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2-6話 元魔城にて

「久しぶりだな、ヴァルア。」

 そこにいたのは、数日前まで仲間だったヴァルアだった。

「悪いが玉座には既に一人座ってんだわ。どうしても、ってんなら。」

 契は剣を構える。

「いいでしょう。やりますか。」



「くッ...!」

「大丈夫ですか?!」

 突然倒れかけた契にテラが心配そうに声を掛ける。

「ああ、大丈夫だ。が、ちょっとばかし良くないことが起きたらしい。探索を中止しよう。」

 なんのことかはわからないが、契が言うからにはそうなのだろうと全員は頷く。


「『テレポート』!」

 城内に契の声が響いた。

「勝手に邪魔するぜ。もう一人の俺。」

 ヴァルア達は契が二人いることに驚いているが、契は、んなこたぁどうだっていいとでも言いたげに城内を見渡してこう言った。

「いつまで寝てんだディオニル。どっこも体調悪くねぇのに。」

「「はぇ?!」」

 気が抜けたような声を出す一同に、だがディオニルはさっと立ち上がり

「バレとったか。呼び出した召喚獣越しでも、演技は無理じゃったか。」

「いや。その前から気付いてたんだがな。だって夜中まで続いた熱いバトルの途中で寝落ちかました奴が翌朝風邪って。ちょっと無理があるわ。その上新月なのにテレポートで帰れるとか元気そのものじゃねぇか。」

 後半笑いながらそう言った契にディオニルもつられて笑いかけるが、そういう空気を知らないヴァルアが剣を構え契に突進し、しかし契は

「『ルスリア』! 行けヴァルア!お仲間さんに攻撃だッ!」

 簡単に攻撃を躱した上で催淫呪文(おとこのロマン)を掛け、体の向きを変えてまほうのじゅもんを唱える。即ち───

 あいつらを食べろ(性的な意味で)! とッ...!

 もちろんここでヤらせる気はない。

 襲い掛かる寸前で解除する。焦らしプレイってやつだ。

「あ、あれ? ちょちょッ、ストーップ!」

 新月だから魔法がうまく制御できないことを忘れて調子こいた(ばか)の所為で危うく十八禁になりかけたが、そうなる一涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)秒程前に効果が切れ、理性を取り戻したヴァルアが羞恥地獄(しゅうちプレイ)を味わい顔を夕陽のように赤くして怒りに任せ剣を振るう。

 まあ当然のように当たる筈もなく、剣を躱しつつ隙あらば反撃すらしていた契は、ヴァルアに素敵な助言をする。

「そうそう、忘れ物だよ。自称魔王候補さん♪」


 その言葉にヴァルアは腰からもう一本剣を取りだし、もう一人の契の攻撃の防御になんとか成功する。



 一方、契のお仲間の四人は...

「あぅッ!」

「レネーさん大丈夫ですか?!」

 四対三十で戦闘(けんか)していた。


──前衛二人はかなり体力を消耗している。

 お姉ちゃんの魔力も底が見えてきている。

 私は新月の所為で魔法が使えない。

 できればこれだけは秘密にしたかったがこの際仕方ない。

 私の固有技能『月精之加護』──


 味方の危機を感じたテラは、ずっと隠し続けてきた固有技能の発動を決心した。

「...『月精之加護』ッ!」


『月精之加護』

 術者のパーティー全員の魔法の威力を満月時と同じ威力まで底上げする固有技能。

 新月でも普段通りかそれ以上の魔法を発動できるようになる。


 そしてテラはこう唱えた

「『レクペロ・コンプレート』!」


───数瞬、城内を白い光が覆う。


 その後魔法の詠唱の声が飛び交う。

 テラの固有技能と魔法のおかげで数押しされていた戦況が逆転した。

「ほな、反撃といこか。」



 もう片方の戦場は凄いことになっていた。

「後でテラにお礼言わないと。」

 テラの固有技能のおかげで魔力の消費が減った上、体力と魔力が全回復したので、契は遊び半分で『召喚』スキルを乱用。

 呼び出された召喚獣は二十体を超え、もはやヴァルアに勝ち目は無くなっていた。

「どうする? まだ()るかい?」

「くッ...降参だ。総員撤退せよ!」

「そうだヴァルア、弱者が強者に勝つ術を教えてやるよ。」

 あんたなかなかやるなと言いたげな顔で契は言った。

「正面から戦わない、だ。久しぶりに楽しかった。またやろうぜ。」

「対人戦のときの契さんの顔って何か黒いですよね。」

「モンスター相手より楽すぎて笑いを堪えてるんだよ。」


次回 光の祠・再探索



ずっと回復呪文を『レコペロ』と書いてきましたが、正しくは『レクペロ』です。

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