2-3話 焰の祠・最深部
赤いクリスタルを手に入れた部屋の少し奥。
「これまた面倒そうな...」
そこにあったもの、それは
「巨大なパズルの様ですね。」
─────パズル
それはこの俺、陽谷契の嫌いなものランキング殿堂入りを果たした類いである。
パズルか労働かどちらか選べと言われれば、迷わず労働と答えるであろう。
だがこれをやらなければ先へは進めない。
巨大なパズルの様なそれは100近くある無地の石板から成るらしく、今すぐにでも逃げ出したい気分だ。いや、今すぐ逃げよう───
「ッガ...!」
───として見えない壁にぶつかる。
「さっきの分は返しといたぞい、レネー。」
「おーきに! ディーはん!」
「ッ、畜生...」
「で、どう解くんやろねぇ。」
そこに置いてある壁と同じデザインの石板をどう使って完成させるのか。
俺はともかく、他の3人もきょとんとしている、が────
「とりあえず角から置いていきましょう。」
自信あり気に胸を張ってそう言ったテラに全員の視線が集まる。
「パズルなら私の得意分野です。任せてください。」
◇
カップラーメンも出来ない時間で、面白くない程簡単にパズルを解いてしまったテラを羨ましく思ったが、それはさておき。
パズルは完成した直後、扉の様なものに変化し、俺達はそれを開けて先へ進んだ訳だが、
「またか。」
そう。またである。
ついでに今度は石板が倍くらいに増えている。でも、
「まだ余裕です。」
と一言。せっせと組み立て始めた。
◇◇
さて問題だ。これは何回目のパズルだろうか。
正解は、10回目だ。
回数だけで考えたら──辛いが──大したことは無さそうだ。
しかし、回数が増える毎に石板の数が増えていき、現在10回目の石板の数が、 102400個。
石板は2倍ずつ増えて行くらしく、はじめの5回まではなんとかテラは正気でいられたようだが、もうテラだけでなくメリスやディオニルまでもが目の輝きを失っている。
あはは~星が廻ってますぅ~なんて声も聞こえてきた。
考えてみて欲しい。
何も描かれていない100ピース以上のパズルをひたすら10回組み立てろ、というのが拷問でないとしたら何であろうかと。
しかもピースは100個、200個、400個、800個、1600個...という調子で回を追う毎に倍になるという鬼畜仕様。もはや声も出ない。
ところで、
「レネー、何してるの?」
1人黙々となにかを続ける獣人からは何も返事はない。
近づいてみると、そこには完成したパズルと橙色のクリスタルがあった。
「あと...は...任せ...た...」
「は?!」
◆
頭から湯気を出してぶっ倒れたレネーをおぶり、祠を更に進む。
どうやらそこは祠の最深部らしい。壁に囲まれていて何もない。が、
「...なにかが上から降って来てるんだが?」
そこに天井はなく、日の光が射している。日の光と一緒におぞましいものも見え、それが降って来ているのが目と音で分かる。
床の影がだんだん大きく、だんだん濃くなっていき、ついにそれは姿を現した。
「な、なんスか、これ...?!」
そこにいたのは小さな赤い氷龍だった。
「え?、氷龍を倒すためにはちっちゃい氷龍を倒さないといけないわけ?」
マジかーと苦笑いしつつ、どう戦うかを考える。
まずは情報を集める。
氷龍と同じと仮定すると魔法攻撃は効かないが、こいつはどうだろうか。
検証1 魔法攻撃
「『グランディナーレ』!」
大きな雹が次々に赤い氷龍に当たる。どうやら効いているらしい。
ただ、魔力5000超えの怪物が放った魔法なのに、そこまでダメージを喰らってる様子はない。要するに "効くには効くが大して効かない" と言ったところだろう。
検証2 物理攻撃
魔法が効きづらいとなると、残る手段は限られる。
俺は腰に提げている2本のダガーで赤い氷龍を斬る。
魔法よりは効いているように思える。
ところで、額の黄橙色のクリスタルの裏は氷龍同様弱点なのだろうか。
隠し持っている投げナイフをそこ目掛けて飛ばす。
ナイフはクリスタルに弾かれるが、なんとクリスタルが額から外れ落ちる。
もう一度ナイフをそこに投げる。
ナイフは弧を描いて逆鱗に命中。が、特にこれといった反応がない。
色々わかったところで、総攻撃開始だ。
「全員『飛翔』用意! レネー、メリス、俺は氷龍を物理攻撃、テラ、ディオニルは援護と状況管理をたのむ!」
さっき落ちたクリスタルを回収しつつ一斉に氷龍 擬きを叩く。
◆
残るクリスタルは9個。内のここで採れるクリスタルは3つ全て回収済。
他のクリスタルを入手するため、俺達は北の光の祠へ向かった。
「やっとここを出られますね。」
「ああ。お疲れ。」
「もう二度と行きたくないですぅ。」
次回 王都にて