうですね。」
「まあな。現に二千人体制での警備が行われている。」
その警備員の量に思わずテラは苦笑い。
「────!」
約百メートル先から聞こえた喧嘩の声に契が反応する。
「仕事だ。行くぞ。」
急に手を引かれ狼狽えるテラは放っといて契は声の方へと急ぐ。
「あの、どうかされました?」
そこにいたのはアイドルのファンと思われる男二人組だった。
「こいつユウナちゃんが絶対可愛いのにミティットちゃんマジ萌え~とか言うんだ。」
「ユウナぁ? それはないだろ。やっぱミティットちゃんが一番だ。」
「んだとぉ?」
契はこのやりとりに少し日本の懐かしさを感じた。
「まあまあ、二人の言い分はよくわかる。だがな、こういうトラブルがあるとユウナちゃんやミティットちゃんにも迷惑が掛かっちまう。ここはさ、二人のいいところを認めあって二人とも応援しようぜ。同率一位ってことで。」
「そ、それなら...」
「いいか...」
なんというか、あっさり終わった。
「でもま、ミティットちゃんの方がちょっと上だけどな。」
「いや、そこは譲れないものがある。」
そう言って二人はガハハと笑いながらどこかへ行った。
「なんか最終的に仲良くなってましたね。」
「雨降って地固まるって言うしな。」
今日の仕事は長くなりそうだ。
「実は俺ニートじゃ無かったことがあるんだ。」
「そ、そうだったんですか?!」
「そんなに驚くかよ...」
来週はお休みです。代わりに修学旅行楽しんできます!w