表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/186

冒険者になりました

お待たせしました。

ーー目が覚めると、既に日は高く登っていた。

朝寝坊をするなんて何年ぶりだろう。


何度もまばたきしてはこするが、目の違和感が無くならない。

(あー。目が腫れてる。泣き過ぎたかな……)


夕べは泣き疲れて、そのまま眠ってしまったようだ。

革鎧も脱がず、手袋は片方だけがベッドの下に落ちている。


二度寝でもしようか、と目を閉じてみたが、お腹がクー、と空腹を訴えて来た。

(……あー。お腹空いたな……)

思えば、昨日の朝に食べたきりだ。お腹が空くのも当然か。


時間的にはたった1日。だが、私の人生は、天と地ほども変わってしまった。それなのにお腹は減る。情けないが、それが人生って物かもしれない。


(……よし。がんばれルーナ。泣いてたって何にもならない。生きて行かなきゃいけないんだから)

パン、と両手で頬を軽く叩くと、革鎧を脱いで、服のシワを伸ばす。

ボサボサになった髪を、手早くまとめて伸び紐でくくる。


(半端な時間だけど、どこかの飯屋は営業してるでしょ)

バッグからお金の入った巾着を取り出す。

中身は、昨日まで仲間だったリーダーが、私に投げつけて寄越したお金だ。

彼の憎々しげな声が蘇る。


「……とりあえず、今回のクエストの報酬はくれてやる。こうして生き延びたのは、お前のおかげだしな。だが、二度と俺達の前に姿を現すなよ!!さもないと」

そこから先は聞くに耐えない罵りの言葉の数々……。

私は苦い思い出を振り切るように、ブンブンと首を降った。


ーー生きて行くにはお金は必要だ。それが例えどんなお金でも。出所なんて意味はない。

巾着をバッグにしまおうとしたが、何かがスルリと落ちた。

真っ黒い薄いカード。

冒険者ギルドカードだ。


このカードを手にした日から、私の冒険者としての生活が始まった……。



教会を後にした私は、真っ直ぐ冒険者ギルドへ向かった。

中に入ったのは初めてだったが、早朝にも関わらず、沢山の人でにぎわっていた。


とりあえず受付の列に並んでみた。

列が長いので、かなりの時間待たされた。

その間にギルド内をじっくり観察する。


混んでいるのは、並んでいるカウンターだけで、他にもいくつか数字の書いてあるカウンターがあった。買い取りとかかな。


受付の反対側には休憩所か食堂のようになっており、飲食しているパーティがいくつもあった。

くつろいでいるパーティ、打ち合わせしているパーティ、報酬を分けているパーティ、いちゃつくカップルなど、様々だが、空いているテーブルはほとんどないくらいの盛況ぶりだ。


大半は人間のようだが、中には違う者もいた。

身長が高すぎたり、低すぎたりするので、一目で分かる。

背が高いのは蛇男、かな?ワニ男かも知れない。

低いのはドワーフ。……だけじゃないかも。子供みたいなのもいる。

よく見ると獣人も混ざっている。


私の前の前に並んでいるパーティの中にも、猫耳と短かく太めの尻尾の女の子がいた。

顔は見えない。

だが、これほど近くで獣人を見るのは初めてで、つい彼女を凝視してしまう。


揺れる尻尾と、ピクピクと音に反応する柔らかそうな耳。

(……うわあ……猫耳だあ……触りたいなあ〜)

欲を言えば尻尾も触りたい。モフモフしたい。

そんな事を考えてる内に、空いている窓口に呼ばれた。


「おはようございます。今日のご用は何でしょう?」

愛想のいい、かわいい受付嬢だった。

パッと見は人間。年は20は行ってないだろう。亜麻色の巻き毛と、薄い茶色の瞳の、清楚そうな感じのお嬢さん。彼女目当ての冒険者もさぞかし多いだろうな、と思われる。特に男に多そう。


