初!腐蝕魔法!
更新遅くなってすみません。呪文だけで3日かかりました……。
世界無双に向けて、一歩を踏み出すぞ!!
私は空に向けてガッツポーズをくりだした。
ーーあれはもう5年も前のこと。……懐かしい。
私はあの時、子供だった。そう、本当に子供だった。
……できるなら、あの頃に戻りたい。
降りしきる雨の中、やっと見つけた宿屋。
取った部屋に荷物をどさり、と置くと、ベッドに倒れ込む。
少しホコリくさいが、旅の中ではこんなのはまだましな方だ。
一心地つくと、これまでこらえてきたものが一気に押し寄せて来る。
ーーふざけんな、悲しい、信じられない、悔しい、寂しい……。
他にも言葉にできない感情が次々に現れては消えていく……。
いつの間にか、ルーナの頬は濡れていた。
涙を拭うことなく、まだ傷の癒え切らない体をギュッと抱きしめる。
ーーはあ……疲れた……。
長い溜息が出た。
さっきまでは私を捨てた仲間への怒りで一杯で気付かなかったが、こうして一人でいると、疲れが全身を襲ってくる。
……何か……休みたい……。
そんな風に思ったのは、ずいぶん久しぶりだった。
転生した事を自覚してから、これまで必死にがんばってきた。
辛い事も、苦しい事もあったけど、それでもいつかチートな能力で幸せになるんだ、って信じてがんばれた。
それなのに……。現実は残酷だった。
こらえていた涙がじんわりとあふれ出す。
1年近く苦楽を共にした仲間達。
彼らから色んな事を学んだ。
同時に色んな事を教えた。
彼らの為に全力で尽くしたし、尽くされたりを繰り返し、仲間としての絆ができたと思っていた。いや、思い込んでいた、のかな。
魔法使いのルーナ。
それが パーティでのルーナの立ち位置だった。
事実、魔法で幾度もパーティの危機を救ってきた。
ひいき目じやなく、ルーナなしでは達成出来なかっただろうクエストも、いくつかはあった。
あれほど嬉しかった魔法なのに……。
あれほど憧れた魔法なのに……。
あれほど誇らしかった魔法なのに……。
そう、あの頃はまだ、魔法は楽しかった……。
◆
ーー最初に洋式トイレを作った日から、ルーナの生活は変わった。
何より、魔力切れを起こさずに済んだ。
そして、魔法のレベルが上がり始めた。
これまで簡単な魔法しか使わなかったせいか、ルーナの土魔法レベルは2止まりだった。
しかし、アースホールやアースリカバーのようなレベルの低い魔法より、より複雑なディープアースホールや、アースクリエイトを使い続けた結果、土魔法のレベルが上がり始めたのだ。
トイレを作り始めて、わずか2週間で土魔法はレベル5になった。
穴も深く掘れるようになったし。
そこで、持っていた風魔法もレベルアップの対象に加えた。
思った通り、風魔法も少しずつ複雑な使い方をする事でレベルが上がり出した。
どうでもいい事だけど、トイレのにおい対策にも使ってるよ。
3ヶ月もすると、ステータスはこうなった。
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名前:ルーナ(エリゼ)
レベル:5
年齢:12~13
体力:30/33(+21)
魔力:54/62(+40)
スキル:
異世界神の祝福《腐蝕》:レベル MAX (他者鑑定拒否)
土魔法:レベル7(+5)
風魔法:レベル4(+2)
腐蝕耐性:レベル1
水魔法:レベル1 (NEW)
装備:古着 古靴
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あれから魔力切れを起こすことがなくなったおかげで、色んな事に身が入るようになった。
出稼ぎに行っても、結構楽しく働けるようになったし、楽しいのが伝わるのか、あれこれ教えてもらえるようになった。
シスターの言いつけだって、前よりもはるかに難なくこなせるようになった。
体力は、がんばったよ。倍以上になったし。
いやあ、本当にがんばった。
最初は柔軟と、ラジオ体操だけでフラフラだったけど。毎日頑張った。
1月も経たない内に筋トレもできるようにもなった。
と言っても、腹筋・背筋とか腕立てとか、反復横跳びとか、簡単なものだけ。
あんまりやると変な目で見られるから、こっそりやっている。
ただでさえ、転生を自覚してから、周りから奇異な目で見られている。
何でだろう?
万事におっとりしてる院長先生が「ルーナも大分大人になってきたわね」って納得しているから、特に誰にも何も言われないんだけど、何か変な視線感じるんだよね。
外見はちょっとづつ、肉がつき始めてきて、最初の頃みたいなガリガリではなくなってきた。
少しは女の子らしくなって来たよ。
まあ、まだまだガリだけど。
ステータスから見ての通り、体力と同時に魔力も順調に上がっている。
昨日は新たに水魔法まで習得した。
いやー、素直に嬉しい。
3カ月でここまでできるなら、成人までの2年半、修行を続けたら、どこまで行けるかな。
職業、魔法使いになれるかな。
本当に世界無双、見えて来たんじゃない?
浮かれる自分に、いやいや、と思い直す。
魔力の割にレベルが低いじゃん。
魔物とかと戦った経験がないから、かな。
しかし、このケビナの町の近くに、魔物はいない。
ここは安全な宿場町として有名なのだ。
ちょっと魔物を狩りに、なんて気軽にはできない。
そう、今までは。
し、かーし。私には、あれがある。そう、魔法。それもただの魔法じゃないよ。
『異世界神の祝福』腐蝕魔法。しかもレベルMAX。
ずっと試して見たかったけど、中々機会に恵まれずにいた。
と言うのも、そもそも普段の生活の中に、腐蝕魔法は使い所がない。
10日に一度の休みに知りたい事は山ほどあり、町中のあちこちを見て回っていた。
ここ、ケビナの町はさすがにそこそこ広くて、回り切るのに時間かかったわ。
食料品、服屋、雑貨屋、魔道具、薬屋……他にも色々回った。
知りたい事が大体わかってきたので、今日からは魔法修行始めちゃおうって決めました。
いきなり実践は無謀だから、まずはお試しね。
滅多に人が来ない空き地に、落ち葉を拾い集めて来ました。
念の為、誰もいないかを確認する。……うん、大丈夫。
ルーナは落ち葉に向かって、初歩の腐蝕魔法を放った。
「ライトロット」
落ち葉は縮みながら黒く腐蝕してゆく。
小山ほどあった落ち葉は、みるみる小さくなっていく。
大成功だ。さすが異世界神の祝福。
だが、異変もあった。腐蝕魔法を使ってるルーナの手も腐蝕し始めた。
なんて言うか、一番近いのは、手だけゾンビ状態?
呪文がダサいので、更新するかもしれません。次回は「腐蝕耐性の真価」予定です。なるべく早く書きます。