2話 クエスト受けてみた。
募集開始からおよそ30分が経った頃、2人の男女が現れた。
男の方はツンツン頭で、腰には木刀を下げている。年齢は中~高校生位だろうか。少し小柄で身長は163cmあたりだ。
女の方は肩までかかる長髪で、杖を持っている。男の方より2~3歳若く見える。身長は150cmそこそこだ。
「あの、まだメンバーの募集はしてますか?」
「はい。してますよ。」
俺はとりあえず2人を座らせ、面接を行った。
まあ、テラしか仲間がいない今は誰でも採用なんだが。
軽い自己紹介の後、簡単に話を聴いた。
2人はさっきギルドに入ったばかりで、仲間を探していたところ、募集の貼り紙を見つけて声をかけてきたそうだ。
手っ取り早く実力を確認するため、それぞれのスコアを見せてもらった。
──────────────────────────────
名前 : ヴァルク・コーダ
性別 : 男
レベル : 1
クラス : 無所属
年齢 : 15
種族 : 人間
ステータス
体力 : 74 C+
筋力 : 107 B
攻撃力 : 120 B
防御力 : 85 C+
魔力 : 90 C+
魔力容量: 50 C
知力 : 175 B
総合評価: B
スキル
ポイント 13
・16 剣技 Lv7 (Max Lv10)
討伐した魔物
-----
──────────────────────────────
──────────────────────────────
名前 : ヴァルア・コーダ
性別 : 女
レベル : 1
クラス : 無所属
年齢 : 13
種族 : 人間
ステータス
体力 : 70 C+
筋力 : 82 C+
攻撃力 : 100 C+
防御力 : 75 C+
魔力 : 112 B
魔力容量: 140 B
知力 : 162 B
総合評価: B
スキル
ポイント 5
・17 黒魔法 Lv8 (Max Lv10)
討伐した魔物
-----
──────────────────────────────
……普通はレベル1なんてこんなもんだ。
俺が強すぎるだけだ。
とりあえずこの2人は採用。
名前からして兄妹だろう。
「よし。今日からよろしくね。ヴァルク、ヴァルア。」
「「よろしくお願いします。」」
「じゃあ、握手をしようか。」
そう言って俺は両手を差し出す。
そして2人が手を握る。
体に力がみなぎる。
の後に猛烈な吐き気が襲う。
耐えろ俺!
この2人にバレる訳にはいかない。テラにその事をバラしてはならないと言われていた。
しばらくして俺は平常に戻った。
「あの、契さんのスコアを見ても良いですか?」
「良いけど……」
と言って俺は2人にスコアを見せる。
さっきこの2人と握手をしたからかなりの数値になっていることだろう。
……そして俺達4人は驚愕する。
これはチートやだ。どう考えてもチーターだ。
どう言い訳するか。どう誤魔化すか。いっそ本当の事を話すべきか。
そんな葛藤の中、先に口を開いたのはヴァルアだった。
「契さんは凄いんだね。」
そう、確かに凄い。だがこれはチートでしかない。
でも、満面の笑みでそう言われてしまったらもう..そんなこと....どうでもよく.......
