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第0話 始まり



学校が終わっていつも通り帰宅する。

ぼっちで帰宅もいつも通りだ。


友だちは少量

部活はやらない

勉強も運動も今ひとつ


平々凡々というのが俺のステータス。


毎日ほぼ変わらないスケジュールで、恋の歯車が回ることもなければ、熱い友情が育まれることもない。


こんな生活だが、別に嫌いではない。

明日を平和に、高望みは災いの元。これが俺の座右の銘だ。

だから俺は今日も優雅に下校をする...


「おーーーーい!!!時也ときやーー!!」


背後約50mから声が掛けられた。

この声がしたら俺はクランチングスタートの構えをとって、よーいドンと心の中で言いながら、ダッシュをする!


「なんで走って逃げるんだよぉ時也ぁ」


しゅんっ...みたいな感じの顔で俺の肩を叩くが、おまっ...なんでや!!俺とちょっとは距離あったはずなのに、俺が走り出してから五秒と立たず捕まえるってどういうことだよ!!!

しかも息切れもせずにってどういうこと...と俺が言うと、愛の力かな☆と言いのけるこいつに肘鉄を入れる。

ごふっと噎せているこいつは


容姿端麗

文武両道

温厚篤実


全校生徒、先生から好かれるリア充の鏡

空翔あきとである。


俺になにかと構ってくるこいつは、俺の平和を乱すやからであり、俺の天敵である。

一緒にいたら、女子からやっかまれ、男子から絡まれる。それが嫌でこいつには近づかないようにしているが、幼なじみで付き合いが長い俺を勝手に友だち扱いしている空翔は何かと俺に引っつこうとする。


今も俺と肩を組み歩きだして、一緒に帰ろうと言った。

絶対嫌だ!!と全力で拒否をする!


「あ、ウンクスで、アイドルキャッチのクジやってるらしいね?やりにいこうよ」


...まぁ、今日ぐらいは一緒に帰ってやらんこともない。お前から誘ったからには全部お前が金出せよ。

そう言って俺は歩きだした。

「やった!うん、それでいいよ」

語尾にハートが付きそうなほど舞い上がる空翔と一緒にウンクスに向かう。


この時点から選択は間違えていたのだ。この時、誘惑に惑わされず家に真っ先に帰っていたら平和な生活を送ることが出来ていたのに...





ウンクスに到着した俺達。

さっそく空翔の金でくじを引く。アイドルキャッチのキャラ、市ヶ原佳奈、通称かーなんを引くため右手に全神経を集中させ、箱に手を突っ込み...抜いた!!!


結果は...かーなんのフィギュア


よっっっっしゃぁぁあああああああ!!!!!!!

叫びながらここ最近1番のガッツポーズを決めた俺の後に


うぉぉおおおおおおお!!!!!!と同じくくじを引きに来たのであろう2人組の男性から雄叫びがあがった。

なぜか握手を求められ、それに答えて固く握手を交わし、涙をちょちょぎらせながら熱く抱擁までした。


「君のその心意気感動したぜ!!!」


「ありがとうおっさん!!あんたも、いいやつ引けるといいな!!!」


「あぁ!君に続けるよう頑張るよ!!」


でも、君にかーなん取られたから他のウンクス行ってくる!!そう言ってバイバイした俺達。

お目当ての物と熱い友情を掴むことができた俺は、店員にドン引きされた顔でかーなんを渡された。


「やった!!やったぜ!!かーなん迎えにきたよ!!!」

「よかったねー時也」


フィギュアが入った箱を抱え、感動の再開さながらにむせび泣く俺に店員はもっとドン引きしていたが、空翔の究極イケメンスマイルを見て顔を赤く染めていた。


「あの、このくじは当たりくじで、こちらのくじを一回引くことができるのですが...」


「へーそうなんですか、時也どうする?もう一回引けるけど」


「あぁ、お前が引いていいよ、俺は娘と再開できたから、もうなんでもいい」


あはは、了解じゃあお願いします。

と手を差し伸べて箱からくじを引いている空翔に店員さんは、顔を真っ赤にしている。ケッこれだからイケメンはよう...といつもなら思うが、今日は愛しのハニーをゲットすることができたので、良しとする。



