新しい道連れが出来ました
遅くなりました。
そうこうしてる内に、パンが焼ける匂いに釣られたのか、二人が起きて来た。
「おはようです」
「おはようさん……」
「おはよう。二人とも、顔でも洗って来て。朝食にしましょう!」
外を指差す。
さっき水魔法で外のたらいに水を張っておいたのだ。
「うー……ルーナ、元気です……」
うん、新しい目標ができたからね!
「ほらほら、早く洗って来て。もうすぐご飯できるから」
二人を強引に急き立てた。
パンが焼けたので、昨日の残りの味噌汁を火にかける。
後は干したタラをみんなで分ければいいかな。
「おー、うまそう。これもパン?」
「そうよ。トウモロコシ粉で作ってみたの」
「美味しそうです」
「頂きます」
早速コーンブレッドを試してみる。
あ、懐かしい味だ。
小麦粉だけのパンとは違う、素朴な甘さと香ばしさ。
「ローズ、バゲットよりこっちの方が好きです」
「良かった。気に入ってくれて」
「昨日のパンも美味かったけど、こっちもいいな」
ガイウスさんもパクパク食べている。
最早、腐蝕料理に抵抗はないようだ。
「ローズ。ピクルスの蓋、開けておくからね」
「ありがとうです」
「おっ?酢漬けかい?金持ちだなー」
そんな訳ないじゃん。
「こんなのめったに食べないけどね」
「ま、そうだろうな。うん、干しタラうまい」
味噌汁が温まってきたので、深皿に取り分ける。
「はい、昨日のお味噌汁の残り」
「おっ、サンキュー。……はあ……やっぱりうまいよなあ……」
「気に入った?」
「おお。毎日作って欲しいくらいだ」
「あはは」
ガイウスさん。それは異世界ならプロポーズなんだけど?
「君の作った味噌汁を、毎日飲みたい」的なあれ。
まあ、前の人生じゃ言われた事なかったけどね。くすん。
言った本人は気にした様子もなく、普通に食事している。
……当たり前か。異世界事情なんて知るはずないし。
食事の後片付けを終え、一息ついた所で、宿代の支払いを申し出た。
もちろん、腐蝕耐性の付与の事だ。
「お待たせしました」
「お待ちしました」
もう。変な茶々入れるなっての。これ、コントみたいだなあ。
えー、気を取り直して。コホン。
「では、腐蝕耐性付与します!グラントハイアンチロット!」
さすがに今度は魔法が正しく発動した。
ガイウスさんの骨が一瞬だけ煌めいた気がする。
「おっ?行けた?」
「多分ね」
ガイウスさんは、おっかなびっくり魔石をテーブルに置いた。
手を離して、数秒。
「……だ、だいじょうぶ、そう、だな」
「そう?少し離れてみる?」
「お、おお」
一歩、二歩、と後ずさり、狭いとは言え、一番向こうの壁まで行った。
魔石から離れても大丈夫みたい。
「……い、よっし!!よっし!よっし!よーっし!!」
何度もガッツポーズを繰り返す。
ーー余程嬉しかったのだろう。
何か変な踊りを踊っている。
かと思ったら、いきなりガシッと両手を取ってきた。うっ。骨、痛い。
「ルーナ大先生!!ありがとう!ありがとうございます!」
「……大先生は止めてよ」
聞いてないのか、大袈裟に何度もペコペコと頭を下げる。
「いやあ、素晴らしい!このガイウス、大先生の魔法に感動しました!このご恩は一生忘れません!!ルーナ大先生に付いて行きます!!」
「ふぁっ!?」
付いて行く?驚き過ぎて変な声が出ちゃった。
「……で?本当の目的は何です?」
「えー?ルーナ大先生の側にいれば、その内グレート級、いや、更に上のグランド級のー、腐蝕耐性付与をしてくれるんだろうな、って事とー」
おいおい!グランド級って!S級冒険者クラスの魔法だよ?……随分ハキハキと図々しいな。
「あとー、美味しい腐蝕料理、まだあるんだろうなあ。それ、食べてみたいなあって思ってー」
……喋り方、ギャルっぽい。
そしてやっぱり図々しい。
正直、見た目スケルトンな魔族について来られてもなあ……。イメージ悪い。
案の定、ローズは首を横に振っている。
「あー、ガイウスさん?悪いんだけど……」
「俺、何でも協力しまっす!鑑定持ち、便利っすよ?」
うぐっ。それは否定できないけどさあ……。
こっちが迷ったのを見抜いたのか、ここぞとばかりに畳みかけて来た。
「実は俺、空間収納持ちなんだ。……荷物の持ち運び、便利だよ?」
なっ……!何ですと?
鑑定に加えてアイテムボックス持ちですと?
それって異世界転生のテンプレじゃん!!私にはないのに!
ず、ずるい!うらやましい!
ーーいや、待て待て。運搬、か。
これは……使える。
グランド級……。そこまで言うなら……働いてもらいましょうか!
「ローズ、ちょっといい?」
「何です?」
手招きして寄ってきたローズに、そっと耳打ちする。
「……ルーナ、すごい事考えるです」
「えっへん。……じゃあ、いいよね?」
「うー、仕方ないですー」
わざとらしくにっこり笑って振り向いた。
「と、言うわけで、ガイウスさん。よろしくお願いします」
「はいっ!ルーナ大先生!よろしくお願いしまっす!!」
しまっす、が若干「しゃっす」に聞こえたけど、まあいっか。
ーーこうして、私には新しい、ガイコツの道連れができたのでした。
お読み頂き、ありがとうございます。
その内、無駄に多く作った設定集を公開する予定です。
本編に全く出てこないのに、何でこんなに作り込んでしまったのか……。自分でも謎です。