ヴァルクに関しては依然口が開いている。
チーターとしか思えない俺のスコアがこれだ。
──────────────────────────────
名前 : 陽谷 契
性別 : 男
レベル : 1
クラス : 無所属
年齢 : 21
種族 : 人間
ステータス
体力 : 464 A
筋力 : 403 A
攻撃力 : 656 S
防御力 : 520 A+
魔力 : 1061 Full
魔力容量: 1085 Full
知力 : 977 S+
総合評価: S+
スキル
ポイント 20
・--- 飛翔 習得済
・19 白魔法 Lv6 (Max Lv8)
・--- 黒魔法 習得済
・15 催眠術 Lv5 (Max Lv9)
・--- 状態異常耐性 習得済
・--- 千里眼 習得済
・25 暗視 Lv8 (Max Lv10)
・03 心理眼 Lv1 (Max Lv7)
・--- 再現 習得済
・15 剣技 Lv7 (Max Lv10)
討伐した魔物
-----
──────────────────────────────
しかし俺のスコアにはあり得ない点が1つある。
……レベル1のステータスにしては数値が高過ぎる、という事ではなく、
"魔力"と"魔力容量"の欄の数値が1000を超えている。
……レベル1でこのステータスはおかしい、という事ではなく、
通常ならば、ステータスの数値が1000を超えると、"Full"と表示されそれ以上は伸びないのだが、俺のスコアには数値の横に"Full"と表示されている。
元々この世界の住人でない俺は少し異質な存在なんだろうか。
◆
難しい事は後から考えるとして、今は街の近くの森に居る。
軽く馴れ合った俺達はクエストを受けることにした。
"薬草採取の際の護衛 レベル、クラス、総合評価不問 報酬50アーク"
なかなか美味しいクエストだ。森は魔物があまり強くない。
それにこの世界では7アークもあれば1日過ごせる。
1食およそ1アーク、宿が3アーク、銭湯が1アーク。
とにかく、色々なものが安いのだ。
……なかなか魔物が出て来ないので、鼻歌歌いながら歩いていると、
「契さん、それって何の歌ですか?」ヴァルクの声だ。
「これは俺の産まれた国の歌だよ。」
「……?ヴァルア、国ってここ以外にもあったっけ?」
「兄ちゃん何言ってんの?国と言えばここ、"ウマノ"か魔物の国"フォレット"しかないよ。」
「だよね。」
??
2つしか国がない?
テラの情報穴が多いが、なぜだ?なぜこの2人から情報が来なかった?
確かにさっき握手をした。ステータスは加算されていたし。2人の思い出も知っている。
ではなぜ?
2人同時にしたから?
でもステータスはしっかり2人分加算されている。
何か条件が?
吸収できる情報とできない情報では何が違うだろうか。
条件によってはテラからの情報に穴があるのも説明がつく。
……難しいことは後から考えよう。
今は取り敢えずそう思うことにした。
◆
無事にクエストは終わった。
途中リス型の魔物と戦闘になったが、俺の魔法攻撃で一瞬で片付いた。
という訳で報酬50アーク。山分けして1人12アーク。残り2アークはコーダ兄妹に譲った。
宿取った後、俺は昼考えていた事をテラに訊いてみたが、"私にも分かりません"だそうだ。
無理もない。何が分からないのかを知らないから考えることすらできないのだ。
テラともう1度握手してみても意味なし、だった。
……静かな空間に空気を読まない俺の腹の虫の声が響く。
「飯食わない?腹へって。」
「そうですね。私もお腹空きました。」
俺達は1階に向かう。
夕食時ということもあってか店内は賑わっている。
適当な席につき、揃って蛙の唐揚げを注文した。
運ばれて来た唐揚げにかぶり付く。
うまい。が、何か物足りない。
……醤油だ!
塩と胡椒だけのシンプルな味付けでこれはこれでうまいが、醤油の塩味も欲しい。
周りを見てみても醤油や味噌といった、日本の調味料を使った料理が見当たらない。
きっとここには日本の物がほぼなにも無い。
丸儲けの匂いがする。
「テラ、金が集まりそうな話を思いついたんだが。」
「……どんなのですか?」
「ここには日本の調味料が無い。」
「つまり……?」
「作って売れば儲けられる。と思う。」
「なるほど。ちなみに作り方分かりますか?」
「勿論。しかし材料があるか。」
「材料はありますよ。地球で採れる素材は全てここでも採れます。」
「じゃあ、明日材料を集めて準備するか。」
「はい!」
と、言う訳で俺達は資金獲得兼収入安定化のために調味料を作ることになった。
「この国って、食に関して乏しいよな。」
「今は戦争中ですから、そこまで手が回らないんですよ。」
「俺はだからこそ大事だと思うんだけど。」
「?」
次回 強敵と遊んでみた。
調味料の件に大した意味はありませんよ。