くじも引き終わり、ウンクスを後にする俺達。御機嫌MAXな俺とそれを見てニコニコする空翔。


傍から見たらホ〇ォ...と言われてもおかしくないが、俺は腕に抱える子の愛しさが募り過ぎてそんなことに気づいていなかった。


「でも、やっぱり時也はすごいね。いつも欲しいものを1発であてちゃうんだもん」


「ふん!俺の愛情がかーなんに伝わっているのさ!」


ふはははと高笑いをあげる

そう、俺はこういうくじやガチャで欲しいものを外すことは滅多にないのだ。

俺の幸運は生まれつきの様であり、小さい頃、両親が俺の名前で応募に出すと旅行券や、電化製品が当たると言っていた。

これが俺の唯一の長所とも言えるが、こんなことを言いふらすと面倒な事になりそうなので、空翔と両親以外は知らない。


「やっぱり時也は幸運の女神だね!!」


なんで女神やねん。俺男やっちゅーに。

思わず関西弁でツッコミを入れてしまいながら、帰り道を歩いた。




「そう言えば、お前オマケのくじで何引いたの?」


あーそう言えばまだ中身見てなかったなーと言いながら小さな箱を取り出した。


「何んだこれ?」

「さぁ?パッケージは英語っぽい字で書かれているからよく分かんない...」


二人共さほど興味もなさそうに確認だけするかと言って、箱の封を開けて中身を取り出した。


中にはガラスっぽい石と、取扱説明書が入っている。

外のパッケージは英語だが、取扱説明書は日本語で書かれていたので読むことができた。


「えーと、異世界からきた石。選ばれた者を異世界へ飛ばします...。」


空翔のイケボが夕日に照らされた道に吸い込まれるかのように消えていき、しばらく沈黙が流れる





「.........ぷっ...あっはっはははは!!」

「ぷくく...ちょ、笑い過ぎだよ時也...ふふふあははは!」


俺達花の男子高校生、こういう話題には笑わずにはいられない。


やばいやばいちょー良いの引いたな空翔!!お前の方が運あるんじゃねぇかwwww!?

本当!?俺こそ真の女神だったのかもwww!


けたけた笑いながら、空翔は取扱説明書の続きを読んだ。


「この石に相応しい者、石に触れ以下を唱えよ


我ら石に認められし者

時を越え、空間を翔び

異世界に進む者也

今こそ力を開放し、時空を駆けろ

我ら時空の救世主也


...だって」


ぽいぽいそれっぽいwwwやばwwwお腹吊るわwww

笑いすぎで、横隔膜が痛い。こんな中二病爆発な台詞を、イケメンが言っているのもツボに入ってしまった。


「ねぇ!時也もトリセツ通りにやってみようよ!!」


「えwwwやるの?wwwてか、お前が言って何にもなかったじゃんwww」


「それが嫌なの!!俺1人これ真面目に読んで恥ずかしいじゃん!!」


俺が大爆笑したのが恥ずかしいのか、顔を赤くして、目も潤んでいる。

男でも美形のこいつがうるうるさせたら様になるなー

イラッとしていると、やろー!!やってくれるまで家に帰さない!!と駄々をこね始めた。


「だー!!わかった、わかったから!!」

「よっしゃ!!じゃあやるよ!」


こいつ...立ち直り早いのもむかつく...

しかも、「これ俺と時也で交互に唱えたらそれっぽいよねー時也恥ずかしいよねー」とか言ってるのもむかつく!!!


ああん?誰がそれぐらいで恥ずかしがるかよ...この中二病発動後現在も継続中を舐めんなよ!!!

売られた喧嘩はプライドを捨ててでも買う主義の俺は、空翔の安い挑発でも簡単に乗る。


「じゃあ、はい石に触れて、俺から始めるよ?」

「さっさとしろよ、かーなんが早くお家に帰りたがっているんだ」


はいはいと空翔は苦笑いをして石と俺の手を一緒に握りしめ、唱え始めた。


「我ら石に認められし者」


「時を越え」


「空間を翔び」


「異世界に進む者也」


「今こそ力を開放し」


「時空を駆けろ」


「「我ら時空の救世主也!!」」





......カァとカラスが鳴く声がした。


その時カァァアアアと顔に血が集中するのを感じた。空翔を見てみると、顔が真っ赤である。俺も同じだろう。

やばい、これはかなり恥ずかしいぞ...


何となく気まずい雰囲気になって、どちらともなく帰るか...と呟いた。


石を握っていた手を緩めると手と手の間からドロリとした液体が流れた。


「なっなんだよこれ!?」

「わからない!えっなにこれ!石が溶けた!?」


慌てる俺達を待たず石から溶けた液体は、地面へとぽたりと落ちて染み込んでいく。


するとその瞬間、俺達を囲むように淡い光を放つ円形が地面から浮かび上がった


「魔法陣...!?」


俺がそう呟くと同時に地面がなくなり、急降下している感覚が俺達を襲った。





俺!遊園地のジェットコースターちょう好き!!楽しい!!


小学校の時、俺と空翔は家族ぐるみで仲がよかったので、一緒に遊園地に遊びに行くこともしょっちゅうだった。

空翔は、ジェットコースター等々の絶叫系が大好きで、俺は大っ嫌いだった。それなのにも関わらず、こいつは嫌がる俺を引きずって何度も何度も乗せた。


金輪際こいつと一緒に遊園地には行かないと決めた。こいつと一緒に行動したらろくな目に合わないこともこの頃から学んだ。


ごめん小学生の俺...ちょっとまだ自覚が足りなかったわ...俺、もっと小さい時から学んどけばよかった...


そんな走馬灯が巡る中、急激なGが掛かりすぎて気持ち悪くなり、意識が遠のく前に

空翔が俺の腕を掴み、離さないという強い意志をもった目を向けているのが見えた。さすが空翔、絶叫系の乗り物で鍛えただけあるな



はは...本当いい迷惑...もう離して欲しいんですけど

そう思った所で意識がなくなった。




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