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第一部終演

 街に帰った俺達三人はメリスとレネーに王城でのことを話した。

 明日また王城に戻ることも。氷龍を屠ることになったことも。


 ...やっと最初の目標が達成できる。

 ──戦争の講和──

 初めのうちはコミュ障引きニートにそんなことお願いするとか鬼かよ、とか思ってたけど。気がつけばあと一歩で達成できるじゃんか。

「あの、契さん。少し良いですか?」

 思い出に浸っていた俺をテラが呼び戻す。

「ん? なに?」

「実はですね? 『テレポート』するときに契さんは私の手を握りますよね? その時に、契さんのものと思われる記憶が私に流れてきたんですよ。これってどういうことなんでしょう。」

 俺ってばそんなこともできたのか。記憶を貰うだけでなく渡せたのか。

「ちなみにその記憶ってどんなの?」

「座標でしょうか。場所は...この街のギルド本部付近ですね。」

 『テレポート』を使うとき、移動先の座標を強く思い浮かべる必要がある。

 ...強く思い浮かべていることが、相手に伝わる? それって───つまり───

「テラ、ちょっといいか? 手、出してくれ。」

「こうですか?」

 俺はテラの手を握り、『純白魔法』スキルを強く思い浮かべる。

「あ、頭がっ!」

 俺は半分慣れつつある痛みだが、テラにとっては激痛だろう。

「ちょっと我慢しろ!」


───


「一回自分のスコアを見てみて。」

「あ、『純白魔法』?!」

「「え?!」」

 思った通り。俺は今まで、握手した相手の情報を受けとることでステータスも上がるしスキルも習得できる、と仮定していた。ならば、同じように情報を渡すことでステータスも上げられるしスキルも習得させられることもできるのだ。その確証を今得た。俺のチートの鍵は "情報" か。でも多分一度に受け渡しできる情報量には限りがあるのだろう。だから完全には記憶を貰えないんだ。これならいつぞやの記憶の欠陥も納得がいく。

「試しに何か使ってみて。」

「...『フラッシュ・パー・セコンジューレ・イル・ブリオ』!」

「「ちょ、お前ッ!」全員目ぇ瞑れ!」

 その呪文に反応出来たのは俺とディオニルくらいだった。


 今テラが使ったのは、通称 "夜払い" 。辺りを夜でも昼と同じくらい明るく照らす呪文。直視すれば目が焼ける。

 不幸にも、メリスとレネーはそれを直視してしまった。なので...

「「目がああああああ!!」」

「『ツト・テュルーマ・ディ・リパラズィオン』! これで大分楽になったろ。」

「あ、ありがとうございますぅ!」

 よぉしテラ、お説教タイムだ。まずは.....



 翌日


「ああああああああああ!!寝坊したああああああ!!」

 午前10時頃、宿屋の一室から叫び声が聞こえてきた。

 声の主は黒髪でダルグリーン色のジャージを着た男性、陽谷契である。

「何で今日に限ってッ!」

 今日の正午、王城で重要なイベントがある。

 重要なイベントとはつまり、戦争の講和。彼が日本から飛ばされてきた理由でもある。それでも彼は寝坊した。


 だがまだ焦る時ではない。まだ二時間ある。

 まずは朝ごはんを食べよう。空腹でお腹が痛い。

 俺は一階へ降りた。


 いつも通り酒場は賑やかだ。朝から酒を飲んでいる(やから)やテーブルゲームをしている輩の笑い声やクエストの思い出話等が絶え間なく聞こえてくる。そんな楽しい雰囲気の中、食事ができるここを気に入っている。

 そんなことを考えていると、注文した料理が運ばれてきた。

 お気に入りの蛙の唐揚げ(マヨネーズ付き)を頬張る。昨日クオラに紹介した醤油の味が少しする。早速使ってくれたらしい。

 とても白飯が欲しくなる味だ。大変美味である。

 ゆっくりと食事をしたのは久し振りだな、と思っていると、ふと、あることを思い出す。

「そういえば、あいつらどこ行ったんだろ?」



「『千里眼』っと。」

 俺は今、街の上空300mくらいのところを飛んでいる。ここなら街全体が見渡せる。


 街の北西部に見覚えのある人影を4人発見。座標(6741,7196)へ急行する。



「あ、おはようございます。契さん。」

「おはよう。まさか今日に限って寝坊するとは思わなかったよ。お得意の "目潰し魔法" で起こしてくれてよかったのに。」

「あまりにも気持ち良さそうに寝られてたので。」

「ところで、何してるの?」

「暇潰し(さんぽ)じゃ。街中を歩いて廻ってたんじゃよ。」

 会話中の3人を他所に、そんなことより、という顔で俺を見ている獣人2人。

 そういえば2人は俺が『飛翔』スキル使えることを知らなかったっけか。 ───あれ? 確かダンジョンを緊急脱出したときに2人の前で使った気が...───

「ん? ああ、この羽?」

 2人は頷く。

「言ってなかったっけ? 俺『飛翔』スキル持ちってこと。」

 そう言って俺はスコアを見せる。

──────────────────────────────

種族 : 人間


スキル

・---   飛翔     習得済

──────────────────────────────

 2人はとても驚いた顔をしている。

 それもそのはず。普通の人間は『飛翔』スキルを習得できない。『飛翔』スキルは妖精種専用のスキルだからだ。


 もうそろそろ俺の体質のことを話してもいいかな?とテラの方を見る。

「えっと、実はな......」


「.....ということなんだ。」

「なるほど、そういうことだったんッスね。」

「そらぁ凄いなぁ。」


「でさ、そろそろ時間だし、城へいくか。」



 王城・王の間

 もうすぐ対談が始まる。


 始まる前に、ディオニルには王の情報を入れて置いた。

「どういう風に話をまとめたらいいのじゃ?」

「お互いに利益が出る形で。」


 王が入って来た。

 もう始まるらしい。

「固っ苦しい挨拶は抜きにして、早速始めよう。」


◆───◆二時間後◆───◆


 なんとかうまくまとまった。

講和の条件

○人類側から魔族側へ

 ・資源の提供     木材、石材等の永久的な提供

 ・領土の提供     アクアルム、プレマフォスト、レリトの領土の譲渡


○魔族側から人類側へ

 ・友好関係の構築   敵対関係の修復

 ・居住権の獲得    人類、魔族の双方の領地における双方の居住の許可

 ・魔族の捕虜の解放  戦争時の捕らえられた魔族の解放


 大きなのはこの5つだ。この条約を締結する内容の書類に、両者がサインをした。

 これにて第一目標達成だ。

「第一目標達成!!」

「お疲れ様でした。そして次は第二目標ですね。」

「氷龍討伐、か。」


次回 開幕 ──ノーマルスタート──



次回から二章突入です!

一番重要な対談の場面が手抜き、って言うの禁止。

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― 新着の感想 ―
[一言] 奴隷解放って戦争で勝ったとかならいいけど、 決まりました的なのは、奴隷の持ち主が反発したり、 色々と言う事聞かない場合が多い。 生活の利益に関する事は皆頑固だからね。 仲間には全員飛翔を渡せ…
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