「おはようございます。あの、今日は初めてなので、登録をお願いします」

「はい。ではこちらをお持ち下さい。あちらの代筆カウンターで必要事項を記入の上、3番カウンターにお出し下さい」

差し出されたのは、一枚の羊皮紙。定型文が記入されている。

彼女は用が終わったかのように、ただ微笑んでいる。


「わかりました。あの、私が書いちゃダメなんですか?」

「え?字が書けるんですか?」

余程驚いたようで、近くの人が振り返るほど大きな声だった。ついでにこっちまで見られて、何だかちょっと恥ずかしい。


「あの……?」

「あ、いえ。では、こちらでどうぞ」

受付嬢は、慌てたようにペンとインクを出してきた。

「どうも」

記入していると、受付嬢以外の視線も感じたが、無視して一気に書き上げる。

自分で書くのがそんなに珍しいのかな?


記入事項はごく一般的なものだった。

名前、年齢、種族、使えるスキル、特技、職歴、賞罰。

嘘がなければいい、と聞いていたので、腐蝕と腐蝕耐性以外を全部書き込んだ。


「3番カウンターでしたっけ?」

「え?あ、はい。そうです」

「どうも」

何やらポカンとしている受付嬢を置いて、3番カウンターに向かう。


向かった先には気難しそうなおじさんがあごひげをいじっていた。

「すみません。お願いします」

羊皮紙を差し出す。

ふん、と鼻を鳴らしながら、おじさんは羊皮紙と真っ黒な薄いカードを、水晶玉の上にかざした。


すると、水晶が青く光った。

光は一瞬で消え、おじさんは黒いカードを差し出してきた。

「冒険者ギルドへようこそ、ルーナさん。登録完了です」

「……ありがとう、ございます」

「これは冒険者ギルドカードです。あなたの冒険者としての活動が、このカードに記録されて行きます。無くすと再発行が必要になります。再発行には200ギルかかる上に、直前の活動記録は記録されませんので、十分にご注意願います」

「……はい」

「冒険者として必要な知識は、こちらの冊子に書いてあります。今日からクエストを進めたいなら、右手奥のボードに依頼が張り出されております。注意事項もそちらをご覧ください」


おじさんは卒なく冊子やギルド内の掲示物を指し示していく。

これは、最低限の知能を試しているのだと聞いたことがある。

相手の言う事を正確に聞き取り、実行できるかどうか。即ち顧客の要望を汲み取れるかどうか。

こんな事で脱落する冒険者が後を絶たないみたいだ。

要するにバカは要らないと言わんばかり。

一先ずお礼を言ってその場を後にした。


必要な知識、と言われた冊子を開く。

なになに……どんな冒険者も、G級からスタート?

G級から、F、E、D、C、B、A、S、と来て更に上がSS級。

まずは3ヶ月、達成率8割以上で10回はクエスト成功しないと、F級に上がれない。

基本的にはクエストに応じたポイントを貯めて行けば、昇格できる。

しかし、C級以降の昇格には各段階に応じたテストが必要?


クエストポイントは、個人の分とパーティの分があるので、パーティの場合はポイントの分配をどうするのか、パーティ内で予め決めて下さい。ギルドは関与しません。


ーーファンタジーな世界で、メッチャ現実的な設定だ。ちょっとがっくり。

いや、と思い直す。

ファンタジーだと感じてるのは私だけで、他の人にとっては、ここは現実の世界。

現実的なのは当たり前か。


ともあれ、冒険者登録は無事終了した。

もらったばかりのカードがまぶしい。

冒険者ルーナ誕生だい!


よし、次はクエストを見に行くぞ!

おじさんに言われたボードに向かう。

どんなクエストがあるのかな?

お読み頂きありがとうございます。

(裏切られし)冒険者編です。

少し丁寧に書いていく予定です。本編の「別の意味で無双」編との間に、土木工事屋編(読み飛ばし可能)がある予定です。

気長にお待ち頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