2-4話 王都にて
焰の祠で無事にクリスタルを三個回収した俺達は、一度王都に帰還した。
今日は王都の様子が少しおかしい。
いつもならもっと賑やかだった筈だ。
人気もまばらで、街に元気がないように見える。例えるなら、深夜二時頃の渋谷という表現が合うだろうか。
とりあえず俺達はお城に向かった。
◆
王様は内乱を押さえる為に、戦場にいるらしい。
たった一日で魔族との戦争の終結をさせたんだ。そりゃもちろん反発もあるだろう。
特に魔物を利用していた貴族は、もう激おこだろう。
「よし、乗り込むぞ。」
「「はい?」」
「何にです?」
「もちろん、戦争に、だ。」
ということで、今契一向は戦場にいる訳だが....
「...つまんね。話にならん。」
「契さんは戦場を一体なんだと思っていたんですか?」
敵が思ってた以上に雑魚い。
「これ本当に兵士だよな?相手にならんのだが。」
「お主が強すぎるだけじゃろ。ちなみに今いくつじゃ?」
「筋力と攻撃力、魔力、魔力容量が8000超えた。体力、防御力、あと知力ももう少しでそうなる。でもレベルは未だ31。スキルの総数は26。軽くこんなもん。」
「「はああ?!」」
そのチート性能に、契を除くその場の全員が──もちろん敵兵も──驚いた。
そして契は、よし──と何かを決めたようにこう言った。
「大将のところにいこう。ガチで暇だしつまらないし。」
そう言い残してとっとと文字通り飛び立っていった。
「待ってくださいよ!」「どこへ行こうとしてんッスか?!」
と言いながら次々に飛び立っていく一向を、さっきまで戦っていた兵士達は、ただただ呆然と眺めていた。
◆
「敵襲ーッ!」
「黒魔隊、弓兵隊!直ちに撃ち落とせ!」
矢をはじめ、火の玉や稲妻などが俺達に飛んできて、あたる直前に障壁に弾かれる。
「手厚いご歓迎をどうも。あんたらの親玉、ジークに話があるんだけど。って言っても、どうせ通してくれないんだろうからいいよ。『ツト・トラスペアレント』」
「こんな昼間から酒飲んでふんぞりかえってる偉そうなおっさん。ちょっとゲームしないか?」
「何者だ!?」
透明化魔法と飛翔スキルを組み合わせ姿を見せずに音もなく、俺達はとある貴族のおっさんのところへ。
ジーク=マエストーソ
南にある街、メリディーの知事であるが、彼についていい噂はあまり聞かない。
魔族との戦費を口実に住人から金を巻き上げたり、捕らえた魔族と囚人を殺し合わせ見世物にしたりと、あまりいい性格とは言えない。
◇
「ただの暇人だよ。酒飲める余裕があんだし、ゲームくらいしてくれるだろ?」
と言って将棋盤を取りだし並べはじめる。
「いいだろう。」
「始める前に言っておくね。この勝負に俺が勝ったら、 "降伏" してね♥」
ワシが負けるなど万に一つもない。こんな条件聞き流しても問題はない。
「かまわぬ。で、ワシが勝ったら?」
「俺達がそっちの戦力になってあげるよ。ちなみにだけど俺、フォルティよりも強いよ。」
あのフォルティよりもだと?それはつまり、この国で一番強いことになる。
「証拠はあるのか?」
「たとえばそこの石をあの木に投げると、」
木は爆音と土煙をあげて粉々になった。
「これでいい?」
「...問題ない。」
◇◆
「な、なぜ勝てぬ...!」
零勝十敗のジークが言った。
ここまで、先手後手入れ替えで計十局したが、全ての局面に於いて俺がジークを完封しきっている。
ちなみに俺は勝つ度に、香落ち→角落ち→飛落ち→飛香落ち→二枚落ち→四枚落ち→六枚落ち→八枚落ち、最後の十戦目は十枚落ちとかなりのハンデをつけたのだが、ジークが弱すぎるのか俺が強すぎるのか。でも確かジークって半年に一回王都で開催される大会の覇者だった気がするのだが。今度参加してみよう。
「というわけで、さっき俺が言ったこと守ってね☆」
「クッ....」
「守・っ・て・ね♥」
俺が石を構えると、慌てて「わかったッ!降伏する!」と言って退却命令を出していた。
「さてと、俺は王様に報告かな。」
◆
報告を適当に済ませ、俺達は光の祠近くの街にやって来た。
そこの宿屋でディオニルと対局中なのだが...
「はい、詰み。」
「なッ...!」
「もう寝ていい?」
「だめじゃ!もう一回じゃ!」
その夜は、月が空高く輝いていた。
「伊達でオンライン将棋ゲーでトップに居座り続けてないんだなー。はい詰み。」
「あ、またやられたッ!」
次回 光の祠
そろそろギャグ成分を補給しないとなー