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10話 仲良くなりたい

――――数十分前。


「……セイン様、一つお願いがございます」


 そう切り出したエーデル王女の提案に、難色を示したのはクラウド王子だった。


「私と一緒にいてはエーデル様も変な目で見られてしまいます」

「あら、そのように見られるのには慣れております。それに、一人より二人でいる方がどれ程心強いかは知っておりますから」

「しかし……」


 クラウド王子が言葉を続けようとすると、エーデル王女は自分の人差し指をクラウド王子の唇に触れ、言葉を止める。驚いているクラウド王子に満足そうに微笑むと、エーデル王女はセイン王子と向き直った。


「セイン様。一緒にいて下さいましてありがとうございます。私のことはもう心配いりません。エリー様の所へ行って差し上げてください」

「エーデル様……」


 エーデル王女はなかなか頷かない二人を強引に納得させて、セイン王子をエリー王女の元に向かわせた。


「ほ……本当に良かったのですか?」

「あら、これは良いことしかないのですよ。クラウド様は一人ではなくなるし、セイン様とエリー様は愛する人と一緒に過ごせるのですから」


 エーデル王女はにこりと笑うと、自分より少し背の低いクラウド王子の腕を取り、中央に向かって歩き出す。それはとても堂々とした姿だった。


「エ、エーデル様にとって……良いことはないのですか?」


 周りからの視線が突き刺さり、少し怯えながら歩くクラウド王子はエーデル王女に声をかけた。セイン王子より自分といるメリットを考えてみたが、情けないことに何も見つからない。


「……あ、見てください。このツリーはとても素敵ですわね」


 ホール内のクリスマスツリーの前に立ち、エーデル王女は見上げた。答えをもらえぬままクラウド王子も同じように見上げてみる。


「……エリー様」

「え?」


 よく聞き取れなかったエーデル王女の声に、クラウド王子は聞き返した。エーデル王女は困ったように笑う。


「どうしたら、エリー様と仲良くなれるかしら?」




 ホール内に戻ってきたエリー王女を見つけたエーデル王女は、緊張が高まりクラウド王子の腕を胸の形が変わるほどぎゅっと押し付けていた。


「先ほども仲良くして欲しいとお願いしたのですが、何度も伝えても良いものかしら?」

「伝わっていない想いなのであれば、何度も言葉にしたら良いと思います。きっと分かってくださるはずです」

「そうですよね。でも、もうすでに嫌われていたら手遅れですよね?」

「それも、誤解なのであればきちんと伝えれば分かってくださいます」

「そうですよね。……あれかしら、やっぱりドレスはもっと華やかにした方がよかったのかしら?」

「え? 多分それは関係ないかと思います。と、とにかく自分の気持ちを素直に伝えてください」


 エーデル王女から相談を受けたクラウド王子は、親身になって話を聞き、力強くそう伝えた。するとエーデル王女は絡めた手に力を込めて大きく頷く。


 二人は、そのまま真っ直ぐとエリー王女の側まで近づき声をかけた。


「エリー様……」

「エーデル様、それにクラウド様。お二人のお陰で私はセイン様とご一緒することが出来ました。ありがとうございます」


 エーデル王女が声をかけると、エリー王女は花開くように笑顔を咲かせる。


「セイン様にお聞きしました。エーデル様がその……私の所に行くようにと仰って下さったと……。あの……私、凄く恥ずかしいのですが、エーデル様に嫉妬してしまいまして、あまり良くない態度を取っていたかもしれません……。申し訳ございません」


 エリー王女が頭を下げたのを見たエーデル王女は息が止まるほど驚いた。それは自分が謝ることはあっても、今まで謝られることはなかったからだった。


 素直な気持ちを伝えるということはこういうことなのか。


「エリー様。私こそ、一人になりたくないばっかりにセイン様を独占してしまいまして、申し訳ございませんでした。私、国では仲の良い人という者は誰もおりませんでした。優しい人も周りにはおりませんでした。なので、ついセイン様の優しさに甘えてしまったのです。今も、クラウド様に頼ってはおりますが」


 エーデル王女は肩をすくめてクラウド王子を見ると、クラウド王子は顔を赤く染める。それを見たエーデル王女はふふふと笑い、クラウド王子に絡めた腕を外してもう一度エリー王女をまっすぐ見つめる。


「それで……今回、アトラスで交流を深めるというお話を聞いた時、どうしてもエリー様と心を通わせる仲になりたいと思っておりました。ですが、この甘えのせいで上手く出来なくて……。エリー様。もう一度お伝えしますが、こんな私でもこれから仲良くしていただけますでしょうか?」


 素直に自分の思いを乗せたエーデル王女は、気持ちがすっきりと楽になった。少し驚いた顔を見せていたエリー王女は、優しい笑顔に変わる。


「勿論です。こちらこそよろしくお願いします」


 エリー王女がエーデル王女の手を取ると、エーデル王女は満面の笑みでエリー王女を抱きしめた。








挿絵(By みてみん)




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