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苦すぎる勝利

お待たせしました。

冒険者編終了です。

「ハイロット!」

最前にいたゾンビ達が一瞬で腐り果てた。

腐蝕耐性も苦痛耐性も上がった今、もはや文字通り痛くもかゆくもない。


仲間達から驚きの声が上がったが、気にも止めずに腐蝕呪文を掛け続けた。

さすが異世界神の祝福。どんなに魔法を使っても魔力は減らない。

正にチート。これぞチート。


邪魔なゾンビ達が減って来たので、ゴーストもやっつけたい。できるかな?

「ソウルロット!」

かけた瞬間、ひどいめまいに襲われた。


「……腐蝕耐性が上がりました」

例の声が聞こえて、久しぶりに腐蝕耐性レベルが上がった。

うお。ヤバい。今もしかして私も死にかけた?


だが、元々霊体しかないゴーストは、少しずつ形を失ってゆき、やがては消えて行った。

やった!腐蝕魔法はゴーストにも有効なんだ!

こりゃあ勝ちが見えてきたね!


ゴーストもやられたと見たのか、デュラハン達が私に迫って来る。

「ソウルロット」

デュラハンもゴーストのはず、と思ったら、ソウルロットが効いてない。

何で?


まあ、効かないものは仕方ない。

よし、それなら。

「メタルラスト!」

金属腐蝕呪文をかけた。

全身が焼けつくようにカッと熱くなる。


「……腐蝕耐性が上がりました」

おお。またも例の声が。

デュラハンの鎧は錆びて行き、ついには動けなくなって落馬した。

馬はどこかへ走り去ったので追わなかった。

騎士には止めにショートソードで兜を叩き割る。おお。もろいもんだね。


「よっし!」

これで完全勝利が見えた!こうなればこっちのものだ。


私は敵に腐蝕魔法をかけまくった。

雑魚だと思っていたスケルトンが腐ってくれないのには閉口したが、ここでカビ魔法を使ってみた。

「モルドグロウ!」


骨がカビて弱ればいい、くらいのつもりだったが、結果的に大成功をおさめた。

カビが軟骨部分にも及んでもろくなったのか、後ろから次々にやって来るお仲間に押されては転び、転んではまたお仲間に踏みつぶされる、という何とも可哀想な倒れ方だった。


それなのに私は不謹慎にも笑いが止まらなくなってしまった。何とかハイっぽい。

止まらないというより、止められない、が正しいかな。

「いいよ、いいよ。いくらでも来なよ。相手になるからね!」

私は時間も仲間の存在も忘れて、ひたすらアンデッド達と戦い続けた。


溶けるように消えるゴーストを見て笑い、錆び付いて倒れるデュラハンを見て笑い、腐っていくミイラ達を見ては笑い続けた。


戦いの間に、腐蝕耐性と苦痛耐性のレベルはバンバン上がった。

途中までは自分の体の事を考え、呪文の間隔を開けていたのだが、それさえしなくなった。

(何だ。戦闘で腐蝕耐性レベル上がるんじゃん。最初からこうすれば良かった)

戦う内、ついにはちまちまと魔法を使うのが面倒になった。


「グレートロット!」

グレート級の魔法に手を出したのは初めてだが、できるという予感めいたものがあった。

予感通り魔法は発動し、残りのアンデッドが全てくずおれた。


「うっ……」

久しぶりに魔法の反動で全身が痛い。

これは調子に乗り過ぎた。さすがグレート級。

痛みで冷静さが戻ってくる。


気がつくと辺りは暗くなっていた。いつの間にか空には三つの満月が輝いている。

そのおかげでそれほど暗く感じていなかっただけだ。

だが、総勢数千はいただろうアンデッド達を壊滅させたのだ。

快挙でしょ!!


ふと振り返ると、仲間達は無表情だった。

「終わったよ?」

私はにっこり笑ったつもりだが、この時仲間達に見えていたのは、半分ゾンビと化した忌まわしき腐蝕魔法使いが邪悪な笑みを浮かべる様だったのだろう。


「……腐蝕持ち」

「うん?」

ポツリとつぶやいたミディの顔は蒼白だった。


「……ルーナ」

「みんな、どうしたの?」

てっきり喜んでくれると思ってたのに、みんな何とも言えない表情をしていた。


「……ふざけないでよ。この腐蝕持ちが!」

「?アメリア?」

「ヒィッ!!」

手を伸ばそうとしたら、盾で防がれた。


あ、よく見たらまだ手がゾンビ状態だ。これじゃ怖いか。

って、腐蝕スキルあるのがどうしたのかな。

世界に何人かはいるって話じゃない。


「ルーナ、事情があって腐蝕スキルを隠してたのは分かる。だが、お前にその力があると分かった以上、うちのパーティからは出て行ってもらう。……さよならだ」

「え?バルド?どう言う事?」


「どう言う事、じゃねえよ。腐蝕持ちなんて裁判無しで処刑もんだろ。黙って立ち去れば、役所には突き出さないでやるってバルドの優しさだろうが。常識だろ」

ウィルがこれほど苦々しい口調で話すのを初めて聞いた。

いつも冗談ばかりなのに。


腐蝕は裁判無しで処刑?常識?

話についていけない。


「まさか伝説の腐蝕持ちの厄病神、トーキョー・タロウを知らない訳じゃないでしょ?世の中の全ての病気の元は、あの厄病神が作り出したと言われてるわ。ああ、嫌だ。あんたみたいなのといたら、こっちまで病気になるわ!」

ミディは体を震わせている。

トーキョー・タロウって誰だろう?


「バルド、分け前はやれよ」

「そうだな、スヤン。……とりあえず、お前のおかげで生き残れたのは確かだしな。ほら、くれてやるよ。受け取れ!」

投げ出されたのは、鉄貨と銅貨の入った小袋だった。

こぼれた硬貨が月明かりで光っている。


「さよならだ、ルーナ。お前は一応命の恩人だから今は見逃してやる。だが、今後一切俺たちの前に顔を出すなよ!さもないと……」

そこから先は聞こえなかった。

いや。耳は聞いていたが、脳が聞くことを拒否していた。

最後に覚えているのは、仲間だったメンバーの蔑むような視線。

誰一人味方はいなかった。


ーー気がつくと、私は一人で取り残されていた。

夜が更けてきて寒くなったので、お金を拾って歩き出した。

どこへの当てもなく、ただフラフラと。


しばらくすると小雨が降り出した。

(私……何やってるんだろう?どうしてこんな所にいるんだろう?)


訳の分からない事を考えて歩いているうち、小さな宿屋にたどり着いた。

仲間に捨てられたんだと泣きながら眠りについた。


翌日、つまり今日の昼過ぎ、お腹が空いたので空いている食堂に入った。

一晩経ってもまだ現実感が薄い。一体何がいけなかったのかが分からない。

どうしてこうなったんだろう。

ぐるぐる考えて続けるが、答えは出ない。


そこへ、頼んだ料理が運ばれてきた。

「お待ちどうさま」

お読み頂き、ありがとうございます。

次回より本編スタートです。

本当は精神立ち直り編の土木工事屋編が入る予定でしたが、繰上げます。

いつか書くかもしれません。

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