01話 プレゼント
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「メリークリスマ~ス」
楽しそうな声と共に、部屋に入ってきたのは側近のアルバートだった。
「メリークリスマス、アルバート」
マーサから髪を整えてもらっていたエリー王女は、鏡にアルバートが映ると楽しそうに笑いかけた。
「うわぁー。エリーちゃん、マジ超かわいい。いや、いつも可愛いけどよ、今日は一段と光ってるわ~」
「うふふ、いつも褒めてくれてありがとうございます。変じゃないですか?」
シンプルで上品な赤色のドレスを身にまとい、髪を結いあげたエリー王女は、少し大人っぽく見えた。
「ぜーんぜんぜんぜん! いやいや、マジだって。超かわいいって。だって、今日は三カ月ぶりにセインに会えるもんな~。いや~、エリーちゃんの気合いが違うっ」
「もぅ、アルバート。その……そういうのは恥ずかしいです」
アルバートが鏡の横に立ち、エリー王女にニヤニヤ笑いかけると、エリー王女は頬を染めてそっぽを向いた。
「ごめんごめん。じゃ、これで許して。はい、プレゼント」
大きな箱を目の前に差し出され、エリー王女は目を瞬かせる。
「……え? 私にですか? わぁ、ありがとうございます。あの……開けてもいいですか?」
今まで、アルバートにプレゼントを貰ったことがなかったエリー王女は首を傾げつつ、笑顔でそれを受け取った。箱を机の上に置き、丁寧に包装紙を剥がしていく。中から白い箱が見え、その蓋をゆっくりと開けると、茶色の布が折りたたまれて入っていた。
「お洋服ですか?」
「そうそう、広げて見てよ」
アルバートに言われるままに広げてみると、それはスカートの丈がやけに短いワンピースだった。箱の底にも何かある。
「耳……? 角……?」
疑問に思いながら、取り出したのは紛れもなく耳と角だった。
「それ、トナカイのコスプレセットだよ」
「こすぷれ……ですか?」
「うんうん、今城下で流行ってんだけどさ。それ着たらセイン喜ぶから。あいつぜってー、そういうの好きだと思うんだ」
「……ぁ。以前仰っていた、喜ばせる方法の一つですか?」
「そうそう、自分のためにそういう格好してくれるっていうのがいーんだよ」
アルバートが力説をしている間も、エリー王女はその衣装を掲げてしげしげと見つめている。
「セイン様は、動物が好きでいらっしゃるのですね。私、知りませんでした。ですが、その……スカートの丈がとても短いです……」
今度は鏡の前で体に当ててみる。そこに映る自分の姿にエリー王女が赤面した。これはギリギリの長さなのでは? 少し前に体を倒そうものなら丸見えだ。エリー王女は助けて欲しいと言わんばかりに、マーサの方を見た。
「あの……膝まで丈を伸ばせないでしょうか?」
「ダメダメ~。この長さがいいんだから。マーサさん、裾直ししたらダメっすからね! エリーちゃん、セインを喜ばせたいんだろ? 今日はクリスマス! セインへのプレゼントだと思って頑張ろう!」
「は、はい」
アルバートの強い言葉に思わず頷いてしまう。しかし、少し恥ずかしいけれど、喜んでくれるのであれば頑張って着てみようと思ったのだった。